セミナーレポート

放送開始から振り返るテレビの変遷

映像情報メディア学会主催のシンポジウム取材

2013/9/26

 一般社団法人映像情報メディア学会は2013年8月28日から30日にかけて、年次大会を開催。テレビ放送に関する専門分野をもった有識者が集まり、講演・発表を行った。テレビ放送が開始してから今年で60周年。放送開始からの歴史についても触れられており、会場に集まった参加者も熱心に聴講していた。

映像情報メディア学会・公開講演会の様子
映像情報メディア学会・公開講演会の様子

テレビ視聴の変化


 29日に行われた公開講演会では、NHK 放送文化研究所所長の阪中信之氏が登壇。阪中氏はテレビ放送の技術は、白黒テレビからカラーテレビ、さらにはデジタル化など「イノベーションの連続」であったと説明。番組もニュース・ドラマ・バラエティなど幅広く放送されており「テレビの歴史がコンテンツの歴史でもある」と強調した。


 テレビは1953年に放送が開始。開始当初は、放送時間も限られており、ほとんどが中継放送だった。当時は放送局の数も少なかったため、番組視聴率は40%を超えるものがほとんどだったという。その後急速に普及し、1964年に行われた第1回東京オリンピックの開会式は国民の85%がテレビで視聴するという驚異的な数字を記録している。


 1965年~75年を振り返ると、「カラーテレビ放送の開始」が大きな変化として挙げられる。視聴可能エリアが東名阪から拡大、番組の放送時間も伸びている。一方でNHKも娯楽番組中心だった当初の編成を1964年に変更。報道メディア・教養メディアに舵を切ることとなる。民放も午前のワイドショーや深夜番組の放送を開始。放送開始から20年を経て、テレビは娯楽メディアではなく、総合メディアとして視聴者に認識されるようになった。


 しかし次の10年間(1975~85年)は、テレビにとって1つの曲がり角となる。この時代には1世帯に複数のテレビが置かれ、個室でテレビをみるという個人視聴が増える。この時期、放送のマンネリ化や視聴者の倦怠感が顕著となるものの、次の10年(85年~95年)で新たにリモコンが普及。番組の面白いところだけをみる、いわゆるザッピング視聴が浸透。週休2日制でテレビを見る時間が増えたことや、ベルリンの壁の崩壊など国家的な大事件が起きたこともあり、前の10年で約3時間に落ち込んだ1日の平均視聴時間が約3時間半に回復している(近年は3時間半から4時間の間を推移)。


 阪中氏は、1995年以降の大きな変化として「インターネットとの連携」「テレビのデジタル化」を取り上げた。また時代に即した新たな視聴スタイルとして、録画して自分の好きなときにみる「カスタマイズ視聴」、SNSなどで視聴者同志コミュニケーションをとりながら視聴する「つながり視聴」が主流となっていることを紹介している。

NHK放送文化研究所所長 阪中信之氏   NHK放送技術研究所所長 藤沢秀一氏
NHK放送文化研究所所長 阪中信之氏   NHK放送技術研究所所長 藤沢秀一氏

「面白いコンテンツであれば収益は出る」


 テレビの歴史を振り返ったときに、地上放送だけでなく、衛星放送も技術開発に大きな役割を果たしている。スカパーJSAT社長の高田真治氏は、衛星放送の歴史について講演。NHKのBSアナログ放送が1989年に、WOWOWの放送が1991年に、BSデジタル放送が2000年にそれぞれ開始したことでチャンネル数も増え、視聴者にとっても番組の選択肢が増える運びとなった。また、衛星を中継した放送番組の素材編集システム「SNG(Satellite News Gathering)」のような独自の技術が生まれるなど、技術革新も行われている。


 高田氏は「近年の視聴者の傾向をみると若年層は減っており、高齢層が平均視聴時間を押し上げている」と指摘。録画視聴が確実に進んでいるとした。またスマホ・タブレットなどの新しいデバイスが増えているものの、「これからもテレビがホームエンターテイメントの中心であることに変わりはない」と意見を述べている。


 一方で「面白い番組は通信と連携すれば収益になるが、面白くない番組にどんな要素をつけても収益にならない」と発言。新しいデバイスを視聴者が買うのは、システムそのものを望んでいるわけではなく、面白いものを視聴したいから買うとし、まずは魅力的なコンテンツの制作を第一に掲げている。


最新の放送動向についても講演


 講演では最新の放送動向についても触れられていた。NHK放送技術研究所所長の藤沢秀一氏は、NHKが取り組んでいる8Kスーパーハイビジョンについて講演。同規格はフルハイビジョンの16倍の画素数(解像度 横7680×縦4320)をもち、NHKが試験用に開発を進めている新しい放送規格だ。8Kスーパーハイビジョンは2016年に試験放送が、東京オリンピックが行われる2020年に本放送が、それぞれ開始される予定だ。


 すでに8Kに対応したカメラや小型記録装置などの放送機材も試験的につくられている。藤沢氏はこうした機材の国際標準化を同時に進めるとともに、8Kにおいても通信と放送の連携を進めていく必要性を説いた。


 同シンポジウムはNHK放送文化研究所の所長やスカパーJSATの社長など、貴重な講演者が登壇し、最新の放送動向もわかるなど充実した構成になっていた。放送開始から60周年を迎えたテレビ放送を振り返るうえで、非常にふさわしいシンポジウムだった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:2013年映像情報メディア学会年次会
主催   
:映像情報メディア学会
開催日  
:2013年8月28日~30日
開催場所 
:工学院大学(東京都新宿区)

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