セミナーレポート

デジタル時代のテレビ局生き残り策は?

デジタルアーカイブやツイッターの活用実態

2013/4/8

 2013年3月13日から15日にかけて、千代田区文化会館で「NHK放送文化研究所シンポジウム」が開催された。テレビ文化に関する講演会、パネルディスカッションなどが行われる中、識者からは時折テレビ関係者への厳しい指摘などが飛び、議論は白熱した。

満席の講演が目立ち、注目の高さがうかがえる
満席の講演が目立ち、注目の高さがうかがえる

アーカイブスの有効活用


 デジタル時代になり、膨大な情報がデータとなると、その保存や整理については時折、問題や課題として論じられている。NHKでも、過去に放送した大量の番組データがアーカイブとして存在している。こうした大量のデータについて、現在NHKはインターネット上に「NHKアーカイブス」というサイトを開設することで、様々な記録を整理するだけではなく、自由に閲覧できるようにした。


 特に、東日本大震災に関しては「東日本大震災アーカイブス」という特設ページを設け、様々な角度からNHKが震災に際して撮りためた映像を、インターネット上ならではの方法で閲覧できるようにしている。


 例えば、日本地図と映像を連動させることで「映像がどこで撮られたものか」「地図上のこういう場所は映像で見た場合どうなっているのか」などが視覚的に理解できるようにしている。こうしたアーカイブデータの提供によって、震災の被害をより身近に知ることができるようになっている。


 NHKに限らず、震災に関するデータを残そうという動きは多数ある。被災地の中心にキャンパスを構えている東北大学では「みちのく震録伝」というサイトを作り、当時の映像だけではなく、震災に関するシンポジウムなどの記録も加えて、膨大なアーカイブを作り上げている。東北大学震災科学国際研究所教授で「みちのく震録伝」の統括責任者である今村文彦氏は「震災の記録、現状を記録する。震災の実態を手に入るデータを後世に残したい」と話している。


 こうしたアーカイブは、記録やその閲覧などにのみ使われるわけではない。早稲田大学では、実験的に「沖縄現代史」の講義資料としてNHKアーカイブを積極的に活用し、大学教育への活用の可能性を模索している。


 この試みは「番組eテキストシステム」と呼ばれ、講師が権利処理されたNHKの番組から活用できそうな番組を編成し、授業ごとに放送するというもの。学生側からも「映像で見ると伝わりやすい」と好評であり、理解度も深まったという調査結果もある。今後は、NHKと連携しながら沖縄史だけではなく、メディア学などといった幅広い講義に応用する研究を進めていく。

東北大学が持つ東日本大震災のアーカイブ写真の1つ。悲惨さが伝わる   パネルディスカッションで熱弁する日本テレビの若井真介氏(左から2人目)
東北大学が持つ東日本大震災のアーカイブ写真の1つ。悲惨さが伝わる   パネルディスカッションで熱弁する日本テレビの若井真介氏(左から2人目)

SNSとの融合はあるのか?


 近年のテレビ業界で幾度となく話題にあがるテーマが「SNSとテレビ番組の融合」だ。パネルディスカッション「ソーシャルパワーがテレビを変える」では、テレビ関係者とネット関係の識者で、SNSとの関わりについて議論が行われた。


 実際にツイッターはどの程度、視聴率を押し上げる効果があるのか。視聴率はテレビ関係者にとっては重要な物差しであるため、その効果となれば一番気になる点でもある。


 日本テレビの編成局メディアデザインセンター長の若井真介氏は「最終的に5%ほどツイッターの効果で押し上げられたと考えられるケースがあった」と話す。この数字が測定されたのは、2011年に日本テレビで人気アニメ「天空の城ラピュタ」が放送された際のこと。同アニメには、ファンの間では有名なクライマックスシーンのセリフがあるため、放送と同じタイミングでツイッターでもこのセリフがつぶやく、というファンが多数いた。視聴率は、クライマックスが近付くにつれ上昇の兆しを見せ、最終的に5%ほど上昇している。


 この現象について、関西学院大学准教授の鈴木謙介氏は「局のイニシアティブで盛り上がったわけではなく、視聴者が盛り上がりたい時に勝手に盛り上がっているだけ」と分析している。


 本来、テレビ局は番組を見てもらいたい時間帯=ゴールデンタイムを作ることで、広告料の過多を決め、収入を得ている。しかしツイッターによって、局側の意図とは関係なく視聴者側が盛り上がってしまうことは「ゴールデンタイムの崩壊を意味する」(鈴木氏)。そのため、こうした動きが単純にテレビ局とってプラスとなるだけの現象ではなく、ビジネスモデルを大きく変える可能性もあることも指摘された。


 SNSやスマートフォンのゲームとテレビ番組を連動した試験的な企画も多く報告され、局側も本腰を入れて取り組んでいる姿が見て取れた。一方で「いつまで実証実験をしているのか? そろそろ次の一歩を踏みすべきでは?」という厳しい意見も飛び交った。もはやSNSとの融合も試験段階ではなく、実際に利益に繋げることが求められる段階に入っている…そういう意見が出るほど「テレビ業界の正念場が今である」ということ強く感じさせるシンポジウムだった。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:NHK放送文化研究所シンポジウム
主催   
:NHK放送文化研究所
開催日  
:2013月3月13日~15日
開催場所 
:千代田文化会館(千代田区)

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