セミナーレポート

広がるRFIDの活用

第15回自動認識総合展

2013/10/24

 デニムパンツにつけられたタグを、レジカウンターのテーブルにあるセンサーが感知して自動的にデータを読み取る…。NFC(Near Field Communication)など、様々な規格のICタグを利用して、製品のトレーサビリティや物流管理をスムーズにするRFID。こうした認識技術を紹介した「自動認識総合展」が2013年9月25日から3日間開催された。

価格が下落して導入しやすくなったICタグ
価格が下落して導入しやすくなったICタグ

「白雪姫が自分の名前を呼ぶ」RFIDの活用


 数年前では高額だったRFIDのICタグは、1枚当たりの価格も約15円程度まで下がってきていることもあり、徐々に浸透しつつある。イベント初日に行われた自動認識セミナーでは、海外のICタグ利用事例などが紹介された。


 米国大手流通のホーム・デポは、自分で清算を行うセルフレジに導入している。また、バチカン博物館やコロッセオではNFC規格のチップを組み込んだ入場券が導入されているという。


 米国オーランドのディズニーワールドでは、2013年4月から「マイマジック+」というRFIDによる顧客管理システムが導入されている。園内の入退場、ホテルのルームキー、売店の支払いなどをICタグが組み込まれたリストバンド1つで管理する仕組みだ。


 このリストバンドには、NFCやUHFなど、複数のICタグが内蔵されている。「事前に情報を登録すれば、白雪姫が自分の名前を呼んでくれる、といったことも可能。また、アクティブタグをつけて顧客の位置情報を取得し、マーケティングに活用していく」(日本IBMの久保田和孝氏)など、来場者の利便性のみにとどまらず、蓄積されたデータをフル活用する姿勢だ。


 エンドユーザが利用するシーンもさることながら、ICタグは「棚卸」や「トレーサビリティ」といった、流通関連での導入も目立つ。


 スペイン・バルセロナにあるアパレル、ロベルト・ベリーノでは、地下倉庫の天井にアンテナを巡らせ、商品に付けたタグを読み取って商品管理をしている。シンガポールのアパレルチェーン、チャールズ&キースでは、商品を全てICタグで管理した結果、従来3時間かかっていた棚卸が20分に短縮したという事例もある。


 こうした工業製品のみならず、トレーサビリティの観点から生鮮食品にICタグをつける試みも行われている。水揚げされた魚介類にICタグをつけ、生産地情報や、小売店に届くまでの温度管理情報などを蓄積し、消費者が確認できる、という情報連携基盤の構想も紹介された。


BtoCのトレンド「オムニチャネル」


 アパレルでの在庫管理が容易になって得られるのは、店舗スタッフの接客である。バックヤードの作業時間が減る分、顧客への丁寧なサービスにつながってくる。顧客満足を高める要素もあるICタグ管理だが、より高めるためにBtoC界隈でここ数年注目されているのは、リアル店舗とデジタル店舗の融合を図る店舗の「オムニチャネル」だ。これは単に実店舗に加えてオンライン店舗をオープンするだけの取り組みではない。

オムニチャネルを解説する日本IBMの久保田氏   ウェアラブルデバイスを利用した画面デモ。荷物のタグが置き場所をナビゲートする
オムニチャネルを解説する日本IBMの久保田氏   ウェアラブルデバイスを利用した画面デモ。荷物のタグが置き場所をナビゲートする

 スマートフォンなど消費者が持つモバイルデバイスを軸に、「移動中に服の色やサイズをチェックし、実店舗でそのチェックが反映されて決めた服を購入できる」といった仕組みが実現されることだ。


 ただ、オムニチャネルは単に顧客情報の統合をシステムで行えばいい、という話ではない。実店舗とオンライン店舗の在庫を融通して、リアルタイムで顧客の注文にレスポンスできなければ成立しない。


 こうしたスマートフォンを使った消費者起点、言い方を変えれば「顧客のわがまま」を実現するには効果的なITの利用が不可欠である。しかし、日本IBMの久保田氏は、「海外の大手ECサイトは、売上の7.5%という巨額の資金がITに投資されているが、日本の小売業では1%がIT投資に回ればいい方。かなり水をあけられている」と現状を指摘した。


自動化を実現するために


 今回のイベントの展示スペースでは、RFIDとAR(拡張現実)機能を持ったウェアラブルデバイスを利用して倉庫の物品管理をする、というシステムの大々的なデモも行われていた。


 RFID以外の自動認識技術展示も行われていた。その中の「イチゴの自動収穫機」は、イチゴの赤味を画像認識して、未熟なものと判別して取り込むもの。担当者は「イチゴ農家には『便利になった』と喜ばれているが、正確な収穫率はまだまだ」とつぶやく。


 エンターテインメント分野はともかく、BtoB用の製品については、まだまだ自動認識技術を駆使した製品の実用化までは長い、と思われるものも多かった。シビアな在庫管理、付加価値を高めるための顧客管理、ウェアラブルデバイスのバッテリーなど、手をつけなければならない課題はまだまだありそうだ。

(中西 啓)

注釈

*:RFID(Radio Frequency IDentification)
電波による商品などの個別管理技術の総称。ICタグのリーダーが出す電波でタグの情報を読み取るパッシブ型と、タグ自体が電波を発信するアクティブ型がある。

【セミナーデータ】

イベント名
:第15回自動認識総合展
主催   
:一般社団法人日本自動認識システム協会(JAISA)
開催日  
:2013年9月25日~27日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

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