セミナーレポート

JAXAシンポジウム2011が開催

「はやぶさ」の成果と宇宙での長期滞在について講演が行われる

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2011/8/1

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2011年7月7日、JAXAシンポジウム2011を行った。小惑星探査機「はやぶさ」を話題にした対談や、宇宙飛行士・野口聡一氏を交えたトークイベントが行わるという内容。日本の宇宙に対する取り組みについて、宇宙飛行士・JAXAの研究者から直接話を聞ける貴重な場となり、会場の参加者は熱心に耳を傾けていた。

副会長・樋口氏のあいさつ


 冒頭でJAXA副会長の樋口清司氏があいさつ。東日本大震災でJAXAも被災したことについてふれつつ、被災地に最大限の協力を行っていくことを約束した。その上で、陸域観測技術衛星「だいち」がこれまで世界中の被災地に画像を送ってきたことを説明。そのことを受け、東日本大震災では14の国と地域から5000を超える日本の被災地の画像が送られてきたことに感謝の意を表明。そして現在、古川聡飛行士がロシアのソユーズ宇宙船に乗り、国際宇宙ステーションに滞在していることを紹介した。


小惑星探査機「はやぶさ」とその成果


 続いて、JAXA宇宙科学研究所准教授の安部正真氏とサイエンスライターの竹内薫氏の対談が行われた。2人は、7年前に小惑星「いとかわ」の微粒子を採集するために打ち上げられ、そのカプセルが地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」について語り合った。

「いとかわ」に接近する「はやぶさ」
(提供:JAXA、CG池下章裕氏)
「いとかわ」に接近する「はやぶさ」 (提供:JAXA、CG池下章裕氏)

 安部氏は「軌道を変える技術」や「効率的なエンジン」など、いとかわの微粒子を持ち帰る上で重要な役割を果たしたはやぶさの様々な機能を説明。なかでも地球から3億キロという、太陽と地球の2倍の距離に位置するはやぶさに指示を送るための通信技術について言及。この気の遠くなるような距離を、片道20分の時間をかけひとつひとつ指示を送っていたことを紹介した。


 さらに7年ぶりに帰還したはやぶさのカプセルを現地に行って直接回収してきたことに触れ、その状況を説明した。安部氏によると、回収したカプセルは外気に触れないようにクリーンルームで分解されたとのこと。さらに40ミクロンという髪の毛一本よりも細い微粒子をテフロンのヘラですくい、電子顕微鏡で観察するなどして分析したという。


 その結果、カンラン石や輝石という日本でも見ることのできる鉱物の他に、鉄と硫黄が混じった純粋な硫化鉄が発見された。それがいとかわのものだとわかったことで、微粒子採集の成功が確認された。そして、その粒子から、少なくとも46億年以上前、すなわち地球ができるもっと前にいとかわが存在したことがわかったとのことだ。

「はやぶさ」のカプセルを回収する安部氏(右から2人目)
(提供:JAXA)   カプセルのサンプルを取り出す様子
(提供:JAXA)
「はやぶさ」のカプセルを回収する安部氏(右から2人目) (提供:JAXA)   カプセルのサンプルを取り出す様子 (提供:JAXA)

 安部氏は「はやぶさは、いとかわの微粒子という、われわれが知り得ないものを発見した。そのため“歴史書”を、見ているような、貴重なものを見る感覚」とその感動を独特の表現で示していた。


野口聡一氏が語る日本の宇宙事業の意義


 また、当日は、宇宙飛行士の野口聡一氏のトークセッションも行われた。野口氏は2005年、米国のスペースシャトル・ディスカバリーで宇宙に行き、2009年にはロシア・ソユーズ宇宙船に乗船、国際宇宙ステーションにて5か月間滞在した経験をもつ。両国の宇宙に対するアプローチについて野口氏は「米国は色々な意味で実用的。ロシアはアカデミックで座学から、基礎をきちんと抑える。だが、最終的に目指すところは同じ」と感想を語っている。


 さらに野口氏は現在、宇宙ステーションに滞在している古川氏について映像を交えながら説明。古川氏が医師でもあることを踏まえて「人間が宇宙で長期滞在するために必要なことを医師の視線で確かめることができる。どんな影響があったのか、自分の身体的な変化をより科学的に考察することができる」と話した。他方、宇宙から見える地球の感想として、「宇宙から地球を見ると、様々な資源が地球にある。逆にいうと、そこにしか資源がない。目に見える形で資源の限界を感じることができる」と地球の資源の希少さを改めて再確認した。


 野口氏は国際宇宙ステーションでの滞在・実験に日本が参加している意義を指摘。「ガガーリンが初めて宇宙に行ってから、およそ50年の歳月が経った。古川氏が行く間に、国別の滞在日数で日本は第3位になる。日本人としての宇宙生活の経験が蓄積されていく。日本ならではの成果が広がっていく。それが大きな意義だと思う」とした。


 そして、日本の実験棟「きぼう」で、ロボットアームを使った実験などを行っていくことで、世界的に評価され、日本の宇宙における取り組みが様々な経験を積んでいくことに大きな期待を寄せた。


 はやぶさのカプセルが日本に帰還し、小惑星いとかわの微粒子を採集できたことは記憶に新しく、日本の宇宙への技術力の高さを示すことができた出来事だった。こうした無人惑星探査機の取り組みや国際宇宙ステーションでの経験などが世界第3位の宇宙滞在時間数を持つ経験値となっていく。宇宙に関しては「日本が世界を引っ張っている」と表現してももはや過言ではないと言えるのではないだろうか。日本の宇宙事業に関してこれからも一層の飛躍を望みたい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:「JAXAシンポジウム2011」
主催   
:宇宙航空研究開発機構(JAXA )
開催日  
:2011年7月7日
開催場所 
:有楽町朝日ホール(東京都千代田区)

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