セミナーレポート

JAXAが挑むはやぶさ2と火星探査

JAXA主催「第46回月・惑星シンポジウム」を取材

2013/9/19

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)は2013年8月5日から7日にかけて、月・惑星シンポジウムを開催。講演では、はやぶさ2や火星探査計画「MELOS1」に関してJAXA関係の研究者が登壇した。同シンポジウムは本年度で46回目となり、日本の月惑星探査による科学を牽引してきた最新事情が語られるため、貴重な講演内容となっている。

はやぶさ2プロジェクトの概要


 シンポジウムでは、小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションについて意見交換が行われた。はやぶさ2は小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰った「はやぶさ」の経験をもとに、2014年の打ち上げを目指している小惑星探査プロジェクト。

月・惑星シンポジウムの様子   名古屋大学教授 渡邊誠一郎氏
月・惑星シンポジウムの様子   名古屋大学教授 渡邊誠一郎氏

 名古屋大学教授の渡邊誠一郎氏は講演で「日本には惑星科学(太陽系の起源と進化の研究)について『はやぶさ』の遺産がある」と説明。はやぶさがイトカワから持ち帰ったサンプルにより、太陽系起源の研究は非常に進んだ。そして、新たにはやぶさ2が、岩石質の小惑星である「1999 J U3」からサンプルを持ち帰り調査することに成功すれば、創世記の太陽系の大動乱の様子や、天体の衝突破壊・成長過程などに関する研究がさらに加速する。


 はやぶさ2がサンプルリターンを目標とする「1999 J U3」は、地球軌道と火星軌道を結ぶ軌道をもち、表面の物質に多くの有機物が含まれると考えられている。はやぶさ2は打ち上げの後、2018年の6月に小惑星に到着。その後サンプルを採取し、2020年の地球帰還・サンプルの分析を目標としている。

はやぶさ2と小惑星「1999 J U3」
(提供:JAXA CG:池下章裕氏)
はやぶさ2と小惑星「1999 J U3」 (提供:JAXA CG:池下章裕氏)

サンプル採取方法と他の探査機との違い


 基本的に「はやぶさ」とサンプル採取方法に変化はなく、弾丸を打ち付けてサンプルを回収する。採取したものから、それが岩石鉱物なのか、レゴリス(岩石の表面を覆う堆積物)なのか、あるいはどの程度の有機物の量が含まれているかなどを調べ、小惑星の起源に迫ろうというものだ。


 一方、JAXAの吉川真氏は米国の小惑星探査機「オシリスレックス」と比較した。オシリスレックスは小惑星「ベンヌ」のサンプルリターンを目指す米国のプロジェクトだが、はやぶさ2とはサンプルの取得方法や滞在期間に違いがある。オシリスレックスは表面に長いアームを伸ばして地表に触れてサンプルを取得する。また、はやぶさ2よりも滞在期間が長いのが特長。2016年の打ち上げの後、はやぶさ2と同じ2018年にベンヌに到着するが、出発が2021年となり、2023年に地球に戻る予定となっている。


火星着陸生命探査計画「MELOS1」


 東京大学総合研究博物館教授の宮本英昭氏は講演で、2020年の打ち上げを目指しJAXAが進めている火星着陸生命探査計画「MELOS1」について触れた。MELOS1では、火星表面にローバーと呼ばれる火星探査車を走行させる計画が進められている。このローバーの探査により、生命の存在を調べようという流れだ。


 1976年に米国が行ったVikingによる火星の生命検出の実験感度は、1グラム土壌中107個程度の細胞があることを検出ができるものだった。しかし宮本氏は、地球でも微生物濃度の低い地域があると説明。「例えば南米チリのアカタマ砂漠は1グラム土壌中104個程度しかなく(一般的には土壌1グラムあたり1010個以上存在)、探査機がその場所に着陸して同じ実験を行えば、『地球に生命はない』という結論になってしまう」と指摘。火星においてはこれまで十分に感度の高い生命実験は行われていないため、生命が存在する可能性は否定できないとした。


 また近年の地上望遠鏡の観測で、火星の表面上に水が流れたとみられる痕跡が確認されている。生命の存在を確認するには水が存在する場所を探すのが最も近道。RSL(Recurring Slope Lineae)と呼ばれる筋状構造をもつ場所にある窪み(ニュートンクレーター)に、水が流れた痕跡があり、ここが探査に最も適しているとされている。


 もう1つ、生命の可能性があると考えられているのはメタンの発生する場所。メタンは生命活動によって発生の可能性がある気体だ。火星でも北部にある平原や、直径1900kmのクレーター「イシディス盆地」にある泥火山でメタン放出の可能性が考えられており、ここも有望な探査ポイントとなっている。


 また、MELOS1では様々な観測案が検討されている。例えばローバーにカメラを設置し、火星のダストデビル(大気が渦巻状に回転しながら立ちのぼる突風)を観測して規模・持続時間・移動方向などを調査。火星に常時浮遊している一定量のダストを調べようとするもの。滋賀県立大学の小郷原一智助教らが提案しており、今後、他の観測案とともに審議される予定だ。


 「はやぶさ」の成功をステップとし、はやぶさ2と火星探査という次の挑戦を進めているJAXA。日本の宇宙事業のさらなる進歩を証明し、調査結果から新たな発見を得るためにも、両事業の成功を願わずにはいられない。これからも注目する必要のあるプロジェクトだと感じた。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:第46回月・惑星シンポジウム
主催   
:JAXA(宇宙航空研究開発機構)
開催日  
:2013年8月5日~7日
開催場所 
:JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)

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