セミナーレポート

海外アーティストの存在感増すメディア芸術祭

第16回文化庁メディア芸術祭を取材

2013/2/21

 2013年2月13日~24日にかけて、東京都港区にある国立新美術館をはじめとする4会場にて「第16回文化庁メディア芸術祭」が開催された。同芸術祭はアート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の4部門において作品を表彰するとともに、受賞作品の展示や上映、シンポジウムなどの関連イベントを開催する総合的なイベントとなっている。

海外アーティストの躍進


 今年度の応募作品は前回の2714点を大幅に超える3503点。海外からも過去最高となる71の国と地域から1502点の応募があるなど、国際的な認知度も上昇。独創的な技術の進歩や表現の多様化がうかがえるイベントとなっている。

メディア芸術祭の国立新美術館の会場の様子。大きなディスプレイを使って表現した作品がおかれている
メディア芸術祭の国立新美術館の会場の様子。
大きなディスプレイを使って表現した作品がおかれている

 今回、アート部門の大賞に選ばれたのは『Pendulum Choir』。9人のアカペラ歌手と18の油圧ジャッキからなる芸術作品だ。「アカペラは集団で直立の姿勢で歌う」という概念を覆すことで、意外性、斬新さを表現しようとしたもの。歌い手たちが立つ角度と方向を自在に制御できる装置の上に立ち、合唱するという仕組みになっている。この作品を制作したユニット「コッドアクト」のミッシェル・デコステール氏は12日に行われた記者内覧会で「今回の作品は音楽、演出など様々なアートを合わせたもので、それをやってよかったと確信できるものだ。大賞を受賞することができて大変光栄」と受賞の喜びを語った。


 パフォーマンスは東京ミッドタウンの地下・アトリウムで行われた。13日・14日に行われたパフォーマンスでは9人もの歌い手が、様々な状態に体の位置を変化させて歌う圧巻のライブを披露。時には独唱を交え、また時に電子音を用いたアレンジを加えることで、観衆を魅了していた。

Pendulum Choirの圧巻のパフォーマンス。
様々な状態に体の位置を変化させて歌う姿は見る者を魅了する
Pendulum Choir*1の圧巻のパフォーマンス。
様々な状態に体の位置を変化させて歌う姿は見る者を魅了する

 またマンガ部門でも海外アーティストの躍進が目立った。大賞に選ばれたのは、ベルギー・ブリュッセルにある中学の同窓である2人の作家ブノワ・ペータースとフランソワ・スクイテンの『闇の国々』。現実世界と紙一重の次元にある謎の都市群「闇の国々」について描いたもので、ブノワが作り上げた重厚なストーリーに加え、アシスタントを一切使わずにフランソワが1ページに1週間かけて描く絵のち密さが特徴的な作品となっている。また、優秀賞でも『ムチャチョ―ある少年の革命』で、海外の作家であるエマニュエル・ルパージュ氏が受賞している。


国内アーティストの活躍


 国内のアーティストの活躍や斬新な作品も目立っていた。エンターテインメント部門大賞に選ばれたのは『Perfume “Global Site Project”』。テクノポップユニットPerfumeの海外進出を記念したプロジェクト。サイト上にオリジナル楽曲と振付のモーションキャプチャデータをフリーで公開。世界各国からバリエーションに富んだ映像が生まれる結果となった。


 会場ではプロのクリエーターが、公開されたモーションキャプチャーを元に作りあげた映像をメインディスプレイに、一般の作品映像をその周りに並べて展示している。受賞したプロジェクトのプログラマーを務める真鍋大度氏は内覧会で「この作品のおもしろいところはオープンソースであること。プロのクリエーターが映像をつくるためのデータを一般の方に開放し、自由に二次創作を促した結果、たくさんの作品が生まれた。そこを評価していただいた」と話した。

エンターテインメント部門受賞者の面々。
真鍋大度氏(中央)は大賞を受賞した   Perfume “Global Site Project”の展示のようす。
一般の作品映像も公開している
エンターテインメント部門受賞者の面々。 真鍋大度氏(中央)は大賞を受賞した   Perfume “Global Site Project”*2の展示のようす。一般の作品映像も公開している

 同部門で新人賞に選ばれた作品『どうでもいいね』は、世界最大のSNS・Facebookに付加することができるGoogle Chromeの機能だ。インターネット上の同作品をダウンロードすれば、画面上にある「いいね!」ボタンをまとめて押すことができるといったもの。


 Facebookの注目機能である「いいね!」をユーザが押す理由は、「本当に良いと思ったから」「義理があるから」など様々だが、全部ひっくるめて「大体」押すことができるといった非常にユニークなものになっている。


 また今回、日本のメディア芸術に大きな貢献をした功労賞には、ガンダムのデザインを担当したメカニックデザイナーの大河原邦男氏、音響技術者の佐藤茂氏など4人が受賞している。佐藤氏はNHK電子音楽スタジオにおいて電子音楽の黎明期に大きな作品を手がけたことを評価された。佐藤氏は「例えばシンセサイザーは五線譜に載った音楽を演奏するように作られたもの。しかし私は五線譜をくずし、音楽の作曲家の方が自由に音楽をつくれるように方向性付けた。その点をご評価いただいた」と内覧会で説明している。


 メディア芸術に対する関心は年々高まっている。本芸術祭は継続的に行われ、その価値を高めることに一役買ってきた。海外アーティストの参加が目立つのはそうした成果が徐々に表れてきている証拠だろう。文化庁メディア芸術祭で見いだされたアーティストが活躍することで、同芸術祭の評価が一層高まることを願いたい。

(山下雄太郎)

クレジット表記

*1:Pendulum Choir
Pendulum Choir Cod.Act(Michel DECOSTERD /Andre DECOSTERD)©Xavier Voirol

*2:Perfume “Global Site Project”
Perfume “Global Site Project” 真鍋 大度/MIKIKO/中田 ヤスタカ/堀井 哲史/木村 浩康 ©株式会社ライゾマティクス+株式会社アミューズ+ユニバーサル ミュージック合同会社

【セミナーデータ】

イベント名
:第16回文化庁メディア芸術祭
主催   
:文化庁メディア芸術祭実行委員会
開催日  
:2013年2月13日~24日
開催場所 
:国立新美術館など(東京都港区)

【関連カテゴリ】

その他