セミナーレポート

ロボットを暮らしに役立てる研究進む

デジタルヒューマン・シンポジウム2013を取材

2013/4/4

 2013年3月8日、産業技術総合研究所(産総研)はデジタルヒューマン・シンポジウム2013を開催した。産総研が取り組んでいる研究や、トヨタなど企業が製作するロボットについて講演が行われた。また、研究現場への見学がプログラムに組み込まれており、実際にロボットの動きを見ることで参加者の理解もより深まっていた。

シンポジウムの様子。満席の会場に
ロボットへの関心の高さがうかがえる
シンポジウムの様子。満席の会場にロボットへの関心の高さがうかがえる

産総研が取り組む「デジタルヒューマン」


 「デジタルヒューマン」とは、人間の身体に関する様々なデータを採取してモデル化し、様々な製品に応用していくことだ。産総研デジタルヒューマン工学研究センター長の持丸正明氏は、自身の取り組みを紹介した。


 例えば、銀座・原宿にあるアシックスの店舗には、持丸氏のグループと共同開発したスキャナーがある。同研究センターではこれを用いて顧客の足に関するデータを採取し計測。それをベースに作製した靴の中敷きをアシックスが顧客に提供するといったサービスを行っている。このように実際の販売現場にデジタルヒューマンの仕組みを組み込んでサービスを展開。より多く詳細にデータを採取することで、さらに充実したモデルに還元し、消費者のニーズに役立てようとしている。


 そこで、懸念されるのが個人情報に関する問題だ。同センターは顧客の合意を店舗で慎重にとることを最優先にしている。持丸氏は「データを提供してもらうことで、良い結果になることを示さなければならない」と強調。詳細なデータを採取し、より良い製品を生み出すことで、社会に評価されることを目指していく。


トヨタ自動車が研究を進めるパートナーロボット


 一方、トヨタ自動車理事の高木宗谷氏は、「パートナーロボット」と呼ばれるロボットの開発を紹介した。過去にトランペットやバイオリンを演奏するヒューマノイド(人間型のロボット)を発表してきた同社だが、現在は介護や生活支援を目的とするパートナーロボットの開発も進めている。


 足の不自由な人の歩行をサポートする「歩行支援ロボット」は、使用者の太ももから足の裏にかけて装着したロボットのセンサーが、使用者の歩行に反応。自然な角度で膝を曲げることで、歩行をアシストできるといった仕組みだ。


 「移乗支援ロボット」は、要介護者をベッドから車いすなどに移乗する際の介護者への負担を克服するために開発された。人を支えるホールド部分を要介護者の体型にフィットしやすい形状にし、介護者が抱きかかえる際にソフトに持ち上げられるよう、きめ細かい制御を組み合わせた。これにより、移乗における作業や心理的な負担を軽減することを可能にしている。


 すでにロボットを介護の現場で使う取り組みは試験的に始まっているものの、本格的な実用展開には課題が多いのが現状だ。そのため技術のレベルアップや、ロボットを受け入れる環境の整備が必要不可欠となる。また利用者が抱く「ロボットへの信頼感」がまだ低いのも難点の1つ。高木氏は「特区を設けて実績を積み上げることが大切。それによってロボットを使う環境を整備し、目に触れさせる機会を広げ、社会に対して意識を浸透させなければならない」と説明している。

トヨタ自動車理事
高木宗谷氏   産総研のヒューマノイド歩行実験には
多くの参加者が関心を寄せていた
トヨタ自動車理事 高木宗谷氏   産総研のヒューマノイド歩行実験には多くの参加者が関心を寄せていた

ヒューマノイドの歩行に関する研究


 また、デジタルヒューマン工学センターの西脇光一氏は、自身が行っているヒューマノイドの歩行に関する研究を紹介した。様々な地形に合わせて、安定した場所を選んで歩行する――人間には簡単にできる動作も、ロボットにとっては難しい動作だ。そこで西脇氏は数歩先までのロボットの運動目標を設定し、オンラインで与えられた指令にロボットが従う歩行制御を実現。センサーを用いてどんな障害物があるかを測定し、軌道生成を頻繁に行っていくことで、凹凸のある地面や階段などをスムーズに歩行できるよう研究を進めている段階だ。シンポジウムでは実際にヒューマノイドの歩行実験が見学できるよう実験現場を解放。参加者はロボットの動作に注目していた。


 少子高齢化が進む日本にとって、ロボットに求められる期待は大きい。日本が他国に先駆けてロボットが活用される事例を増やしていくためにも、こうした取り組みは重要性が高い。ロボットにおけるこれからの技術の進歩に期待できるシンポジウムだった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:デジタルヒューマン・シンポジウム 2013
主催   
:産業技術総合研究所(産総研)
開催日  
:2013年3月8日
開催場所 
:日本科学未来館(東京都江東区)

【関連カテゴリ】

その他