セミナーレポート

生命に関するデータベースを統合する取り組み

NBDC主催「トーゴーの日シンポジウム2012」を取材

2012/10/22

 科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)は2012年10月5日、「トーゴーの日シンポジウム2012」を開催した。「トーゴーの日シンポジウム」とは、毎年10月5日に生命科学に関するデータベースの「統合」について講演を行うといったもので今年で3回目となる。このデータベースの統合とは、ゲノム解析プロジェクトやタンパク質の機能解析を目指したプログラムなどで用いられるデータベースに関する情報を集約して、一部は恒久的に維持し、創薬などの取り組みに役立てていこうというものだ。

ライフサイエンスデータベースに関心の高い
官公庁の関係者などが会場に集まった
ライフサイエンスデータベースに関心の高い 官公庁の関係者などが会場に集まった

4省連携による統合データベースプロジェクト


 長浜バイオ大学特別客員教授の郷通子氏は講演で、このデータベース統合に取り組む4省連携(文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省)の現在について触れた。これまでは各省でデータベース管理に関する予算措置や連携がとられていなかったため、データが個々のプロジェクト終了後に散逸してしまうことが危惧されていた。それを防ぐべく、内閣府主導のもと4省が連携してデータベースを統合、一元的に管理し、利用者の立場にたって運用していく取り組みが進められている。


 こうした取り組みは平成22年6月、内閣府の「統合データベース推進タスクフォース」として開始。翌年4月に科学技術振興機構にバイオサイエンスデータベースセンターが発足。以降、戦略の立案から、データベース統合化基盤技術の研究開発まで同センターが行っている。


 研究者はセンターのホームページにアクセスすることにより、国内の様々なバイオ関連のデータベースを統合的に活用することができる。また一般の人でも合同ポータルサイト「integbio.jp」にアクセスすれば、省間連携の取り組み状況を確認することが可能だ。


 郷氏は日本におけるこのデータベースの取り組みを中国や米国、欧州と比べたときに、人員など規模の面で劣ることを課題に挙げた。ほかにもさらなる恒久的な拠点の設置や、データの処理を行う人材の育成を含む次世代シークエンサによる膨大なデータ算出などへの対応、東北メディカル・バンク構想との連携など、時代の流れに対応していくことが必要とされている。


 郷氏は、今後の展開について「4省連携で『何ができたか』『何が強みなのか』などを考えたうえで、現在のデータベースを冷静謙虚に見つめ、外部評価の上にさらにブラッシュアップしていくことが必須」と指摘。日本、さらにはアジアのデータベースとしてどう位置づけるかが重要であり「国家プロジェクトとして取り組む以上、世界最先端を目指す必要はある。研究と人材の育成の両方が必要になるはず」と意見を述べた。

長浜バイオ大学特別客員教授 郷通子氏   東京大学医科学研究所准教授
武藤香織氏
長浜バイオ大学特別客員教授 郷通子氏   東京大学医科学研究所准教授 武藤香織氏

欠かせない提供者の許諾や個人情報への配慮


 こうしたプロジェクトは、データベースに用いられるサンプルについて多くの人が提供を許諾することで初めて成り立っている。


 東京大学医科学研究所准教授の武藤香織氏はこのような人に由来した試料(サンプル)の研究利用に関する指針を紹介した。例えば2001年の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針指針」には、資料について同意の範囲内でヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用できることが明示されている。


 しかしこうした試料(サンプル)を利用するためには、原則として提供者に対し文書による同意を取得する必要がある。また試料を二次利用する場合は予定されている研究目的、活動が提供者に不利益を与えないかどうかを倫理審査委員会で審査するなど、生命情報をやみくもに使えないようにしている。さらに提供者は一旦同意しても、いかなる理由でも撤回できることが定められている。このように、生命情報の扱い方には、細心の注意が払われている。


 ただ、同意撤回の場合、本人が近くにいない場合の本人確認についてはどうするのか、本人に直接連絡できない場合はどうするのか、どの時点で「同意撤回手続きが終了したか」を判断するのかなど、指針で定められていないことも多い。また、研究用に集積されるデータは匿名化され、個人情報を明らかにしないことが原則だが、ゲノムのデータに臨床情報や画像を組み合わせたときのように、個人識別可能性が高まってしまうことも懸念されている。


 武藤氏は「データベース寄託後の同意撤回に関する考え方について引き続き検討が必要。同時に一般の人たちにデータベースの意義や安全性についてもっと知ってもらわなければならない」と強調した。


 生命科学に関するデータベースを統合することは、創薬などの分野で避けて通れない。しかし、データベースを統合し活用するうえで、提供者の同意など細心の注意が絶対条件となることを改めて理解できた。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:トーゴーの日シンポジウム2012
主催   
:科学技術振興機構バイオサイエンスデータベースセンター
開催日  
:2012年10月5日
開催場所 
:時事通信ホール(東京都中央区)

【関連カテゴリ】

IT政策