セミナーレポート
折紙の可能性を探る
東大教養学部で高校生向けの講座が開催
誰もが触ったことのある折紙の構造を、建築物の設計などに応用しようという試みがある。2013年7月12日に東京大学駒場キャンパスで行われた「高校生のための金曜特別講座」では、折紙と設計についての講演が行われた。
![]() |
| 高校生に限らず幅広い年齢層が受講した |
世界で注目される「ORIGAMI」
東京大学教養学部で毎年行われている「高校生のための金曜特別講座」は、高校生に向けて東京大学の教授や助教が、興味深い研究内容をわかりやすく解説する講座だ。
「鶴」や「ヒコーキ」などを、切り貼りをせず1枚の紙を折るだけで造形が作られる折紙は、海外でも「ORIGAMI」として注目を集めている。今回登壇した東京大学大学院総合文化研究科助教の舘知宏氏によると、折紙の応用は様々な場面で使われているという。
宇宙で使われるソーラーパネルは、「展開構造物」と呼ばれ、巨大なパネルを折りたたむことで表面積の何分の一かのサイズまで小さくして簡単に持ち運ぶことができるようにする工夫が凝らしてある。こうした構造物を広げる過程は、言わば折紙の手順を逆に進めたものだ。
また、紙の「硬くて薄い」特徴も使われている。紙が硬い、というのは意外だが、紙を持って真横に引っ張ってみると、かなり力を入れてもなかなか破れることはない。この特徴を持った紙には、「座屈現象」というものが起こる。
座屈とは、与えた力と違う方向への変形のこと。紙を円筒形にして、上から手のひらでつぶすと横方向へ紙が折れ曲がる現象がそれだ。座屈でつぶれた形になった紙は衝撃に強くなる。チューハイ飲料の「氷結」の缶にある凹凸は、座屈現象で発生する強度を利用したデザインである。
![]() |
![]() |
|
|---|---|---|
| 折紙の歴史を解説する舘氏 | 「Origamizer」で作られた展開図 |
コンピュテーショナル・オリガミと「Origamizer」
様々な可能性を持った折紙。舘氏は「どんな形をしたものでも、1枚の紙で折ることができる」という。3次元の物体から折紙の展開図を設計したり、折りたためることができるような工夫をしたりする。例えば、三角形の輪郭線を一直線にするための「内心の定理」や、多角形の頂点を1ヶ所に集める「外心折り」。コンピュータでこうした折紙計算を行うことを「コンピュテーショナル・オリガミ」と呼ぶ。
「コンピュテーショナル・オリガミ」を実現すべく舘氏が開発したのが折紙の展開図を作成するソフト「Origamizer(オリガマイザ)」だ。情報処理推進機構(IPA)の「未踏プロジェクト」の支援を受けて開発されたこのソフトは、任意の多面体をメッシュ化して展開図データを作成できる。データをもとに、紙に折り線に沿った切れ込みを入れる特殊なプリンタで紙に出力、折紙を作成するものだ。
Origamizerを使って設計した「ウサギ」の折紙は、紙に出力してから完成まで、実に10時間かかったという。
折紙と建築の可能性
「Origamizer」を利用して、薄い金属板を使った折紙設計も行われている。舘氏は「剛体折紙」と呼んでいるが、金属パネルと蝶番で計算を行い、設計と組み立てを行うもの。折り目を蝶番にするため、厚みのある材料にも応用ができる。
こうした折紙研究に期待されるのは建築だ。折りたたみ可能なポータブルな建築物を作ることができれば、災害発生時などに、時間・コストをかけずに仮設住宅を建設することも可能になる。舘氏は、「折紙工学で重要なのは幾何学の部分」と指摘。幾何学的な問題を解決できれば、大きさや材質に関係なく立体を作ることができるという。
「子どもの遊び」くらいのイメージしかなかった折紙が、ここまで広がりを持ったものであるとはなかなか知られていない。折紙の可能性について、舘氏は「人間の書いた線の正確さをコンピュータに再現してもらうところから始まったのがCAD」と述べ、「Origamizer」も人間の想像力を支えるツールのひとつであるとした。
先端技術を眼の前にすると、技術をそのもので満足してしまいがちだが、コンピュータはあくまでもツール。「面白い」「役に立つ」モノを考えるのは人間であることを再認識できた講座であった。
【セミナーデータ】
- イベント名
- :高校生のための金曜特別講座 折紙工学入門
- 主催
- :東京大学教養学部
- 開催日
- :2013年7月12日
- 開催場所
- :東京大学教養学部(東京都目黒区)
HH News & Reports 関連おすすめ記事
IPAの未踏プロジェクトシンポジウムをレポート(2013/4/15)【関連カテゴリ】
その他



