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2014/8/25

アストロバイオロジー

天文学・宇宙科学からの発展

 アストロバイオロジーとは「宇宙=アストロ」と「生物学=バイオロジー」を組み合わせた言葉。地球圏内の生物学であるバイオロジーを超えて、宇宙であっても通用する生物学として提唱された。大きく分けるとアストロバイオロジーには「宇宙環境内での地球上の生物」と「地球外生命体の調査」という2つ視点がある。


 アストロバイオロジーには物理、化学、地学など多数の分野の学問が関わってくるが、大きくは天文学と生物学に分けられる。


 天文学の歴史はかなり古く、紀元前まで遡ることができる。古代の天文学は暦の作成のためにあった。農業を行うためには今が1年のどの時期か知り適切なタイミングで種を蒔くなどの作業を行う必要がある。


 こうした必要性から現在の季節・時期などを確認するために、太陽や月の運動が観測された。太陽・月ともに肉眼で確認が可能なため、望遠鏡がない古代から、こうした目的の中でより正確な暦を作るために天文学が発達していった。


 紀元前の時点で日食や月にできる地球の影などから、月までの距離や地球1周の距離などはすでにかなり正確に割りだされていたという。一方で天文学は古代において占星術などと密接な関係があり非科学的な側面も持っていたが、もちろん現在では分離されている。


 17世紀になって望遠鏡が発明されると、これまでの肉眼による観測よりはるかに詳細なデータが得られるようになる。天動説に代わって、観測結果の蓄積から地動説が支持されるようになったのも、この頃からだ。さらに近代になると、可視光では観察ができない天体を電波で観察したり、あるいは地球外の天体から直接サンプルを手に入れたりなど、科学の発達とともに知覚できる範囲も広がっていった。


生物学の歴史と融合


 生物学の発生は天文学よりは後になるが、紀元前にはアリストテレス(紀元前384~322)によって生物学の基礎は作られた。アリストテレスは優れた動物学者であり、彼の研究は後世に大きな影響を与えた。


 生物学が大きく変わったのは天文学と同じく17世紀に入ってから。17世紀近辺の学問の変化は「科学革命」とも呼ばれ、ニュートンやケプラー、ガリレオ、コペルニクスなど今でも名を聞く有名な学者等によって革新的に科学が進歩した。


 生物学の分野においては、スウェーデンの学者・リンネによって分類学(動物や植物を目や属などで系統的にわける方法)が確立している。19世紀になるとダーウィンらによって進化論が展開され、生物の由来などについて分析が進む。また顕微鏡の発明から微生物の発見に至ると、生物学から生化学への応用も進み、幅広い研究の深化が行われていった。現在、生物学はさらに微細な世界、遺伝子、ゲノムなどまで取り扱う学問となっている。

2014年度中に打ち上げ予定のはやぶさ2のサンプルリターンなどでも
こうした研究の可能性は広がる(写真ははやぶさの模型)
2014年度中に打ち上げ予定のはやぶさ2のサンプルリターンなどでもこうした研究の可能性は広がる(写真ははやぶさの模型)

 こうして幅広く深い歴史を持つ生物学と天文学が邂逅したのは20世紀の後半とつい最近のことだ。天文学者、物質学、海洋学など複数の分野から地球外での生命の可能性について言及されるようになると、世界中にある宇宙関係の機関からも、生物学を地球外環境にも適用できるように研究を進めるように提唱された。こうしてアストロバイオロジーの誕生となった。


 アストロバイオロジーの研究は始まったばかりだ。物理学、地質学、地球科学、合成生物学、分子進化学など枠を超えた幅広い分野の専門家らにより地球外における生命体の可能性についての研究が今まさに進められている。

(井上宇紀)

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宇宙科学に触れる絶好の機会(2014/8/18)

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