セミナーレポート

電子書籍の流通ルートや著者との契約を解説

出版デジタル機構主催の電子書籍セミナーを取材

2012/9/20

 出版デジタル機構は『電子書籍ビジネス無料サポートセミナー』を2012年9月5日に東京都千代田区の一ツ橋センタービルにて開催した。電子書籍に関する市場概況や流通ルート、著者との契約について、出版関係者を中心に説明するというもの。当初予定した参加者200名を大きく超える参加者が集まり、講演に熱心に耳を傾けていた。

会場には出版関係者が集まり熱心に耳を傾けた
会場には出版関係者が集まり熱心に耳を傾けた

電子書籍市場の概況


 出版デジタル機構代表取締役社長の野副正行氏は冒頭で、「音楽やゲームのように、インターネットによるデジタルコンテンツの配信が当たり前となった。書籍も同様で、この流れは止めることができない」とした。また野副氏は、同機構があらゆる出版社、書店、端末をつなぐ架け橋となるようにしていきたいと意気込みを話した。


 電子書籍検索サイト運営などを手掛ける株式会社hon.jpの落合早苗氏は、電子書籍の市場概況について講演した。落合氏は電子書籍のこれまでの動きを振り返り、「2010年が“電子書籍元年”と呼ばれているものの、言葉自体は何度も繰り返されてきた」と説明。1999年は電子書籍コンソーシアムが設立されたものの当時はブロードバンドではなかったため普及がままならなかったことや、2000年前後はPDAブームがあったものの電子書籍が浸透するまでには至らなかったことを振り返った。以降、携帯電話での“携帯コミック”が大きく普及するなど段階を踏み、市場規模を拡大させている。


 また、2011年度の国内電子書籍の市場規模が約629億円と、右肩あがりだった市場が初めて微減したことに注目。「この主な要因としてはフィーチャーフォンからスマートフォンへの急激なシフトへの対応が遅れたため」と指摘している。


複数ある流通ルート


 また、落合氏は電子書籍の流通ルートが複数あることについて解説。出版社が直接読者に届けるルートや、出版社が電子書籍専門の電子書店にコンテンツを配信するルートを紹介。さらに数年前から、電子書籍にも取次事業が始まっており、実際に紙の本の取次とほぼ同じ機能があるので、それを利用するのも一つの手と付け加えた。

電子書籍の流通ルートと書籍・雑誌との違い 落合氏の資料を元に作成(クリックすると拡大します)
電子書籍の流通ルートと書籍・雑誌との違い 落合氏の資料を元に作成(クリックすると拡大します)

 さらに落合氏は、紙の本との流通の違いに着目。紙の本の場合、出版社が複数の取次店と契約してほぼ全国の書店に配本されるが、電子書籍の場合は複数の取次と契約をするわけではないため「すべてのコンテンツが、すべての書店に行きわたるわけではない」としている。


 そのため落合氏は「どこの書店、どこの取次と付き合うかが電子書籍を販売するうえで重要な要素」と説明。「紙の本のときのように取次に一任すればよいわけではないので、改めて気を付けてほしい」と付け加えた。


電子書籍の契約


 一方、森・濱田松本法律事務所のパートナー弁護士 野口祐子氏は電子書籍と著作権者との契約について解説した。


 野口氏は、まず電子書籍と紙の本の価格について言及。紙の書籍の場合は、再販売価格維持制度(再販制度)があっために「この本はいくらで売る」と出版社が決めたら書店が必ずその値段で売らなければならなかった。しかし、電子書籍の場合、再販制度は適用にならない。電子書籍の販売については当初、再販制度を維持すべきだという議論もあったが、最終的には適用しないことに決まったという。


 野口氏はさらに電子書籍における著者との契約に関して「販売価格ベース」と「入金ベース」という2つの方法について説明。「販売価格ベース」は、出版社と書店の取り分比率がどう変動しても、販売価格の数%を著者に支払うと合意する方法だ。電子書店が最後に売った金額から、一定額が出版社にもどり、その一定額の中からさらに一部を著者に支払う形となる。 


 もう1つの「入金ベース」では販売価格の変動によって、書店と出版社の取り分が変動し、それによって著者の取り分も変動するパターンだ。書店と出版社の取り分が価格によって変化するため、出版社の取り分が大きくなれば著者の取り分も大きく、小さくなれば著者も小さくなる。そのためリスクを著者と出版社でシェアする考え方となる。野口氏は「出版社としてもどちらがいいのかを考えたうえで著者と契約の話をしてほしい」と意見を述べた。


 楽天が電子書籍端末koboを発売するなど、注目が集まる電子書籍市場だが、著者との契約についてなど、まだまだ一般には知られていないことも多い。これからの電子書籍にかかわる人にとって疑問を解決する場となるよう、次回も期待したい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:電子書籍ビジネス無料サポートセミナーVol.1
主催   
:出版デジタル機構
開催日  
:2012年9月5日
開催場所 
:一ツ橋センタービル(東京都千代田区)

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