セミナーレポート

グローバル企業のイノベーションと知財戦略

国際知的財産活用フォーラム2012を取材

2012/2/9

 「国際知的財産活用フォーラム2012」が2012年1月23日に開催された。イノベーションや知財をテーマに、海外で事業を展開している企業や大学教授などが集まり、積極的な意見交換が行われた。

グローバル企業や大学教授などの意見交換がなされた
グローバル企業や大学教授などの意見交換がなされた

オープンイノベーションとしての展開


 インテル技術政策推進本部 本部長の竹井淳氏は「イノベーション」について言及。企業がイノベーションを起こす際、政府やそれ以外の組織が技術の現場に関与するとスピードが鈍るために、できるだけ規制をかけないようにするのが昔の考え方だったとした上で、「今は政策と制度が技術を可能にする」と明言。その国のIT政策・技術政策が企業の技術現場に密接に絡んでいるため、企業のイノベーションが国の政策等に大きく左右されることが現状だとした。


 さらに竹井氏は「オープンイノベーション」について説明。オープンイノベーションとは、企業が起こしたイノベーションを自分の組織だけではなく他社にも公開していくといったもの。そのため、他社で行われたイノベーションも自社のために活用する。場合によっては自分の研究組織でつくったものがビジネスで使われなければ、それをアウトソースするなどして会社に還元していくなど柔軟に対応していく取り組みだ。


 同社はコンピュータ・アーキテクチャ(コンピュータにおける基本概念)として使える技術をオープンにして「標準化」し、それを用いることでマーケットの拡大を意識し、イノベーションに取り組んでいる。


ブラックボックス化の必要性


 また、フレキシブルデバイスなどの早期実用化を目的とした活動を行う次世代プリンテッドエレクトロニクス技術研究組合の専務理事である井上博史氏は、モジュラー型製品の構築モデルについて解説。中でも、DVDを題材に取り上げた。同氏は基本技術、製品開発、国際標準化、知財(必要特許の90%以上)についてすべて日本が主導していたが、ビジネスは韓国、台湾に握られている現状に着目。「開発投資が利益に結びついていない」と指摘し、その理由として、基幹部品の相互依存が少ない点や技術蓄積の少ない途上国企業でも市場参入ができる点が挙げた。


 そうしたなか三菱化学は、色素とスタンピング技術という設備技術を統合することで、標準化に成功。自らは量産せずに、技術供給先から調達を行うなど「プラットフォーム化」を行っている。また、三洋電機(現・パナソニック)もCDからの技術の蓄積を生かし、すり合わせ型の機構部品と光ピックアップのモジュール化を行い、DVDプレーヤーの製造で重要な「トラバースユニット」をデファクト化することに成功している。このことをふまえ、井上氏は「利益の源泉は自分たちの技術の蓄積があるところをいかに“ブラックボックス化”して、基幹ビジネスにするかが重要」と位置付けている。


 一方、オープンイノベーションについては、「オープンなのは国際標準化の部分であって、オープンではないところをブラックボックス化し、ここを利益の源泉とする努力が必要」と指摘。全てをオープンにすることでは、利益を生み出すことはできないとし、「技術蓄積できるところを見極め、それをブラックボックスにすべきだ」と力を込めた。

タニタ知的財産室室長・小林由吉夫氏   ヤクルト本社開発部理事・野方健一郎氏
タニタ知的財産室室長・小林由吉夫氏   ヤクルト本社開発部理事・野方健一郎氏

グローバル企業の知財戦略


 後半は企業による知財戦略の意見交換が行われた。タニタ知的財産室室長の小林由吉夫氏は、同社の製品である病院・診療所向けの体脂肪計、料理用のはかりが新興国で売れる一方、知的財産制度が未整備で模倣品問題に悩まされていることを明かした。


 例えば中国の場合、法律と制度はあるが、なかなか実効性がないという問題がある。中国はまだ良いほうで、インドは法律があるが手続きが決められておらず、まともに模倣品対策ができない。ミャンマーに至っては、知的財産制度すらない。このようにその国の特徴に沿った形の模倣品問題があることを紹介した。


 また、ヤクルト本社開発部理事の野方健一郎氏は、同社の海外ブランド活用戦略について解説した。同氏は商標戦略のトラブル事例を報告。同社の主力商品「ヤクルト」は台湾、中国での標記を「養楽多」「益力多」としているが、2000年代に中国に進出するときに「益力多」という商品を使ったところ、すぐに「養力多」、「益楽多」という類似商品を第三者が発売したという。また、米国の西海岸では、アジア人居住のスーパーなどに同社が米国で使用していない商標である「養楽多」をつかった乳酸菌飲料が発売されている。こうしたことから、野方氏は、「ブランドの防衛は商標制度の活用だけでは限界がある」と説明した。


 そうした中、同社は、乳酸菌に関する過去半世紀の研究成果の蓄積を活用。同社の製品のヤクルトに対して発がんの抑制、アレルギー症状の改善といった付加価値を高めている。また、特定保健用食品制度など公的認証制度を活用してそれを表示にも反映。このように出所表示、商品表示に他社が簡単に追随できないような+αの要素を組み合わせることにより、製品の差別化をはかっている。


 製品の製造を効率化するプラットフォーム化は必要不可欠だ。ただ井上氏の言うとおりオープンイノベーションがもてはやされているとはいえ、その技術をブラックボックス化することで利益を確保することは極めて重要といえる。さらに製品のブランド価値を守っていく知財戦略もグローバル化が進むにつれてますます気を配っていかなければならない。そのことを改めて再確認させられたフォーラムだった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:国際知的財産活用フォーラム2012
主催   
:独立行政法人 工業所有権情報・研修館
開催日  
:2012年1月23日
開催場所 
:ホテル日航東京(東京都港区)

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