セミナーレポート

G空間情報活用の好事例

情報処理学会主催の連続セミナーを取材

2013/9/17

 情報処理学会は2013年7月30日にG空間情報(地理情報・位置情報のこと)に関するシンポジウムを開催した。ビジネスの効率化などが期待されているG空間情報の活用について有識者が講演した。

G空間情報に関する有識者が講演した
シンポジウムの会場の様子
G空間情報に関する有識者が講演した
シンポジウムの会場の様子

公共機関の位置情報公開への期待


 名古屋大学教授の河口信夫氏は PDFファイルだけの公開やHP上でのみ閲覧可能など、これまで公共機関が公開してきたG空間情報について「自治体ごとにフォーマットが統一されてなかったり、データの加工についても自由にできなかったりと、これまで二次利用が難しかった」と指摘。企業がそのデータを用いてビジネスに使う際に使いづらさがあったとした。


 しかし、今日では米国の「DATA.GOV」、EUの「publicdata.eu」のように、単に位置情報や統計データの集計結果を公表しているだけでなく、様々な形式(CSV、XMLなど)で公開されている。渋滞情報や、道路の耐久年数の可視化、地震による災害マップの公開など利用者が自由に加工して利用できる事例が増えている。国内でも「データシティ鯖江」(福井県鯖江市)のように、市が位置情報に関する情報を扱いやすいデータで提供する事例も見られるようになってきた。


 河口氏は「精度の高いものをつくるためには、扱いやすいデータを公開して誰でも利用可能な『オープンデータ』が必要だ」と説明。位置情報も自治体によるオープンデータ化が進めば、それだけ多くの企業・個人が恩恵を受けることができ、より充実したアウトプットが期待できるとした。

コロプラおでかけ研究所所長
大西一聡氏   立命館大学教授 西尾信彦氏
コロプラおでかけ研究所所長 大西一聡氏   立命館大学教授 西尾信彦氏

位置情報ゲームで取得したデータを活用


 また企業でも位置情報をビジネスに活用する事例が増えている。コロプラおでかけ研究所所長の大西一聡氏は講演で、自社が持つ位置情報データベースについて紹介した。同研究所が所属するコロプラは、位置情報を活用したゲーム「コロニーな生活」の制作・販売をきっかけとして、様々な位置情報に関するサービスを展開している企業だ。


 大西氏は、「コロニーな生活」のユーザが位置情報の貴重な収集源であることに言及した。同ゲームでは、ユーザが実際に移動した距離をゲーム内通貨として利用でき、それによって自分のコロニーを成長させることができる。ゲームを進めるために「多くのユーザがこまめに位置登録をしてくれる」(大西氏)とのことだ。


 同社ではこうした位置情報を用いて「リアルの世界での活用」を試みている。例えば収集した位置情報をもとに地方自治体に観光分析レポートを提供。すでに11の自治体が活用しているという。他にも、ユーザが実際の店舗で商品を買うともらえるシリアル番号をゲーム上に入力すると、ゲームに利用できるアイテムがもらえる仕組みも手掛けている。


 現在、コロプラのプラットフォーム登録会員数は309万人、スマホアプリインストール数は2400万で、巨大なデータベースを構築している。大西氏は「これからもリアル世界との連携を進めていく」と述べた。


GPSで取得したデータで超個人特化


 一方、立命館大学情報理工学部教授の西尾信彦氏はG空間情報を個人に特化(超個人特化)して収集し、どう活用できるかに関する研究を行っている。移動で得た位置情報の分析を続けていくことで自分の生活の変化を知り個人の生活に役立てようというものだ。


 西尾氏はGPSを活用して移動の軌跡を集計。「どういうところに立ち寄るのか」「よく行く店はどこか」「長時間立ち寄る店はどこか」などの移動した場所や、移動手段の変化について細かく計測する事例を公表した。


 西尾氏はさらに、GPSが使えない屋内の移動(地下鉄、エレベータなど)については気圧計の活用を提案。例えば、1階から7階に上がるエレベータの場合、エレベータに乗って上がると、それまでの数値よりも低い数値を計測することになる。このように、GPSと気圧計などを組み合わせることで、個人の移動に関するログを事細かに把握することができる。西尾氏は「取得した位置情報を蓄積・分析すれば、ユーザの到着時間の予測精度を向上させることができ、より詳細な近未来予測ができる」としている。


 公共機関における情報公開や、企業における実社会への活用、超個人特化など、様々な事例が増えており活用が大きく期待されるG空間情報。このG空間情報を取得・活用・分析することで、我々の日常生活をより豊かにすることできる。その影響力の大きさを肌で感じられたシンポジウムだった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:連続セミナー「G空間情報処理におけるビッグデータとその応用」
主催   
:情報処理学会
開催日  
:2013年7月30日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

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