セミナーレポート

意識が高まる資料保存と公文書管理

第7回資料保存シンポジウムを取材

2013/11/25

 情報保存研究会(JHK)、日本図書館協会は2013年10月21日、第7回資料保存シンポジウムを開催した。文化財レスキューや公文書管理に関して専門家が講演を行った。

筑波大学准教授 白井哲哉氏
筑波大学准教授 白井哲哉氏

文化財レスキューの取り組み


 筑波大学准教授の白井哲哉氏は福島県双葉町における文化財・歴史資料の救出作業について触れた。東日本大震災が発生した2011年、双葉町教育委員会は7月から文化財の救出作業に着手。仮の保管所となる旧相馬女子高校の校舎に、町の歴史民俗博物館に所蔵する資料の移動が行われるなど、災害地から資料を救出する「文化財レスキュー」の作業が行われ、その作業は現在も続いている。


 この文化財レスキューの活動では、民間ボランティアの協力が必要不可欠だ。しかし1995年におきた阪神淡路大震災時の活動では、「救出すべき資料がどこにあるかわからない」「行政との連携が不十分」などの課題が露呈。ボランティアにも資料・保全に必要な知識が蓄積されていない面があった。


 その後、資料保全に関するボランティア組織が各地で誕生し、行政とのやりとりが徐々に行われるようになった。そして今回の東日本大震災時で「ふくしま史科ネット」や「岩手史科ネット」などのボランティアが文化財レスキューの活動で貢献するなど、被災時の資料保全で大きな改善が見られている。


 また、白井氏は2011年4月から施行されている公文書管理法の存在についても触れた。公文書管理法は公文書の作成・保存・利用の向上を目的に定められた法律。歴史資料として重要な公文書については、適正に保存していくよう明示されている。近年はこの法律に従って、紙文書以外にも資料をデジタル化することで、災害によるリスクを減らしていこうという試みも行われている。


 白井氏は「東日本大震災や公文書管理法が施行された2011年を契機とし、地域社会における資料保存の意義が少しずつ見直されてきている」と指摘した。

都留文科大非常勤講師 瀬畑源氏   京都橘大学教授 谷口知司氏
都留文科大非常勤講師 瀬畑源氏   京都橘大学教授 谷口知司氏

高まる公文書管理の意識


 公書管理法施行により公文書館が保存する資料へのアクセスも改善されている。都留文科大非常勤講師の瀬畑源氏は、同法施行後、手続きの透明化・迅速化が進んだと指摘。瀬畑氏によると、施行前は資料の申請をしても届くのは早くて3~4か月かかっていたが、施行後30日程度で資料が届くようになったと実感したという。また同法施行により地方自治体において公文書管理条例の制定や、公文書館の設立が相次ぐなど、成果が確実に表れているとしている。


 さらに瀬畑氏は民主党・岡田克也氏の外務大臣就任時に、外交記録が外交史料館へ大量に移管され、資料の開示が進んだ点に言及。情報公開の意識が高い政権の元では、公文書に関しても情報開示が進められるとした。


 一方、現在議論されている特定秘密保護法案についても説明があった。同法では、行政機関の長が重要な資料を「特定秘密文書」に指定ができ、それについて有効期間内(最長5年間・更新制)は秘匿されるというもの。瀬畑氏は「話し合いがこのまま進むと、特定秘密文書は公文書管理法の適用外となる可能性が高い」と指摘した。


 また公文書管理法で定められている「内閣総理大臣に報告する義務」がこの特定秘密保護法には存在していない。そのため途中で監視するプロセスがなければ資料が処分されたことすら確認できないことになる。瀬畑氏は特定秘密保護法について「管理の透明化を図る公文書管理法とは逆の発想」であると述べている。


必要なデジタルアーカイブの素養


 京都橘大学現代ビジネス学部教授の谷口知司氏は図書館員に必要とされるデジタルアーカイブの能力に関して講演した。


 各地の図書館では、図書館資料の検索システムが常日頃から使われており、紙の媒体と電子媒体が閲覧できる整備が進められている。これに対し司書や学芸員にも、どんな資料をデジタル化して残していくかについて、専門家として判断が問われるようになっている。谷口氏は「これからの司書・学芸員には、文書管理に関する知識のほか、撮影機器や素材編集、知的財産の知識など、デジタルアーキビストとしての素養が必要になる」と説明している。


 また、谷口氏は司書や学芸員にとって、資料をデジタルアーカイブにする際に、デジタル化のガイドラインを参照しながら、撮影仕様書を適切に書き、納品させるものに責任をもつことが重要な要素だと指摘している。


 他方、谷口氏はこれからの図書館には、活字資料や写真など、地域の様子や市民の生活を具体的に記録したものを電子化して保存し、地域の人に情報を発信していく機能が一層求められるとしている。


 今回の資料保存シンポジウムでは、東日本大震災時の文化財レスキューや公文書管理法施行によって、資料保存に関する意識が高まっており、デジタルアーカイブに詳しい人材が必要とされているのを実感できた。同シンポジウムの更なる充実を期待したい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:第7回資料保存シンポジウム 広がる資料保存の取り組み -高まる意識の中で-
主催   
:情報保存研究会(JHK)、日本図書館協会
開催日  
:2012年10月21日
開催場所 
:東京国立博物館 平成館(東京都台東区)

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