セミナーレポート

平成22年度CRC国際シンポジウムが開催

日中の科学技術の交流について両国の識者が意見交換

このエントリーをはてなブックマークに追加
2011/5/9

 科学技術振興機構・中国総合研究センターは2011年3月2日、平成22年度CRC国際シンポジウムを東京都渋谷区の国連大学ウ・タント国際会議場で開催した。

広い会場は多くの聴講者で埋め尽くされた
広い会場は多くの聴講者で埋め尽くされた

日本の識者の所感


 中国では2000年代に入ってから科学技術が急速に進展し、国際的な水準の企業も数多く生まれてきた。これまで日本は技術開発で優位に立ってきたが、これから大きな発展を秘めている中国との関係は、特に技術協力の面で重要とされている。 今回のシンポジウムでは、日中の科学技術の現状や今後について両国の大学関係者や企業などによる意見交換が行われた。


 中国総合研究センター・センター長の吉川弘之氏は、中国が驚くべき経済成長を続け、科学技術の基礎から応用まで、非常に幅広い研究を強力に推進していることを評価。「産業力とともに科学技術の水準も急速に向上し、世界水準に到達している」と称賛した。


 また、文部科学副大臣の笹木竜三氏も所感を述べた。  近年、日本は科学技術を用いたイノベーションに特に力を入れている。2010年末に編成した政府の予算案でも、科学技術予算は過去最高の額を記録するなど、科学技術に対する重要性はますます増加するばかりだ。


 日本は中国に環境面で大きく貢献している。例えばJICAの取り組みを例にあげると、1980年に日中環境保全センターを設立、中国の59都市を対象に下水道を整備し、39都市を対象として廃物処理を支援してきた。これによって中国では全体の資源循環の効率化が行われたほか、資源の浪費と環境汚染の防止につなげることができた。また日本側でもグローバルな環境問題に取り組む経験を中国国内で体験することができている。


 このような背景のなかで、日本側はアジア諸国における研究者を多く受け入れるなど、技術交流を活発化させてきた。なかでも中国は日本が受け入れている研究者の出身国として、10年以上もトップレベルを維持している。文部科学省では、日中の大学や研究機関の科学技術協力・交流をはかるために1980年に締結された「日中科学技術協力協定」を、政府レベルで取り組むなどして、積極的に推進しているところだ。


 笹木氏は「文部科学省としても中国を含むアジア地域の科学技術交流、技術的イノベーションを、引き続きアジア地域に広げていくつもりだ」と力を込めた。


中国の識者の発言


 シンポジウムでは中国側の識者からも活発な発言がなされた。駐日中国大使館参事官の李纓氏は、中国が、現在、クリーンエネルギーの開発、省エネ、環境技術などを高水準にまで引き上げ、人々の生活の質を上げることをとりわけ重視して研究を進めていると説明。
 そのうえで同氏は、「日本ではこれらの分野において世界トップレベルの力を持っており、豊かな経験を持っている。中国もこれらの分野において日本をサポートすることができる」とし、両国の一層の技術交流を期待した。


 一方、上海交通大学学長の張傑氏は、日本と中国が古くは遣唐使の時代から交流があり、明治維新以降も中国が日本の社会制度などを参考にするなど、両国は深くかかわり合ってきたことを回顧した。そのうえで、同大学が中国で最初の日本への留学生を送り、東京大学、京都大学をはじめとする大学と提携を結んで技術研究の交流を頻繁に行うなど、常に中国の大学のなかでも先陣を切って取り組んできたことを明らかにした。


 同大学は、中国にとって最初の、内燃機関、人工衛星、戦闘機などを手がけるなど、科学分野における多くの優秀な人材を輩出しており、これからも産学官の連携を駆使するなどして中国のなかでトップ3を維持していく構えだ。

駐日中国大使館参事官の李纓氏   上海交通大学学長の張傑氏
駐日中国大使館参事官の李纓氏   上海交通大学学長の張傑氏

中国で活躍する日本企業


 シンポジウムでは中国で活躍する日本企業も、中国で展開する事業内容について講演を行った。


 東芝メディカルシステムズ取締役上席専務の朝比奈宏氏は中国で展開する同社の医療機器事業に言及。同社では大連の製造工場に医用開発センターを設立し、北京の研究開発センターに医療開発部門を増設するなど、中国の拠点を拡大している。朝比奈氏は今後の課題として「若手の技術者は優秀な人材は多いが、企業へ全面的な信頼をおいていない。今後は技術者と企業が信頼しあえるような、魅力のある環境を提供していくことが必要だ」と話した。


 元駐日英国大使で、東アジア科学史の専門家でもあるサージョン・ボイド氏は自身の大使としての経験や、研究者としての視点から、日中関係が友好的な関係を築いていくことが、アジア地域の発展にとっても大変重要な意味合いをもつと指摘。


 さらに「古来より漢字をはじめ、様々な文化が行き交う歴史を通して両国は独自に発展してきた。これら両国の友好関係が今後もアジアの主要な機動力となり、欧州にとっても力強い機動力となりうる」と期待を込めた。


 両国の技術交流がこれまで継続して行われてきたのは、両国の関係者が切磋琢磨して取り組んできた積み重ねのたまものだ。有識者レベルでのこうした意見交換を今後も続けてほしい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:「平成22年度CRC国際シンポジウム」
主催   
:科学技術振興機構・中国総合研究センター
開催日  
:2011年3月2日
開催場所 
:国連大学ウ・タント国際会議場(東京都渋谷区)

【関連カテゴリ】

IT政策その他