セミナーレポート

問題を自ら見つけ、解決する人材を育てる

品質管理・統計の側面から人材育成の課題を議論

2013/1/28

 地下資源の少ない日本にとって技術が重要なことはいまさら語るまでもない。比して、科学技術立国を謳う我が国として、科学技術を担う人材の育成も重要になる。日本品質管理学会、日本統計学会、応用統計学会、統計数理研究所、日本信頼性学会と5つの学会によって主催された「第3回科学技術教育フォーラム」では理数教育の課題、特に「課題を発見する能力」「問題が発生した場合にそれを解決する能力」及び「その能力をつけるための教育」について議論がされた。

日本品質管理学会 TQE特別委員会委員長の鈴木和幸氏
日本品質管理学会 TQE特別委員会委員長の鈴木和幸氏

「問題解決能力」を備えた人材


 品質管理やマネジメントなどについて研究する日本品質管理学会 TQE特別委員会委員長の鈴木和幸氏は「科学的な問題解決能力と、知識・見識・胆識を有する人材を年間80万人、学校教育により排出するための戦略を産官学が共同で検討」することをフォーラムの目的として掲げた。


 胆識とは「決断力と実行力を伴った見識」のこと。つまり、知識を元に、自ら問題を見つけ解決する能力のことである。そのため「学校教育はこれまでの知識、技能の伝達に加えて、新たな知識を創造する思考の方法やプロセスの習得が求められる」とした。


 電気通信大学大学院情報システム学研究科の岡本敏雄教授は「情報科」の教育の「問題解決」能力に関して講演を行った。岡本氏は「これからの時代においてインターネット、コンピュータなどに関する技術的な素養、並びにそれらの活用や他学問への応用など行う“情報学”は不可欠である」として、これからの新しい情報学教育に相応しい「e-Pedagogy」の確立を重要視した。


 「e-Pedagogy」とは、すなわちIT技術を社会や他分野学問などで活用できるようにするための教育のことである。つまり、これまでに考えられていた情報学だけではなく、その延長線上で情報技術を社会の幅広い分野で活用するためには「自立的かつ効果的に学び、積極的かつ健全に社会に参加・適応し、学び続ける技量と学力の形成」(岡本氏)が求められるため、これからの情報学においてもその点を備えるような人材を育成する教育が必要なる、とした。


 岡本氏に続いて講演した、文部科学省中等教育局の長尾篤志氏は「数学」科においての「問題を解決する能力」を身につける方法としても「グループでの問題解決」のほかに「コンピュータの活用」を挙げている。いわゆる問題解決能力を身につけるためのグループという「社会」での学習はもちろん、それにITを利用したいということが「数学」側の意見としても出された形になった。


 応用統計学会会長の川崎茂氏は、これまで行ってきた「統計」に関する研修と、その経験から導き出される教育の手法を紹介した。川崎氏は、何のために学び、学んだ技術がどのような役に立つかという「目的意識」や、研修などで学ぶ際には、一括で全てを教えるようなことをしてはならないと指摘。そのうえで直後の業務に求められる内容だけ行い、研修を行ったらすぐに職場などで実践させることが重要になってくると指摘した。

電気通信大学大学院情報システム学研究科教授 岡本敏雄氏   問題解決能力とその評価方法が議論の中心となった
電気通信大学大学院情報システム学研究科教授 岡本敏雄氏   問題解決能力とその評価方法が議論の中心となった

教育を評価する


 最後に行われたパネルディスカッションでは、これらの教育方法に関して、実際に成果をどう評価していくかという点について質問・意見が挙がった。一般的に、学校教育における「評価」というとテストなどにおける得点に重きをおきがちだ。しかし国立教育政策研究所の新井仁氏は「教育の評価は20年後にどうなっているかが大事である。その先のことを考える必要がある」と訴えた。


 そのためには、長い目で見た教育を念頭に置いた評価基準が求められてくる。実際には授業ごとに理解度や知識量は変化していくが、定期的なテストでは、そのときその瞬間の「解答」しかわからない。「どの授業で」「どういう思考過程で」あるいは「どういう理解をしながら成長しているか」、子どもたちの様子を判断しながら、授業の進め方から検討していく必要がある。そのため新井氏は「グループワークを行ってディスカッションさせたり、あるいはレポートを提出させたりしながら、学んでいくプロセスも見ていく必要がある」とした。


 ほかにも、様々な学校教育、企業での新人研修、あるいは企業が受け入れたインターシップなどにおいて実践された「問題を解決する能力」を身につけるための学習プログラムの実例を交えた紹介・課題などが多数、挙げられた。問題を解決する能力は、いわゆるPDCAサイクルそのものであり、継続的な改善と向上につながる。そのため企業、ひいては日本社会が今後、持続的に成長していくため、課題を見つけて問題を解決し次の課題へ移るという成長を自発的に行える、人材を育てる必要性を実感させられた。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:第3回科学技術教育フォーラム
主催   
:日本品質管理学会、日本統計学会ほか
開催日  
:2012年12月26日
開催場所 
:成城大学(東京都世田谷区)

HH News & Reports 関連おすすめ記事

ビッグデータを利用した教育効果の分析(2012/11/26)

【関連カテゴリ】

その他