セミナーレポート

震災後の在宅勤務について総務省・経産省が
講演

東日本大震災で見直される「テレワーカー」

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2011/6/2

 東日本大震災から1ヶ月余りが過ぎた4月15日、丸ビルカンファレンスルームで、「第12回テレワーク・ミニセミナー」が行われ、在宅勤務を含めたテレワークについて、総務省、経済産業省職員による講演がなされた。開催2週間前の告知にもかかわらず、参加者は100名近くに上り、在宅勤務に対する意識の高まりを感じた。

横浜市立大学教授 藤内祝氏
100名近くの参加者が集まった

テレワークと在宅勤務


 テレワークとはモバイル端末などを利用し、社内外を問わない働き方のこと。外出先でPCを利用した業務などもこれに入る。在宅勤務もテレワークの形態の1つだ。


 テレワーク普及の現状を紹介したのは総務省情報流通行政局の吉田恭子氏。2009年時点では約300万人が在宅勤務を行っているが、2015年までに在宅型テレワーカーを700万人にするという目標を政府は掲げている。「在宅勤務のモデル事業紹介やテレワークを試してみたい、という企業にシンクライアントを提供してきた」と、同省の取り組みを紹介した。


 吉田氏は「ベンダー側では3ヶ月間限定でリモートアクセスツールの提供などを行う企業が出てきているほか、クラウドサービスについての問い合わせが通常の5倍近くになっている企業もある」と述べ、今夏(2011年)の電力不足問題に絡んだ、在宅勤務について企業の関心の高さも指摘した。


 続いて講演した経産省商務情報政策局の安部一真氏も東日本大震災に触れ、「もともとBCP(事業継続計画)は注目されていたが、(震災で)電気が来ない、通勤ができないという勤務の根幹を揺るがす事態となった。夏場の電力供給体制は未知数であり、合理性を失わずに集中型の労働を分散させる考え方が必要だ」と述べた。


 安部氏はテレワークのシステムは数万円単位での導入可能な安価なものとして、導入すれば「東北にいる優秀な人材を活用することもできる」と強調した。


ウロウロするより仕事ができた


 実際に在宅勤務を行っている日本ユニシスの小田村和江氏も講演。同社は在宅勤務制度を2008年から実施している。シンクライアントPCとIP電話で週3日の在宅勤務体制をとっている。Webメールや勤怠、稟議書など、Web化されているシステムを見ることができるという。


 「『胡散臭いもの』に見られがち」と、在宅勤務に対する一般的な印象を述べた小田村氏は、今回の震災時、在宅勤務していた社員が電源・インターネット接続が確保されている限り平常に業務をこなせたことを紹介。「鉄道の運休など出社するまでうろうろしているよりも、業務環境が整っている自宅にいた方が、よほど仕事になっていた」と感想を述べた。


 テレワークマネジメントの田澤由利氏は、中途半端な在宅勤務の導入は企業にとってデメリットになるだけ、と指摘した上で「テレワークが効果を発揮するには、あらゆる会社の機能、データもコミュニケーションも通常通りできること。どこからでも仕事ができる、でも会社で仕事をしてもいい、という環境が企業を強くする」と力を込めた。

「在宅勤務の環境はすでに整っている」経産省の安部氏は強調した   パネルトークでは震災当日の各自の業務についても語られた
「在宅勤務の環境はすでに整っている」経産省の安部氏は強調した   パネルトークでは震災当日の各自の業務についても語られた

テレワークには労働基準法の見直しも必要か


 講演後のパネルトークでは、テレワークの今後について意見交換がなされ、吉田氏は「暑い電車に乗って、暑い会社で働くとなると、みんなが疲れてくる。これを軽減するために、少しずつ在宅勤務を導入していくことが、(電力不足は)練習としてもいい環境なのでは」と述べた。


 安部氏は「気分転換も兼ねて、喫茶店や公園のベンチでPCを開いて企画書を作っていることもある」と自身のワークスタイルを紹介。「サボっているようで、昼の期限までに企画書はできあがっている。『テレワーク』と肩肘を張るより、喫茶店に入って1時間紙に(企画書のアイディアなどを)書く、というところからテレワークを考えてみるのもいい」とテレワークへのスタンスを述べた。


 パネルトーク後の質疑応答では、会場から「社内業務はともかく、相手がいる営業的な側面を考えると難しい」と、在宅勤務の弊害を指摘する声や、「本来仕事は時間と関係ない。『時間で管理する』労働基準法のもとでテレワークをする、という状況を国が改善していくべき」と、現行の労働基準法が在宅勤務という労働形態を阻害している点を指摘する声も上がった。


 小田村氏も講演で述べているように、社員の業務把握が見えにくいとされる在宅勤務は「なんとなく胡散臭いもの」と見られがちであったが、今回の震災によって在宅勤務の有効性が少なからず実証された形だ。


 テレワークはセキュリティも含めてITの社内再整備が不可欠である。即導入というわけにはいかないが、企業組織のあり方を改めて考えるきっかけとなる講演となった。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:「第12回テレワーク・ミニセミナー」
主催   
:テレワークマネジメント
開催日  
:2011年4月15日
開催場所 
:丸ビルスクエア&コンファレンス(東京都千代田区)

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