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2013/10/7

スイッチOTC

概要

 スイッチOTCとは、医療機関で使用されていた医薬品のうち、使用実績や軽微な副作用などが認められて、医師による処方箋なしで、ドラッグストアなどの店頭販売が可能となったもののこと。OTCとはOver The Counter(カウンター越し)の頭文字をとったもので市販されている医薬品(=一般用医薬品)を指す。そのうち処方箋が必要な医薬品から「スイッチ(=切り替え)」して、一般用医薬品になったためスイッチOTCと呼ばれる。1980年代から始められ、現在まで50品目以上に上る。


経緯と現状


 近年の医療費は増大し、国家の財政を圧迫している。50年前から比較して医療費は国民所得との比率で考えると倍以上になっている。特に80年代後半から国民所得は頭打ちなのに対して、医療費は年々増え続けているため、国民の所得と比べると、明らかに負担する割合が増えていると言える。
国民所得に対する医療費の割合
厚生労働省統計白書(2010年版)のデータより引用

 このため、様々な医療費の軽減のための施策が考えられてきたが、そのひとつに「セルフメディケーション」というものがある。これは、一般に販売されている医薬品を普段から利用することで、重症化する前に症状を抑え、結果として医療費を節減するというもの。一般販売されている医薬品は保険適用ではなく、この点でも国家負担の軽減が期待できる上、医者が処方箋を書くための金額など含めれば、利用者側の負担もさほど変わらないという利点もある。


問題点・課題点


 2006年薬事法が改正され、2009年に施行された際、1類、2類、3類と分類され、副作用が強い1類には、医療用から一般販売に変更された医薬品「スイッチOTC」が多く含まれていた。そのため、全般的に薬効が高い1類の医薬品だが、副作用において日常生活に支障をきたす程度の健康被害などの可能性がある。また医学知識のない者が購入し使用するため、薬剤師による情報提供が必要となってくるが、使用期間の判断や中止などは本人が行うため、使用に際しては注意が必要である。


 2009年の改正薬事法で一定条件下における販売が認められた1類と2類の医薬品だが、厚生労働省は省令として1類・2類の販売について対面販売を原則とし、実質ネットでの販売を禁止した。これに対して、ネットで医薬品を売っていた業者や、へき地などに住み対面での医薬品購入が難しい層などが難色を示す。特に、ネット販売を手掛けていた複数の業者は、厚生労働省を相手取って訴訟を起こす事態に至る。


 ネット販売を手掛けていた業者と厚生労働省の争いは2013年1月に最高裁判所で、「厚生労働省の省令が無効である」というネット販売業者の勝訴で決着をみた。また、時の政府も、経済政策の一環として「安全性を確保した上で、ネットでの医薬品販売による経済の拡大を目指していく」という趣旨の宣言。一般医薬品は、ネット販売の全面解禁へと一気に舵を切る。


 最高裁判決や、政府の意向を受け、厚生労働省は一般医薬品のうち99%以上のネット流通を認める一方で、1類に分類されて4年以内で、一般用医薬品として安全性が十分に確認されていない「スイッチ直後品目」と呼ばれる23品目と、劇薬指定されている5品目について、有識者たちと安全に利用していくための方法について検証を進めている。


 場合によっては安全性を確保できない検証品目を市販薬から処方箋薬に戻す形で「全面解禁」とするのでは、という話もある。最高裁判所の判決後も、医療関係者側はネット販売の全面解禁に反発する声が大きく「販売に際してはテレビ電話を使うべき」などという意見も出ており、現在まで完全な決着には至っていない。

(井上宇紀)

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