セミナーレポート

震災からの復興を担う東北大学の取り組み

東北大学国際産学連携シンポジウムを取材

2013/1/7

 東北大学は2012年12月4日、大手町サンケイプラザにて東北大学国際産学連携シンポジウムを開催した。復興に向けた取り組みや産学連携、医学部主導で行われている東北メディカル・メガバンクについて説明した。

復興事業、産学連携に関心の集まった会場の様子
復興事業、産学連携に関心の集まった会場の様子

復興の一翼を担う取り組み


 東北大学は1907年に国内で3番目に設立された国立大学であり「研究第一」「門戸開放」「実学尊重」を掲げてきた。論文の引用数も多く、先進的な研究が強みとなっている。また、産学連携も積極的で、近年では医療機器やリハビリテーションなどの分野で成果を挙げている。


 東北大学総長の里見進氏は、東北大学が“被災地にある総合大学”として復興の一翼を担っていくため、災害復興新生研究機構を発足させたことを明言。これは放射性物質によって汚染された生活環境の復旧技術を開発する「放射性物質汚染対策プロジェクト」など8つのプロジェクトから成り立っている。


 里見氏は科学技術には震災の問題を解決する力があるとしたうえで「日本再生のために、学外との密接な連携をとりつつ、復興アクションを推進したい」と意気込みを語った。さらに地震など、地球規模で存在する様々なリスクに対して国際的な連携も不可欠だと訴えた。


東日本大震災をアーカイブ化


 東北大学災害科学国際研究所・副所長の今村文彦氏は災害復興新生研究機構の1つである同研究所の取り組みを紹介した。東北地方では慶長年間(16世紀末~17世紀初期)に、地震による津波を経験している。しかし当時の資料が乏しいために断片的な状況しかわからず、科学的な根拠に基づいた対策を施すことができなかったという。


 こうした苦い経験を避けるために、同研究所は東日本大震における記憶、記録、事例を収集するアーカイブプロジェクト「みちのく震録伝」を発足。震災による記録をWEBページ上に公開してデータを共有化し、今後発生が懸念される東海地震などへの対策に活用できるようにした。また、産学連携の取り組みでは東京海上日動火災とともに津波のリスクについても調べており、古文書や伝承、津波堆積物も含めて津波によって受けた影響を検証している。

東北大学災害科学国際研究所・副所長
今村文彦氏   東北メディカル・メガバンク機構・機構長
山本雅之氏
東北大学災害科学国際研究所・副所長
今村文彦氏
  東北メディカル・メガバンク機構・機構長
山本雅之氏

 一方、東北メディカル・メガバンク機構・機構長の山本雅之氏は講演で、東日本大震災における医療活動について説明した。東北地方では今回の震災時、医療機関が被災して職を失った医師や医療関係者をどう引き止めるかが問題となった。そこで東北大学では震災時病院を失った医師や医療関係者を同大学に呼び、高度医療研修を行うことで同大学病院の非常勤講師として働いてもらい、県外への流出を防ぐ措置をとったという。


 地域に根差す医療を目指す東北大学が、震災からの復興の柱となる事業として進めているのが「東北メディカル・メガバンク構想」だ。これは東北地方における総合的なバイオバンク(患者からの生体試料の集積)を設立し、復興を後押ししていくといったもの。


 バイオバンクを設立する意味として、地域医療を復興することのほかに、人の遺伝子の違いを調べ、その遺伝子が病気に対してどのような関連性をもつか解き明かしていくことが挙げられる。同機構ではこのバイオバンクについて健常者にも参加しもらい、まずは7万人の規模を目指し、3世代の遺伝子を集めていく。それによって自閉症、アトピー性皮膚炎、ぜんそくなどの病気について遺伝子との関連性をつきとめ、治療に役立てていく方針だ。


 山本氏は「オーダーメイドの洋服のように、医療も1人1人に合わせたものにしていく『テーラーメイドメディスン』を実践していきたい」と意気込みを語った。


 他方、山本氏は、病院で使われている電子カルテについても言及した。電子カルテは病院によっては互換性がないことや、今回の地震で津波のときにカルテが流れてしまったことが問題視されている。そのため山本氏は、地域共通の電子カルテ網を張り巡らせ、地域共有型の電子カルテを使用することが必要だとした。


 震災地の復興を担う総合大学として、期待が高まる東北大学。東北メディカル・メガバンク構想をはじめ、その動向が注目されている。こうした動きを首都圏の人に知ってもらうためにも、同シンポジウムを継続して開催してほしい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:東北大学国際産学連携シンポジウム
主催   
:東北大学
開催日  
:2012年12月4日
開催場所 
:大手町サンケイプラザ

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