セミナーレポート

「第14回文化庁メディア芸術祭」が開催

ITと芸術が融合したメディア芸術の祭典

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2011/3/31

 2011年2月2日から13日までの12日間、東京都港区にある国立新美術館で、「第14回文化庁メディア芸術祭」が開催された。19世紀後半のカメラの発明から、新技術と芸術の融合は「メディア芸術」あるいはニューアートなどと呼ばれ、近年ではデジタル技術もメディア芸術へ取り入れられている。

開会前の2月1日に行われた表彰式。髙木義明文部科学大臣(左)、功労賞受賞の栗原良幸氏(右)

開会前の2月1日に行われた表彰式。髙木義明文部科学大臣(左)、 功労賞受賞の栗原良幸氏(右)

日本の文化としてのメディア芸術


 昨今、日本産のアニメやゲームなども、デジタル技術を用いた「メディア芸術」として海外から高い評価を受けている。これをうけた文化庁は、優秀な作品を顕彰し鑑賞するための機会として1997年より「メディア芸術祭」を開催している。同芸術祭はアート部門、アニメーション部門、マンガ部門、エンターテイメント部門の4部門において、受賞作品を会場内に展示するほか、業界に多大な功績があった人物には功労賞を贈っている。


 14回目になる2010年度の応募総数は、2645点にも及ぶ。海外からの応募数も増え続けており、メディア芸術祭に対する国際的な注目度の高さがうかがえた。この動きについて、東京大学大学院教授の浜野保樹氏は「メディア芸術の新しい分野が確立されつつある」とコメントしている。


 開催日前日の2月1日には、近隣にある東京ミッドタウンのホールで各部門の賞と功労賞の授賞式が行われた。功労賞には、手塚治虫氏の「三つ目がとおる」など数々の作品を担当し、マンガ文化を世界的に普及させた功労者として講談社の編集者・栗原良幸氏が選ばれた。同氏は受賞のコメントとして「日本のマンガは2コマからなっている。面白い2コマが思い浮かべば、何千コマのマンガを生み出す出発点になる」と、独自の見解から欧米のマンガ文化との違いを述べた。

マンガ部門優秀賞受賞「ぼくらの」作者鬼頭莫宏氏
マンガ部門優秀賞受賞「ぼくらの」作者鬼頭莫宏氏

先端技術ショーケース’11で実験的な試み


 メディア芸術祭で展示されている作品の創作には、その多くにデジタル技術が利用されており、なかには高度な技術が要求されるケースもある。


 「デジタルメディア作品の制作を支援する基盤技術」を研究している科学技術振興機構は、2006年からメディア芸術祭内で、協賛展示「先端技術ショーケース」を行っている。2011年の「先端技術ショーケース’11」は「かえり道のアートスペース」。メディア芸術祭の出口付近に設置された「かえり道のアートスペース」は、一般来場者が作品に触れた際に抱いた感想を、視覚的に表現するための空間として設けられた。

先端技術ショーケース’11の展示
先端技術ショーケース’11の展示

 この空間では、閲覧者がフィルムに感じたことを自由に描いた「表現カード」を作る。この表現カードはスタッフによってスキャニングされ、使われた言葉や描かれた絵などに従って「属性」タグが付けられる。来場者が書いた「表現カード」はシステム上において「属性」で仕分けられ、会場内のモニターに表示される。同じ属性を持つ表現カードは、モニター上で線によって結び付けられ、閲覧者が自分に近い感想を抱いた人がどのように感じているかなどがわかる、というものだ。


 同研究を統括している東京大学名誉教授の原島博氏は、2月9日に国立新美術館内の講堂で開催されたシンポジウムで「かえり道のアートスペース」の意義について「作品を公開することで、それに対するフィードバックを得て次の作品へ生かすことができる」と話す。同氏はさらに「美術館の『帰り道』をデザインすることでこれまで見せる側と見る側がいる一方通行の状態からフィードバックを得ることができるようになる」とし、フィードバックを絶つことで自らの世界を表現する芸術家の志向とは180度異なる、デジタルメディアならではの見解を示した。


 世界に誇るマンガやアニメ、ゲーム、映画などデジタルメディア芸術になりうる「コンテンツ」を日本の強みとする動きは各界でも存在する。そして、これらの日本発のコンテンツ産業が地力をより高めていくためにも、引き続きデジタル技術基盤の研究開発が求められる。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:「第14回文化庁メディア芸術祭」
主催   
:文化庁、国立新美術館、CG-ARTS協会
開催日  
:2011年2月2日~13日
開催場所 
:国立新美術館(東京都港区)

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