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2013/10/3

衛星放送

概要

 衛星放送とは、赤道上空に打ち上げられた静止衛星を利用し、直接、契約世帯にテレビやラジオなどの電波を送り届けるサービスのこと。一般的な無線通信を行うことを目的とした「通信衛星」(Communications Satellite)を利用したCS放送や、通信衛星の中でも特に出力が高く放送を専門とする「放送衛星」(Broadcasting Satellite)を利用したBS放送の2種類が存在する。


 一般的なテレビ放送に使われている地上放送と、衛星放送の違いはその電波の送信方法にある。地上放送では、テレビ放送局から発信された電波が、テレビ塔や高い山の山頂などにある中継点を通り、各家庭に配信されている。そのため、山や建物などによって視聴に問題が発生する地域が存在していた。一方、衛星放送では放送局からの電波が宇宙空間にある衛星を経由して直接家庭に発信されるため、こうした地域でも問題なく視聴できるというメリットがある。


 しかし、衛星放送は地上放送と比較すると、悪天候によって受信電波が悪くなると、画像が乱れたり、中断されるという欠点や、アンテナなど受信設備をそろえるために初期費用が必要で、設備の工事など導入までに時間がかかる点、また衛星自体も寿命があり、常に代替となる衛星を確保しなければならないという理由などから現在においても、あくまで地上放送の補助的な立場にある。


 2013年現在、衛星放送はすべてデジタル化されているが、1989年にBS放送が開始された際にはまだアナログ方式で放送していた。衛星放送は、番組をのせた電波を地上から衛星に送り、衛星のトランスポンダー(電波中継器)で増幅して地上に送り返す。アナログ放送の場合、トランスポンダー1台で、1チャンネル分しか伝送できない。しかしCS放送を行っていた日本デジタル放送サービス(現・スカパーJSAT)は1995年にデジタル放送が可能な通信衛星(=JCSAT-3)の打ち上げに成功。デジタル放送は圧縮技術の進化により、1台のトランスポンダーで、4~8チャンネルの番組の伝送が可能になっている。そのためCS放送が「放送のデジタル化」「多チャンネル化」の先鞭をつけることになる。


歴史


 日本では1984年、初の放送衛星「ゆり2号a」が打ち上げられた。「ゆり2号a」を利用した「NHK衛星第1テレビジョン」の試験放送が同年から行われ、1989年にはNHKにおけるBS放送の本放送がスタートする。また1991年には日本初のBS有料放送「WOWOW」の本放送が開始。これまで無料で放送されていた放送コンテンツに対して、視聴者が課金するスタイルが徐々に定着するようになった。その後、民放キー局5社も参加して計12チャンネル体制となり、BS放送は地上波に次ぐ準基幹メディアとして発展を遂げることとなる。


 一方、CS放送は放送開始以来、多チャンネル専門メディアとして発展している。1996年6月に日本初のCSデジタル放送「パーフェクTV」の無料放送がスタート。同年10月の本放送の開始時には映像が70チャンネル、音声が103チャンネルとなるなど、視聴者が個人の趣味に合わせたチャンネルを視聴するスタイルが浸透していく。


 その後、パーフェクTVは1997年に放送開始した「JスカイB」と合併し1998年5月から「スカイパーフェクTV」が放送開始。また加入者獲得で伸び悩んでいた「ディレクTV」が終了し、加入者を「スカイパーフェクTV」が引き継ぐなど再編・統合が行われ、プラットフォームが集約されていく。

BS放送、CS放送の開局やデジタル化が重要な出来事となっている
BS放送、CS放送の開局やデジタル化が重要な出来事となっている

その後の展開


 BSアナログ放送を行っていたNHK・キー局・WOWOWなどは、BS放送のデジタル化を推進。2000年にBSデジタル放送が開始する。また、地上アナログ放送の停波が完了(岩手・宮城・福島の3県を除く)した2011年、WOWOWやスター・チャンネルがそれぞれ3チャンネル体制となり、J sportsなどの一部チャンネルも有料放送としてBSに参入するなど編成を刷新。2012年には31チャンネルにまで拡充されることとなった。


 またCS放送も、2000年に東経110度赤道上空に通信衛星(N-SAT-110)が打ち上げられ、2002年に「スカパー! e2」がスタート。N-SAT-110により、全国をカバーできるようになり、共聴アンテナや共用チューナーがあれば、BSデジタル放送と110度CSデジタル放送の両方が視聴できるなど設備面もより簡易となった。


 こうした取り組みの結果、衛星放送の視聴者数も順調に増えている。BS放送の受信普及数の推移をみても、2009年に2198万件、2010 年に2340万件、2011年に2498万件と年々増加。またスカパー!(東経110度CS放送)の加入件数(個人契約数)の推移も、2010年に140.4万件、2011年に173.7万件、2012年196.3万人と、右肩上がりに推移している。


 多くの世帯に普及し、視聴者にとって欠かすことのできないメディアに育ってきた衛星放送。地上波ではカバーしきれなかった視聴ニーズに対応することによって年々存在感が増している。

(山下雄太郎)

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