セミナーレポート

IT関連の展示会「Japan IT Week」をレポート

MDM、標的型攻撃対策など展示

2013/5/27

 2013年5月8日から10日にかけて、IT関連企業の国内最大の見本市「Japan IT Week」が開催された。会場全体で1400社あまりが出展。会場内ではITの中でもクラウドやモバイル、流通などカテゴリごとにわけられた展示があり、多くの業界関係者がひしめき合っていた。

入口受付の様子。複数か所あるが全て同じような込み具合だった
入口受付の様子。複数か所あるが全て同じような込み具合だった

モバイルをどう生かすか?


 展示会場内では「モバイル」関係の展示が目立った。モバイルを利用したマーケティングや、モバイル向けの新しいソフトウェア、モバイルを利用した新規ビジネス、タッチパネルでの使用に特化したシステムなど、あらゆるシチュエーションでモバイルを意識した展示があった。


 一方で「モバイルセキュリティ」の展示も多かった。内容としては、サイバー攻撃対策よりは、個人のモバイル機器を社内にビジネス用として持ち込む「BYOD」を視野に入れた「MDM(Mobile Device Management)」と呼ばれるモバイルデバイスの管理手段が中心になっていた。こうした動きはモバイルが、それ単体の市場というよりは、社会インフラの1つとして普及してきている証左とも言えるだろう。


 ほか、モバイル関係以外で目立ったのが「標的型攻撃対策」だ。標的型攻撃は2011年に衆参両議院や防衛産業に向けて立て続けに起こり、その後ニュースとしては風化した感もあるが、実際に攻撃の手が止んだわけではない。


 数年に渡った標的型攻撃との戦いで、各ベンダーもこれまでのパターンマッチではどうにも成果が上がらないことに気がついたのか、これまでとは異なる新しいサービスを展開していたのが印象的だった。


 「メールごとに警告文を出してユーザのITリテラシを高める」「決めたアプリケーション以外全て動かせないようにする」「攻撃者が誰かを分析する」「マネジメントを強化する」など。同じ標的型攻撃(企業によっては標的型サイバー攻撃、標的型メール)への対策について、メーカーごとに独自のサービスを展開していた。

Yahoo!JAPAN代表取締役社長・宮坂学氏   慶応大学特別招聘教授・夏野剛氏
Yahoo!JAPAN代表取締役社長・宮坂学氏   慶応大学特別招聘教授・夏野剛氏

日本企業のこれから


 10日には、東会場の一角を使い、特別講演が行われた。Yahoo!JAPAN代表取締役社長の宮坂学氏と、慶応大学特別招聘教授・夏野剛氏という、IT業界ではビッグネームの講演なだけあり、聴衆は立ち見客も含め6000人に及んだ。


 Yahoo!JAPANのサイトは、月に500億ビュー以上ある。宮坂氏は、「クリックやタップの1つ1つにはユーザの意思が入っている」とし、500億ビューの情報をビッグデータとして利用することで、将来起こりうることの予測までが可能になると話した。


 例えば、景気が上昇する際、または景気が冷え込む時に検索されるキーワードを分類することで、現在検索されているキーワードからから「景気動向」を予想したり、選挙において当選者と落選者に関して検索されたキーワードや検索数から当選数を予想する、など。


 ほかにも、宮坂氏は個人向けのマーケティングを例に挙げた。ファミリーカーを購入したユーザが居たとして、そのユーザが購入するよりも前に、直接ではないが購入に繋がる行動がなかったか探ってみる。すると、6か月前にはベビーカー購入や子育てについての検索、3か月前に燃費や駐車場、1週間前には自動車保険などの検索をしており「子どもが生まれたから一緒に出かけられる車を探していたのだろう」というストーリーがなんとなく想像できる。


 こうした行動を多数集めてモデル化することで「子どもが生まれたことがわかる検索をしたユーザ」には、「車がある家族の生活を想起させるような間接的なマーケティング」。それから時間が経ち、かなり具体的に車の選定をしているだろうユーザには「試乗の案内」に切り替えるなど、ターゲットの状況に即した的確なマーケティングができるという。


 宮坂氏は「マーケティングとは未来にユーザがどういう気持ちになるかを探るものだが、ビッグデータにより未来が予想できるためマーケティングの未来がかわるだろう」と話した。


 宮坂氏のあとに登壇した夏野氏は、ITによって変わった現在の環境とそれについていけていない日本企業について言及した。夏野氏はITがもたらした革命には「ビジネスのスピードを変えた『効率革命』、個人の情報収集能力が拡大した『検索革命』、個人の情報発信能力があがった『ソーシャル革命』」の3つがあるとして「企業側もそれに合わせて業務形態を対応させなくてはいけない」と強調した。


 特に個人の情報収集・発信能力の飛躍的な拡大により「社長から、部長、課長、係長というような情報伝達経路は必要なく、フラットな組織の構造が求められる」「2、3日もあればにわかでも専門家になれるため、100人の平均的な社員よりも1人のオタクの方が役に立つ」と持論を展開。一方で、こうした点が改善されていないという問題点は抱えているものの「日本にはおよそ1450兆円の資産、世界トップレベルのITインフラ、教育水準の高さ、労働意欲の高さなどポテンシャルをたくさん持っている」と激励。これらのアドバンテージを生かしつつ、ITへの対応を進めていくことで「日本をよくしましょう」と会場へ呼びかけた。


 日本のIT業界は対海外の貿易で考えると「大赤字」というお荷物になっている現実がある。しかしインフラと化したIT業界を避けて通ることはできない。こうした元気なITビジネスが、日本の復活のカギになるかもしれない。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:Japan IT Week 春 2013
主催   
:リード エグジビジョン ジャパン
開催日  
:2013年5月8日~10日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

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