セミナーレポート

電子出版に関する国内最大の展示会が開催

東京国際ブックフェアで電子出版に関する展示

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2011/8/4

 2011年7月7日から10日にかけて東京ビッグサイトで東京国際ブックフェアが開催された。同イベントは年1回行われる国内最大規模の書籍関連の展示会。東京国際ブックフェア内では、さらに様々なカテゴリごとに展示会が行われ、中でも「電子書籍(e-book)」に関する展示会「国際電子出版EXPO」は、大いに賑わっていた。

東京国際ブックフェア名誉総裁であられる秋篠宮殿下と、秋篠宮妃殿下もテープカットに参加された。
東京国際ブックフェア名誉総裁であられる秋篠宮殿下と、秋篠宮妃殿下もテープカットに参加された。

電子出版に関する技術の展示


 「国際電子出版EXPO」は今年で15回目。国内で行われる電子出版関連のイベントの中では最大規模を誇っている。


 近年、電子出版業界では「著作権と費用の回収」が課題として提言されている。デジタル媒体で書籍を出版した場合、違法な複製が容易であり、データ劣化も起こりづらい。そのため例えば「タレントを使った広告」など、複雑に権利が絡み合っているものについて、どうしても提供者側が出稿をためらってしまうという問題があった。


 展示会では、著作権や権利関係をスムースにするための管理方法「DRM(Digital Rights Management、デジタル著作権マネジメント)」関連の出展企業が、多く見受けられた。例えば、複製を防ぐために、ページごとに暗号化処理を施したり、一定期間が過ぎると広告部分だけ自動的に消去されるなどといった技術だ。こうした技術は今後、権利絡みで課題が多い電子出版普及のカギとなってくるだろう。


 また利用者側からの視点でも、電子出版の利用にハードルがある。よく言われるのが「購入方法」だ。これまでの「書店で金銭を払い現物を受け取る」という方法に比べ、電子書籍の購入方法には直接的な金銭のやり取りがなく、難しさを感じる人が多いという。


グローリー株式会社の「電子書籍自動販売機」
グローリー株式会社の「電子書籍自動販売機」
ブリジストンの電子ペーパーAeroBee。電気を使うのはページを換えるときだけの節電仕様
ブリジストンの電子ペーパーAeroBee。電気を使うのはページを換えるときだけの節電仕様

 両替機やレジつり銭機などを開発しているグローリー株式会社のブースでは、このギャップを解消するような「電子書籍自動販売機」の参考展示が行われた。通常の自動販売機のように、書籍を選択しお金を投入すると機械からQRコードが書かれた紙が出てくる。あとは携帯電話などからQRコードにアクセスしてダウンロードするだけ。通常の電子書籍のようにクレジットカード登録や会員登録は不要。担当者は「事前の契約なしで気軽に購入ができますし、書籍を普通に買うよりも何割か安く購入できます」と説明していた。


 ほかにも動画と連動させたデジタル雑誌や、電子書籍普及には欠かせない電子ペーパー・電子書籍専用リーダーなどの展示もあり、電子書籍のさらなる普及の可能性を感じさせた。



電子出版市場のこれから


 同会場の会議棟では、ブックフェアに関係する出版業界を中心に著名人が多く登壇するセミナーも開催された。電子出版関係者からも、業界の国際的な動向や今年の市場の動きなどについて講演があった。


 デジタルコンテンツの作成や市場動向調査などをしている株式会社インプレスホールディングス取締役の北川雅洋氏は、2010年度の電子書籍市場について報告を行った。同氏によると2010年度の市場規模は650億円で前年比は113%ほど。市場では「スマートフォンや携帯電話をリーダーとして利用して、漫画を読む」というのが大半になっている。


 ところが、すでに日本より先行して電子書籍が浸透しているアメリカでは、専用リーダーの普及とコンテンツの幅広さにより、前年比200%を超える伸び率を示している。そのため北川氏は「(アメリカのような)専用リーダーの普及とコンテンツ幅の広がりが日本にも波及すれば、数年で2000億円規模の市場になる」と予測した。


 しかし今後の電子書籍普及に向けては、課題も多くある。北川氏は「紙の書籍を販売する書店と比べて、露出の面における圧倒的な差がある」と話す。紙書籍の店舗は国内に1万5000弱。一方で電子書店は、30店舗程度しかない。また店内での書籍の露出についても、電子書店は一度にせいぜい5、6冊程度しか見ることができず、平積みをしたり、高さを使ったりできる紙の実店舗には大きく及ばない。「露出度で言うと、紙の書籍に比べて電子書籍は1/5000程度しかない。読んでほしいと考えたら、必要な人に届くために特別なことをした方が良い」とし、SNSなどネット独自の工夫を凝らす必要性を訴えた。


 紙の書籍との差については、同じ講演の中で、ソニー株式会社の野口不二夫氏も提言をした。現在、電子書籍は商品によってファイル形式が異なる場合があるため、ユーザが所有している電子書籍リーダーによっては読むことができない。そのため、あらゆる状況でも読むことが可能な紙の書籍に比べて、汎用性において見劣りする。野口氏は「紙の本のように、どのデバイスでも読めるようにするためには、出版社、電子書店、書籍リーダーの発売元などでよく話し合う必要がある」と結んだ。


 書籍には先人の知識・経験などを集約し、後世に伝える役割がある。仮にデジタルに書籍の媒体が移行しても、その重要な役割は変わらない。業界が一致団結することで、紙に劣らない電子書籍の基盤づくりを進めていってほしい。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:第15回国際電子出版EXPO
主催   
:東京国際ブックフェア実行委員会、リードエグジビションジャパン
開催日  
:2011年7月7日~9日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

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