セミナーレポート

高まるビッグデータ解析への期待

日本学術会議主催「情報学シンポジウム」を取材

2013/3/14

 2013年2月27日、日本学術会議、情報学委員会は情報学シンポジウムを行った。情報学分野の新しい重要テーマとして注目されているビッグデータ。その解析について有識者らが意見を交わした。

ビッグデータ解析の可能性について
話し合われた会場の様子
ビッグデータ解析の可能性について話し合われた会場の様子

ビッグデータ解析の魅力と重要性


 理化学研究所計算科学機構の米澤明憲副機構長は講演で「ビッグデータ解析の醍醐味は膨大なデータから今までにない発見をすること」と見解を述べた。そして様々な分野から集められた情報から未知の関係性を導き出せることに注目すべきだとした。


 米澤氏はコンピュータを使って膨大なデータに対し高度な解析や処理を行い、動画にしてシミュレーションする「データシミュレーション」について言及した。これは主に気象情報などで利用されているものだ。米澤氏は交通事情などより詳細なデータを取り入れ解析することで、動画をより精度の高いものにしていくことを重要視している。


 また、情報・システム研究機構 機構長の北川源四郎氏は、日本の産業構造がものづくりから徐々にサービス産業にシフトしていることを背景に挙げた。そのうえでビッグデータの解析も、かつての大量生産・大量消費が主流の社会に応じたものではなく、様々な分野や個別のニーズに対応していく必要があることを強調した。


 例えば、これからは創薬やマーケティング、観光の分野で個々のニーズに合わせてデータや解析をカスタマイズすることに重点が置かれる。北川氏は個人のニーズや満足度・行動をいかにモデル化するか、個別情報をいかに統合していくかがポイントになるとしている。

理化学研究所計算科学機構 副機構長
米澤明憲氏   NEDO理事長 古川一夫氏
理化学研究所計算科学機構 副機構長
米澤明憲氏
  NEDO理事長 古川一夫氏

NEDOにおけるビッグデータ解析の取り組み


 一方、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の理事長である古川一夫氏は  金融・医療・エネルギーなどの分野でITをいかに活用して、スマートな成長に導いていくかが重要課題だと説明。ビッグデータとその解析が担う役割の大きさに触れた。


 例えばNEDOは医療分野において、アルツハイマー病の早期発見にビッグデータを活用している。東京大学や約40の医療機関・関連企業とコンソーシアムを組み、脳画像情報や臨床情報を解析。健常者がどういう形で初期のアルツハイマーにかかっていくか早期診断するプロジェクトに取り組んでいる。


 また、バングラデシュにおいて、現地の医療スタッフが巡回して集めたおよそ3万人の診断情報を遠隔地から深度解析するプロジェクトをサポートしており、途上国の医療サービスを支援している。


 古川氏は、日本のビッグデータ解析に関する一連の流れについて、「まだ情報収集のコストが非常に高い」と指摘。しかも様々な関係者の合意をとるのは困難であるとした。その他にもプライバシーの問題などがあり、解析したものを二次利用するとなると、データ形式などが整備されていないため、障害が発生するといった課題も残っているとしている。


 他方、古川氏はIPAの新技術・人材発掘事業「未踏プロジェクト」によって、リアルタイムにビッグデータの大規模解析処理が行える基盤技術「ユバタス」が生まれたことに言及。ビッグデータやその解析の分野で、技術力を備えた若い人材が日本にも出てきたことを評価した。


文部科学省の見通し


 文部科学省の下間康行氏は、ビッグデータの領域が属する情報関連分野の今後の見通しについて講演。研究者それぞれの創意にもとづいて自由な研究を行うことを尊重する旨を明らかにした。そのうえで、同分野について戦略目標がたてば、1領域あたり8年のスパン、約50億円の予算が組むことができるとし、成長が見込めるビッグデータにおいても大きな期待を寄せた。


 また、文部科学省・総務省・経済産業省の3省の連携を明言。2013年度事業から相互に進めていくことで、ビッグデータを利活用できる技術の開発・データの標準化・普及促進を図っていくとした。


 さらに、人材育成についても重要視することを公表。ビッグデータを有する学問分野(医療・環境など)と情報科学分野の両方に関する知識を持ち、融合ができる人材(データサイエンティストやアナリスト)の育成を目指していく。


 ビッグデータの解析は医療や交通の分野など活用の場が広がっており、その将来性はとどまるところを知らない。文部科学省も重点分野だと位置付けており、今後の展開に大いに期待できるシンポジウムだった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:第6回情報学シンポジウム「日本がリードするビッグデータ新世紀」
主催   
:日本学術会議 情報学委員会
開催日  
:2013年2月27日
開催場所 
:日本学術会議講堂(東京都港区)

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