セミナーレポート
TRONSHOW2012が開催
スマートフォン普及で広がるユビキタス・コンピューティング
スマートフォンだけでなく、電柱や店舗などあらゆる「モノ」に情報を付加してネットワーク上に乗せ、いつでも、どこでも、誰でも利用できる「ユビキタス・コンピューティング」。
2011年12月14日から3日間開催された「TRONSHOW2012」では、こうした環境を実現するための研究状況などが講演されたほか、実機を使った実験デモなども行われた。
![]() |
| TRONSHOWのオープニングでは国内外の識者が顔をそろえた |
スマートフォンはより軽く、処理はクラウドで
「トロン」。あまり聞きなれない言葉だが、組み込み用のリアルタイムアーキテクチャの開発プロジェクトのこと。ここで研究・開発されたOSやCPUは、デジタルカメラや携帯電話、カーナビやタクシーメーター、自動車のエンジン制御から、果ては国産宇宙ロケット「H2B」にも利用されている。同プロジェクトでは、バーコードやRFIDなどのタグに埋め込む識別番号「ucode」を利用した実験なども行っている。
プロジェクトではこうした技術を利用して、「ユビキタス・コンピューティング」の実現を目指している。1984年からスタートした同プロジェクトは、ソースコードなどの技術情報を無償で公開している。これによって多数の企業に利用され、様々な製品が生まれている。
1日目の基調講演では、トロンプロジェクトのリーダーである東京大学教授の坂村健氏は「トロンはインフラに近いところだから」と、トロン技術の無償提供の理由を述べている。
坂村氏はスマートフォンの普及によって、自身の描く「ユビキタス・コンピューティング」が急速に現実味を帯びてきたと語った。スマートフォンで使われるネットワークはLTEなど、高速化が進んでおり、近い将来には通信速度が1Gbpsまでになると言われている。
こうした環境の変化を踏まえ、坂村氏は「こうなるとシステムアーキテクチャにも大きな変化が当然起こってくる。ネットワークが早くなればクラウドサーバに処理を預ければいいから、モバイル端末が高機能化する必要もなくなってくる。電波のコントロールをするトロンだけの軽い端末ができるのでは」と強調した。
![]() |
![]() |
|
|---|---|---|
| トロンプロジェクトを語る坂村氏 | 災害現場で被災者の位置情報を確認するデモも行われた |
銀座での位置情報実験
東京都は、2005年から「東京ユビキタス計画」と名付けて、トロンなどの技術を利用した実験を行っている。2011年は、スマートフォン向けアプリ「ココシル銀座」と連携して情報を配信。銀座を利用した実証実験を行った。
この計画は、街中にある街路灯や地面に、無線マーカーなどを利用した場所情報のインフラを提供して、その上で様々なコンテンツを提供するもの。街路灯などに備え付けてあるタグにスマートフォンをかざして位置情報を取得すれば、近辺の店舗情報や街歩きの情報が入ってくる。多言語対応することで外国人観光客にも対応している。
街路灯にあるタグは観光情報だけでなく、視覚障害者の白杖と方位センサなどを連携させて街歩きをナビゲートする。工事関係者などが持っている端末をかざすと、地中にあるケーブルなどの情報も取得できる。「いつでも、どこでも、誰でも」必要な時に必要な情報へアクセスできる環境が整いつつある。
東京都の邊見隆士氏は「ココシル銀座」で実用サービスのめどがついたとして、「ICタグや情報機器を道路付属物にして制度改正を行っていく」と今後の展望を語った。
取得された情報の扱いは?
ユビキタス・コンピューティングは利便性を高めるものであるが、個人の位置情報などが蓄積される。また、位置情報などを利用した広告配信なども可能となるものの、ユーザが求めない情報が送られてくる可能性もある。
ユーザの認証を経た上で、適切な個人向けのサービスを展開することになるが、緊急時はどうするのか。NTTドコモの佐藤一夫氏はセキュリティ面の個人情報活用について「日常と緊急時でルールの使い分けがいる。震災などの緊急時は、匿名化技術を利用して個人の許可を得ることなく、被災情報などを活用できる環境が理想的だ」と述べた。
道路に設置されているICタグの所有者と、そこから派生する情報の管理責任などの制度設計も必要となってくる。進む技術に追いつくべく、法制度の柔軟な対応が望まれる。
【セミナーデータ】
- イベント名
- :TRONSHOW2012
- 主催
- :T-Engineフォーラム
- 開催日
- :2011年12月14日~16日
- 開催場所
- :東京ミッドタウン(東京都港区)



