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2015/1/13

電磁波スペクトル

光と電波は両方とも「電磁波」

 電磁波スペクトルとは、光、電波の周波数の変化を指す。もっとも低い極超長波から、一番高いガンマ線までの周波数の変化に伴い、持ち合わせる性質も大きく変わっていくのが特徴だ。全体を指して電磁波と呼び、そのうち最も周波数の低い極超長波からマイクロ波までを電波、マイクロ波よりも周波数が高い遠赤外線から可視光線(あるいは紫外線)までの周波数の電磁波を光と呼ぶ。


 電磁波とは、電気が磁気を発生させ、その磁気が電気を発生させるという連続の現象で伝わる「波」を指す。中波、マイクロ波、電波、光、可視光線、放射能、紫外線などなど電磁波には様々な分類と名称があるが、現象としての根幹は変わらない。しかし、振動の回数=周波数により、その性質は大きく異なってくる。


 電磁波の速度は、周波数に関わらず一定でおおよそ30万km/秒だ。そのため、波長は周波数によって自動的に決まる。周波数は高ければ高いほど(1秒間の振動数が高ければ高いほど)、波長は短くなってくる。


 周波数がもっとも長い極超長波は、周波数が3~3kHz…つまり秒間3~3,000回。速度から逆算した波長は100~100,000kmと、もっとも長い場合は地球1周よりも長くなる。逆に最も波長が短いガンマ線になると周波数は3×107THz、1THzは1012Hz。すなわち1秒間に3×1019Hz=3,000京回の振動がある。30万kmは3×108m。3×108m/3×1019Hz=10-11m/Hz。何と波長はわずか1,000億分の1メートル、0.01nm(10pm)になる。

波長の大きさのイメージ
地球規模から観察の限界までその大きさは幅広い

周波数のスペクトルによる性質の変化


 電磁波は、極超長波からガンマ線まで周波数によって、その性質を大きく変えていく。3THzを境目に、一般的には電波と光は分かれるが、これは性質というよりは、総務省の法令的な分類による影響もある。


 電波と光の境目にあたる電磁波の、マイクロ波(電波側)と赤外線(光側)を比較した場合、赤外線は水に浸透しないが、マイクロ波は浸透する。そのため人間に照射した場合、赤外線は表皮で止まるが、マイクロ波は体内まで浸透する。この性質が、マイクロ波を照射される環境における発がん性の検証がWHOなどの国際機関で進められている理由となっている。一方で、内側まで浸透する性質を利用したのが「電子レンジ」。表面からではなく内部から対象を温めることができるのは、浸透する性質を利用しているためだ。


 赤外線では表皮で止められてしまう電磁波だが、赤外線よりもさらに周波数を高くし、可視光線、紫外線を超えて、X線まで行くと再び人体に浸透、貫通するようになる。医療の現場で使われるレントゲン写真は、こうしたX線の性質から成り立っている。


 大気圏内には電離層と呼ばれる層がある。大気上空の原子・分子に紫外線がぶつかった反応でできた層で、地表からおおよそ50~500kmにある。この層に極超長波(3Hz~3kHz)から短波(3MHz~30MHz)までの電磁波がぶつかると反射されてしまう。しかし周波数が超短波(30MHz~300MHz)より高い周波数帯になると、通り抜けることが可能だ。衛星通信や、はやぶさのような地球外探査機との通信は、極超長波などではできず、直進性の高い超短波以上を使うことになる。


 実際には、超短波から極超短波(300MHz~3GHz)は、通信として使い勝手がよく、テレビ放送やスマートフォン、Wi-Fiなど我々にとってもっとも身近な通信領域としてほぼ占拠されている。そのため地球外との通信には、極超短波よりも周波数の高いマイクロ波(3GHz~3THz)の中では、比較的、低周波域に属するセンチ波(3GHz~30GHz)が使用されている。


 周波数が高くなるとともに直進性が高くなり、大気圏を抜けることが可能になるが、マイクロ波よりも周波数がかなり高い紫外線(750THz~30PHz)になると、再び大気圏を抜けられなくなる。こちらはかなり有名な現象だが、オゾン層で吸収されて、さえぎられてしまうのだ。ただ周波数が高くなるだけの変化のはずだが、性質の変化はまったく一直線でない。

接頭辞の単位一覧
電磁波では幅広い単位を使うため、関係を覚えておかないと混乱をする

 大気圏に反射する性質は球状である地球上で、遠くに情報を伝える手段として利用されている。一度電離層に反射させて通信することで、直線では届かない範囲と情報のやりとりを可能にした。電波のうちマイクロ波などは水によって極端に減衰するため、降雨時ですら衛星通信などは調子が悪くなる。ところが、周波数が低い極超長波は、水に強く、海底まで届くため、潜水艦の通信などが主な用途になっている。


 電波における全ての周波数帯域の名称は、単純に3×10のX乗~(X+α)乗の範囲で区切られている。一方で赤外線よりも周波数の高い領域は可視光線など、観察が可能なためか主に性質による分類になっている。そのため同じ電磁波でも光以上の周波数を持つものは、電波のように整った階乗による分類にはなっていない。身近な現象であり、その性質の変化により様々な用途に使用されている電磁波。気になったら、是非とも調べてみて欲しい。

(井上宇紀)

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