セミナーレポート

通信・放送の連携で期待される新たなサービス

情報処理学会が連続セミナーを開催

2012/2/13

 情報処理学会は2012年1月25日、東京都千代田区にある化学会館にて連続セミナー「通信、放送、ITの連携による新たなコンシューマサービスの出現」を開催。スマホ向けの放送や、次世代の放送システムなどの講演が行われた。

通信・放送の最新のサービスの説明などが行われた
通信・放送の最新のサービスの説明などが行われた

スマホ向け放送局「NOTTV」の開始


 スマホ向けの放送局、「NOTTV」(ノッティービー)のサービス展開をはかるmmbi 取締役の石川昌行氏は自社のサービスについて講演。同社は2011年の10月に総務省より「V-highマルチメディア放送向けを行う移動受信用地上基幹放送の認定」を受け、サービスを開始する2012年4月1日に向け、準備を進めている。


 この「V-highマルチメディア放送」は、地上テレビ放送のデジタル化によって空いた周波数帯の一部の使ったもので「モバキャス」と呼ばれる。NOTTVはこのモバキャス内でmmbiが行う放送局だ。同社はモバキャスの帯域(207.5MHz以上222MHz以下の周波数の帯域)33セグメントのうち、大規模枠である中央の13セグメントの割当を受けているが、同社以外の放送局が続いていないといった課題も残されている。


 NOTTVは月額420円で、放送波によるすべての視聴者が同時に利用できる「リアルタイム放送」と、放送波を介して映像コンテンツを受信機に送り届け、一時蓄積後に視聴できる「蓄積型放送」を提供できることが特徴。リアルタイム放送では番組を見ながら視聴者が気軽に参加できるクイズなどのインタラクティブな番組を提供。蓄積型放送ではIPパケットデータの一斉放送が可能なため、スマホ向けのアプリなどを番組で紹介しながら、番組で紹介したお店のクーポンや動画ファイルを受け取ることが可能だ。画質もワンセグの10倍の高画質であるほか、モバイルならではの輻輳(ふくそう)が生じにくい放送の特徴を生かし、緊急災害放送など配信・受信することもできる。


 石川氏は親会社でもあるNTT ドコモの協力を受け「携帯電話に受信機能の搭載することで、対応端末の早期普及をはかりたい」とし、2016年度の目標契約台数を5000万台とするなど、「サービス開始時点でいかに早く普及させるが勝負」と抱負を語った。


ハイブリッドキャストの可能性


 一方、NHK放送技術研究所の砂崎俊二氏は、次世代の放送サービスに関する講演を行った。砂崎氏は、放送を取り巻く環境の変化について説明。「今までは放送を受けるだけだった視聴者が、ネットを用いることで番組を見ながら情報を発信できるようになった。視聴者同士で新たなコミュニティを形成し、一緒になってソーシャル視聴するなど、視聴スタイルが変化している」と指摘した。


 そうしたなかNHKでは、放送を軸にしながら通信の機能を活用できる「ハイブリッドキャスト」の運用を模索している。同サービスは従来通りの放送電波に加えて、リアルタイムで視聴している番組のニッチな情報などを放送局以外のサービス事業者によって視聴者に向けて配信し、視聴者はハイブリッドキャスト受信機を搭載したテレビで受信するといったもの。スマホなどの携帯電話やPCとの連携することにより、放送だけでは不可能だったサービスを展開することで、視聴者との双方向性をより意識したものとなっている。


 砂崎氏はこのハイブリッドキャストについて「多様なサービスを提供するために安心、安全でオープンな環境をつくっていきたい。そのためにはしっかりセキュリティを確保できるような仕組みを形成していく必要がある」と力を込めた。

NHK放送技術研究所・砂崎俊二氏   IIJデジタルコンテンツ配信課・山本文治氏
NHK放送技術研究所・砂崎俊二氏   IIJデジタルコンテンツ配信課・山本文治氏

ストリーミング放送の普及


 さらにIIJ(インターネットイニシアチブ)の山本文治氏がストリーミング放送について講演。ストリーミング業界では1994年にストリーミングアプリが登場し、2000年代になるとブロードバンドが普及したことで、それまで一部の層のみのユーザだったものが、一般のユーザにも浸透するようになり、ストリーミング放送が社会に対して認知度が向上するようになった。また2010年にはCPU能力と圧縮技術の向上により、ハイビジョンの映像を非圧縮で配信できるようになった。これについて山本氏は「コーデック*1の技術の進化に加え、デジタルライツマネジメントの浸透により権利処理ができるようになったことが大きい」と指摘している。


 山本氏はコーデックの変遷についても言及。かつて様々な企業が開発し主流を競った「Codec War」を経て、高圧縮で利便性の高いH.264*2へと主流が変化していったと説明。実際に2000年代半ば以降、CPUの性能向上もありH.264が広く利用されるようになっている。


 また山本氏は今後の動きについても言及。「ストリーミングは独自のプロトコル・フォーマットを脱却し、国際基準の採用に進んでいる」と解説。さらに、iOS(Apple)やAndroid(Google)が国際標準化団体の動きに追従するかどうかが焦点になると予想している。


 スマホの普及台数が急速に伸びるなか、それに連動させる放送や、スマホ自体による放送サービスが注目を集めている。今後の普及やサービス自体の「伸びしろ」に大きく期待したい。

(山下雄太郎)

注釈

*1:コーデック
データを圧縮・伸長するプログラムのこと。

*2:H.264
2003年5月にITU(国際電気連合)により勧告されたデータ圧縮方式の標準。その 後、ISOによっても勧告され、地上デジタル放送の携帯電話向け放送「ワンセグ」や携帯音楽プレーヤー「iPod」」などの標準動画形式として採用されている。

【セミナーデータ】

イベント名
:通信、放送、ITの連携による新たなコンシューマサービスの出現
主催   
:情報処理学会
開催日  
:2012年1月25日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

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