キーワード解説

特集などに出てきた重要語句を分かりやすく解説

2013/9/2

準天頂衛星

概要

 準天頂衛星とは、特定地域のほぼ真上に、1日の内、数時間とどまる軌道(準天頂軌道)をとることができる人工衛星のこと。この準天頂衛星を複数機打ち上げることで、常に1つの衛星が日本の天頂付近をとどまることとなり、正確な衛星による位置などの測位が可能となる。2010年9月11日に日本初の準天頂衛星「みちびき」がJAXAによって打ち上げられている。

日本初の準天頂衛星「みちびき」
(出典:JAXA)
日本初の準天頂衛星「みちびき」(出典:JAXA)

 準天頂衛星の軌道は非対称の8の字の軌道を描いており日本とオーストリラリアの上空を周回している。日本列島上空に描かれる小さい輪の軌道を約8時間、オーストラリア上空に描かれる大きい輪の軌道を16時間(計24時間)かけて移動し、測位を行っている。

準天頂衛星の軌道(出典:JAXA)
準天頂衛星の軌道(出典:JAXA)

歴史と特長


 地理情報システムに関して関係省庁が連携・協力を進めている測位・地理情報システム等推進会議。この推進会議によって2006年3月31日に示された「準天頂衛星システム計画の推進に係る基本方針」に基づき、日本は準天頂衛星を段階的に推進する運びとなる。その第1段階として打ち上げられたのが「みちびき」だ。


 特集で触れたように、この「みちびき」の目的の1つがGPSの補完・補強。1973年に米空軍と海軍が協力して開発した人工衛星を利用した画期的な測位システム「GPS」――このGPS測位を行うGPS衛星には欠点があった。GPS衛星はおよそ12時間かけて地球を1周する軌道を描くため、同一地点から見ると、絶えず動いていることになる。そのため日本国内の都市部や山間部では、高層ビルや密集する建物、山などが障害物となって、衛星からの測位信号が届かなくなり、測位結果に誤差が出てしまうことが問題となっていた。


 そこで天頂付近に位置する人工衛星である「準天頂衛星」を複数機打ち上げることで、より正確な測位を行おうというもの。IMESコンソーシアム事務局長の吉冨進氏は「GPSだけなら、ビルの谷間ではおよそ5割程度の確率でしか測位できないが、準天頂衛星の力を借りることで、8~9割の正確さをもつ測位ができるようになる」と説明している。


 また、GPSによる測位で生じる誤差情報を、国土地理院が開発した高精度の測位補正技術によって修正する。その修正情報を準天頂衛星から日本で使われるGPS内蔵端末に向けて発信することで、誤差を数センチレベルにまで直すことが可能となる。


今後の展開


 このように準天頂衛星をはじめ、位置情報を取得することができる衛星測位システム。日本でも着々と準備が進められているが、他国でも打ち上げが計画されている。中国は2012年から「北斗」(北斗衛星導航系統)の運用を開始する。すでに2000年から2007年にかけて4機の衛星を打ち上げており、「北斗」より高い性能を誇る北斗2号も2020年までの完成を計画している。また、欧州もGalileo(ガリレオ)の開発に余念がない。高度24,000㎞の上空に、30機の衛星の打ち上げを予定。2014年末の本格運用開始を目標とするプロジェクトが現在進行中だ。


 もちろん、日本もより精度の高い位置情報の取得を目指して、JAXAは準天頂衛星2号機の打ち上げ目標を2017年3月、3号機の打ち上げ目標を2017年5月、4号機の打ち上げ目標を2017年7月として進めている段階だ。


 GPSによる補完・補強など今後は「衛星測位システム」として重要な位置を占めていくようになるだろう。

(山下雄太郎)

【関連カテゴリ】

その他