セミナーレポート

日本企業に必要なダイバーシティ

産総研主催のダイバーシティに関するシンポジウムを主催

2013/7/22

 産業技術総合研究所は、シンポジウム「広がるダイバーシティと日本を元気にするイノベーション」を2013年7月2日に開催した。企業の女性執行役員や大学教授などダイバーシティについて見識の深い講演者が意見を交わした。

ダイバーシティについて識者が講演した
シンポジウムの様子
ダイバーシティについて識者が講演した
シンポジウムの様子

改善が必要な日本におけるダイバーシティ


 ダイバーシティとは「多様性」という意味で、性別や人種などにとらわれることなく多様な人材が働ける職場環境にし、企業の立場を優位にしていくこと。今回のシンポジウムでは女性が企業で活躍するための職場環境や制度について意見交換がなされた。


 シカゴ大学教授で経済産業研究所フェローの山口一男氏は、海外のダイバーシティについて紹介した。米国は多文化主義・多民族国家という背景もあり、ダイバーシティに対する取り組みは1970年から強まっている。1975年に包括的な性差別禁止法、1990年にADA改正法(昇進・昇給の機会平等を妨げないようにする義務を雇用主が負う法律)を成立させるなど、ダイバーシティに対しては能動的な姿勢を見せている。またEUもオランダ・ドイツ・デンマークが中心となり、働き方の公平性について独自の基準を設けるなど積極的に動いている。


 一方の日本。女性の政治家や経済の参画の程度を示すGEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)が109か国中57位となるなど、経済分野や政治分野における女性の活躍の遅れが指摘されている。


 山口氏は、日本の労働状況をみたときに、男性はフルタイムの正規雇用が多いのに対して、女性はパートタイム非正規雇用が多い点、また総合職・一般職など性別と関係する職種や、男女で管理職の定期昇給率に差が存在する点を紹介。日本社会における男女の雇用の特長を伝えた。また出産・育児の負担を女性に大きく依存している構造が、離職率の高さや、男性と比べた場合の生産性の低さにつながっていると指摘。特に育児離職女性については、正規雇用のセカンド・チャンスがほとんどないことを問題視した。


 山口氏は「結婚・育児離職後の正規雇用の拡大や、正社員でありながら勤務時間を短縮して働ける『短時間正社員制度』の拡大が必要不可欠」としている。


塩野義製薬が取り組むダイバーシティ


 日本企業におけるダイバーシティの取り組みについては塩野義製薬専務執行役員の澤田拓子氏が講演した。澤田氏は「企業が急激なグローバル化に対応するためには、性別・年齢・国籍を問わず、優秀な人材の登用は避けられない」と説明。その活動の一環として、女性の管理職・役員への登用・活用があるとした。


 同社では開発部門における女性の割合が42.3%と高く、また同部門で部下を有する課長以上の女性の割合が20%を占めるようになっている。また米国子会社では役員7名中、女性が2名となっており、同社では今後もダイバーシティを積極的に推進していく構えだ。

シカゴ大学教授 山口一男氏   塩野義製薬専務執行役員 澤田拓子氏
シカゴ大学教授 山口一男氏   塩野義製薬専務執行役員 澤田拓子氏

女性が活躍するためのシステムづくり


 産総研フェローの中西準子氏は自身のキャリアを振り返り、ダイバーシティによる見解を述べた。


 中西氏は業績を出しているにもかかわらず助手の時代が長く続いたが、渡米を経て論文の成果が認められ、帰国後に東大環境安全研究センターの助教授として採用されている。その後東大の歴史上初の女性教授に就任。大きなプロジェクトを任されるようになり、着実に実績を重ねることでキャリアアップすることができたという。社会において女性の進出がまだ認められていなときに、与えられた環境で実績を積み上げることで道を切り開いた貴重なケースだ。


 中西氏は研究者になるための制度について言及。研究者になるためには博士号が必要となるが、博士が取得できる年齢は最短でも28歳。女性の場合、それから就職して結婚するとなると苦労が伴う。中西氏は「学位をとるという負担が重くなっている。最低でもあと2歳若いうちに学位がとれるようにすることが好ましい」と発言した。


 また、中西氏は女性の昇進については「長期的には厳格な評価システムが望ましい」と指摘。女性が働き続ける、あるいは管理職になるための制度についてしっかりとした議論をするべきだと意見を述べている。


 一方、日本の女性についてはもっと主張するべきだとしている。「女性が企業で働くうえで、手を挙げて仕事をした人が昇進なども優先される自薦制度は必要。もっと積極的に自分がこれをしたいと言えるようなシステムがなければならない」(中西氏)。企業や大学などの職場において、女性が手を挙げやすいようにするための環境つくりが必要だと付け加えた。


 日本企業では女性の活躍が進んでいるものの、世界的に見ればまだその評価は低い方だ。安倍政権の成長戦略にも「女性の活躍」が掲げられており、これからも話題になるはず。日本企業におけてダイバーシティを推進していくためにも、定期的なシンポジウムの開催を望みたい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:広がるダイバーシティと日本を元気にするイノベーション
主催   
:産業技術総合研究所
開催日  
:2013年7月2日
開催場所 
:日経ホール(東京都千代田区)

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