セミナーレポート

IPアドレスの管理・運用の動向

Internet Week 2012を取材

2012/12/10

 2012年11月19日から22日にかけて、東京秋葉原の富士ソフトアキバプラザにてJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)主催「Internet Week 2012」が開催された。IPアドレスをはじめとしたインターネットの基盤技術の動向について講演が行われ、技術者間の交流も深められた。

インターネットに関する技術者
などが集まった会場の様子
インターネットに関する技術者などが集まった会場の様子

IPアドレスの管理の仕組み


 JPNICの奥谷泉氏は、IPアドレスの管理・運用の仕組みについて説明した。インターネットを使用するすべての機器は、IPアドレスが必要となる。普段利用しているIPアドレスをみると、例えば企業の場合、ネットワークを構築する際にISP(インターネットサービスプロバイダ)に申請することによってISPからIPアドレスが付与されるという仕組みとなっている。このISPに対してIPアドレスを割り当てているのが、JPNICだ。


 IPアドレスの管理・運営については、もともとドメイン名やIPアドレスといったインターネット識別子を割り振る国際的な組織「ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)」によって統括され、各地域別に(アジア=APNIC、Asia-Pacific Network Information Centreなど)に役割が分担されている。日本では、APNIC管理下としてJPNICが日本におけるアドレス管理を行っている。JPNICは、アドレス管理を締結するIPアドレス管理指定業者(Local Internet Registry、LIRと呼ばれ、ISPもこれに当てはまる)にIPアドレスを割り振り、IPアドレス管理指定業者が企業などの各組織にそれを分配するという流れだ。

 

IPv4の在庫の枯渇とIPv4アドレスの流動化


 このようにJPNICが管理・運用しているIPアドレスだが、近年ではこれまで使われてきたIPアドレスであるIPv4の在庫が枯渇するといった問題が発生。今後分配されるIPアドレスは、基本的にはIPv6となっている。しかし、IPv6とIPv4ではネットワーク機器間の互換性がない。そのため多くの企業が使っている機器はIPv4にのみ対応しており、IPv4のIPアドレスが必要となる。


 そこで効率的な活用のため注目されているのが、「IPv4アドレスの流動化」だ。JPNICでは枯渇後の分配済みアドレスの効率的な利用を重視。「分配済みのIPv4アドレスを譲り受けたい」というニーズに対応するため、分配先の情報の更新・把握に努めている。具体的には移転ポリシーを策定、管理下の組織間での移転を対象とした移転制度を2011年8月より施行している。現在、国外の移転も認める方向で検討中。国内ではすでに支持を得ている段階とのことだ。

JPNIC 奥谷泉氏   JPNIC 是枝祐氏
JPNIC 奥谷泉氏   JPNIC 是枝祐氏

登録状況を確認する検索システムとICANNの動き


 このように、分配後の管理も非常に重要となるIPアドレスだが、たとえばネットワークを介して何らかの攻撃を受けた場合、IPアドレスを使ってその経路を把握するためにも分配後のIPアドレスの詳細について確認することができる手段が必要だ。JPNICの是枝祐氏は「分配先に関する登録情報を誰でも確認できる検索システムをつかえば、世界中の人が参照することができる」と説明している。


 また、是枝氏はIPアドレスの国際的な運用機関ICANNが発行する「トップレベルドメイン*1」のうち、特定の領域・分野ごとに割り当てられる「gTLD(generic top-level domain)」ついても言及した。gTLDには従来からのあるものとして商業利用の「.com」やネットワーク用の「.net」などがあるが、2000年にICANNが募集を行い、「.info」など7つのgTLDが申請され新しく採用されている。この時の募集はあくまで募集対象や利用目的によってICANNが一定の制限を設けた限定的なものとなった。しかし、これはICANN本来の目的である「インターネット資源を広く開かれたものとして多くの人に活用してもらう」ための実証実験的なものだった。そのため本来の意義を達成すべく、2012年からは利用目的を問わず技術要件を満たせば、誰でも申請できる新しいgTLDの導入プログラムが進められている状況だ。


 これに関連して、総務省データ通信課の中西悦子氏は2012年10月13日~17日にカナダ・トロントで行われたICANNの会合について報告した。総務省はgTLDについて政府の立場から助言するGAC*2 として参加している。GACは今回の会合で新しい宗教関連用語や地理的名称について懸念される文字列に関してまとめたものを、ICANN理事会に提出している。これは例えば他国から「.date」の提案があった場合、福島県伊達市との混同が懸念されることを避けるといったものなどだ。ICANN理事会はGACの助言を重要視しており、GACとしても次回2014年4月に行われる中国・北京での会合にむけて準備していく方針だ。


 今回のシンポジウムでは技術者向けの講演はもちろん、今回取り上げたようなIPアドレスの管理、運用の仕組みについて説明した講演も行われており、初心者に対しても配慮されていた。IPアドレスについての動向を把握するためにも毎年同シンポジウムに足を運ぶ価値は高いと感じた。

(山下雄太郎)

注釈

*1:トップレベルドメイン
インターネットで使われるドメイン名のうち、「com」「jp」など、最後尾にあるドメインのこと。

*2:GAC
政府諮問委員会。ICANNの理事会に対して助言を行う。ICANNのポリシーと自国の法律や国際協定との間に相互関係が認められるものや、公共政策問題に影響を与える恐れのある事項について検討を行っている。

【セミナーデータ】

イベント名
:Internet Week 2012
主催   
:JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)
開催日  
:2012年11月19日~22日
開催場所 
:富士ソフトアキバプラザ(東京都千代田区)

【関連カテゴリ】

IT政策