セミナーレポート
有機ELの可能性は?
FPDインターナショナル 2013
目下、照明では「LED」が節電の代名詞になっているが、有機EL照明はこれに取って代わるという。4Kテレビにも使われ始めた。
2013年10月23日から3日間、パシフィコ横浜でFPD International 2013が開催された。基調講演では、有機EL照明研究開発への取り組みについて言及がなされた。
曲面ディスプレイも多数展示されていた |
光源の開発
有機EL照明は、次世代の照明器具として静かに注目を集めている。節電といえばLED照明だが、節電効率は有機EL照明の方がより優れた性能を持っているという。また光源としても光の範囲が広くなるため、1点を照射するLEDに比べて目に優しいのも特徴の1つである。
有機ELの技術を利用したディスプレイも、小型のものから開発が進み、現在では55インチの大型ディスプレイも登場している。基調講演に登壇した山形大学の城戸淳二教授は、有機ELディスプレイが「壁に掛けられるくらいに進化する」と予測している。
有機ELディスプレイはバックライトが不要のため、極薄の曲面ディスプレイも可能となる。ただ、まだまだコストが高いのがネックだ。現在市販されているデスクライト程度の大きさでも実勢価格は20万~30万円と、手軽に購入できる価格にはなっていない。
城戸氏によると20年近く前の1995年、開発されたばかりの有機EL照明の寿命はたった1日だったという。現在は蛍光灯と同等の64lm(ルーメン)/ワットで、約10,000時間の寿命である。城戸氏は「30000時間にしたい」という目標で現在研究に取り組んでいる。
有機EL研究のパイオニア・城戸教授 | 有機EL照明を見せる菰田氏 |
「水俣条約」も有機ELの需要喚起に
パナソニックエコソリューションズの菰田卓哉氏は、光と人との親和性について「蛍光灯などの線スペクトルは、つい最近のこと」と述べ、人間に馴染みがあるのは太陽光に近い「連続スペクトル」の光であるとした。
加えて、2013年10月に国連の会議で採択された「水俣条約」によって、現在幅広く使われている蛍光灯の代替物が必要であるとした。
国際的な水銀の流通規制を定めた「水俣条約」は、締結国の段階的な水銀鉱山の閉鎖、水銀の輸出入制限など、水銀使用を厳しく規制するもの。これによって水銀使用が不可欠な蛍光灯からの代替光源が必要になる。菰田氏は「現在は蛍光灯に必須なので適用除外になっているが、将来的には使用できなくなるだろう」と、次世代照明開発の必要性を述べた。
現在はLEDが代替照明として広まっている。しかし、LEDの光は指向性が高い。LED照明を利用した電車やコンビニは、「蛍光灯と同じ明るさ」という割に多少の暗さを感じてしまうのは、LEDが「点」の照明であるためだ。有機EL照明は面で発光するため自然光に近く、直接見ても目を傷めない。菰田氏は、太陽光に近い連続スペクトルを持ち、演色性があって水銀を使わない有機EL照明を次世代の照明と位置付けた。
照明・映像技術の最先端
ただ、有機EL照明もまだまだ改良の余地がある。有機ELが発光しても、その光が反射で外に出てこないのである。菰田氏は「自社技術で50%の光の取りだしに成功しており、あと15%引き出せれば、LEDに匹敵する明るさになる」と現状を述べた。
今のところは「高嶺の花」である有機EL照明・ディスプレイだが、「有機ELで4Kテレビを見たい」という声も聞こえてくる。確かに、4Kテレビを目の当たりにして、クオリティ高さを知った人にとって、将来的な廉価化や映像画質の期待値はおのずと高くなる。
最新のパネルは厚さが1mmという薄さも実現できる、という有機EL照明。照明技術の廉価化とともに、ディスプレイでは4Kテレビのインフラ整備、続く8Kテレビへの期待…。有機ELの絡むところに技術革新の果てる時は、今のところなさそうだ。
【セミナーデータ】
- イベント名
- :FPD International 2013
- 主催
- :日経BP社
- 開催日
- :2013年10月23日~25日
- 開催場所
- :パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
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