セミナーレポート

ZEB・ヒートポンプで期待される「省エネルギー」

NEDOが省エネルギー技術フォーラムを開催

2011/12/15

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2011年12月1~2日、東京都江東区の東京国際交流館にて、「NEDO省エネルギー技術フォーラム2011」を開催した。「3.11」以降のエネルギーの利活用に関する講演が行われた。

省エネルギーに関する講演を参加者は熱心に聴いていた
省エネルギーに関する講演を参加者は熱心に聴いていた

省エネの流れと注目されるZEB


 2011年3月11日以降、電力需給のひっ迫によって節電の流れとなり徹底した省エネ化へと進んでおり、エネルギー政策の基本的な見直しを余儀なくされている。すでに今冬は電力需給が拮抗し、来年の夏をピーク時には約1割の電力不足となる見通しとなるなど、原子力発電停止の影響は避けられない。


 こうしたなか、期待されているのが、消費電力の多いサーバルームの電力見直しなどでオフィスビルの省エネをすすめ、一方、太陽光発電など再生可能エネルギーで消費分を補うことで、ビル全体のトータルのエネルギー使用量(ネット)をゼロにするZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の取り組みだ。


 住環境計画研究所所長の中上英俊氏は、「東日本大震災後のZEBへの期待」という題で講演した。中上氏は2010年6月閣議決定した政府のエネルギー基本計画におけるZEBの供給見通しに注目。政府はこの計画の中でZEBを2020年までに新築公共建築物等で技術的に実現するとともに、2030年頃には供給する新築建築物半数がZEBとなることを目標にしている。


 中上氏はこの見通しに対して、「2030年頃までに行われる技術を見直すことで、中低層のオフィスビルに汎用すれば、実現は技術的に可能」と解説。「一般的にZEBが可能なのは3階建て以下のビルとされているが、10階建程度でも、現状の2割程度にエネルギー消費を抑えることができるができる」とし、「エネルギーの面的利用、太陽光パネルの壁面化(壁面利用)などを加味すれば、ZEB化に向けたポテンシャルは高くなる」と期待を込めた。


広がるZEBへの期待


 国内の大学でも、ZEBの取り組みは活発だ。東京大学生産技術研究所の大岡龍三氏は同大学駒場キャンパスの教育棟にZEBを取り入れる計画を進めていると話す。地中熱・地下水利用のヒートポンプシステムや放射冷暖房システムを利用することで、大学キャンパスにおけるZEB実現に向けた実証研究を視野に入れている。


 また、ビルの省エネ技術を持った企業がおこなっているトルコの省エネ事業の紹介も行われた。トルコ政府は、2009年までに公共建物を限りなくZEBに近付ける目標を掲げている。こうしたなか、省エネ技術を持つ日本企業がこのトルコの案件を受注。トルコのイズミールにあるエーゲ大学で、再生可能エネルギーの利用や省エネの様々な日本の技術を応用していく構えだ。

住環境計画研究所社長・中上英俊氏   筑波大学教授・内山洋司氏
住環境計画研究所社長・中上英俊氏   筑波大学教授・内山洋司氏

ヒートポンプに関する講演


 一方、今回のフォーラムでもうひとつ大きく取り上げられていたのが、「ヒートポンプ」。ヒートポンプとはコンプレッサー(圧縮機)によって、低温部分から高温部分へ熱を吸い上げる技術・手段を指す。普及が進むことで多くのCO2を削減できるというポテンシャルをもっている。


 実際に国内のCO2排出量は産業用ボイラー、業務用給湯、家庭用暖房、家庭用給湯などで年間1.9 億トンも排出しているが、ヒートポンプの普及により、年間0.6億トンにまで減るとされている。CO2排出量の削減量は1.3億トンに及び、国内総排出量の約10%にもなる。


 こうしたなか、実際に業務用ヒートポンプ給湯機の出荷台数は毎年増加している。筑波大学の内山洋司教授は講演で、「産業用ヒートポンプの目覚ましい発展の要素は2つ。1つはユニット単体の大容量化。もう1つは出力温度が120℃対応のものが、160℃対応のものの開発が進められるという“高温化”が進んでいるということだ。今後、日本では、“WISE(Welfare:少子高齢化社会において福祉に役立つ製品、Information:情報技術における様々な発展が期待できる製品、Safety:インフラの安全性が確保される製品、Environment:環境に配慮した製品 )”な社会をどのように築いていくかが求められていく。ヒートポンプはまさに“WISEであるもの”であり今後の発展に期待できる」と力を込めた。


 NEDOも家庭用次世代型ヒートポンプシステムや、都市域における下水管路網を活用した下水熱利用・熱融通技術といった「次世代型ヒートポンプ」の研究開発・実施体制を整えており、普及を後押ししていく方針を示している。


 3.11以降、エネルギーに対する考え方が変わる中、ZEBやヒートポンプといった「省エネルギー」に関する企業の取り組みや国の政策が注目を浴びている。これらの展開は今後の日本のエネルギー政策の方向性を決定づけるものとなりうるために、今後の取り組みから一層目を離すことはできないと感じた。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:NEDO省エネルギー技術フォーラム2011
主催   
:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
開催日  
:2011年12月1日~2日
開催場所 
:東京国際交流館 (東京都江東区)

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