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2013/2/18

タブレット

概要と歴史

 英語で「The tablet」と言うと、モーゼが持っていた十戒が記された石板のことを指す。テーブル(table)が転じた言葉であるとされるタブレットは、元来は持ち運びできる筆記用具…石板や木板のことを指していた。転じて現在ではタッチパネルを備えたデバイスの内、電子書籍リーダーのような特定の目的ではなく、汎用的な利用が可能なものを指す場合が多い。タブレットPCとも言われるが本稿では表記を「タブレット」で統一する。


 タブレットの原点には様々なものが挙げられる。1990年代初頭にマイクロソフト、IBM、アップルなどの超大手メーカーから発売された「PDA端末」もその1つだろう。PDA端末は、現在のような手で触れるタイプのタッチパネルではなく、専用のペンでの入力がメインのインターフェース。主にブラウザやスケジュール管理、メモ帳として使われており、現在のタブレットより小型の携帯端末だ。複数の大手企業から発売されたPDA端末だが、ハードウェアの性能が低かったせいか、大々的な普及には至らなかった。PDA端末で採用されたペンによるインターフェースは、筆圧で感知する抵抗膜方式のタッチパネルの発展と共にシャープの「ザウルス」などに代表される電子手帳のような専用端末へと、主流が移行していく。

2000年代前半に発売され、タブレットに採用されたタッチパネルは、電磁誘導方式と呼ばれ、電磁誘導(デジタイザ)ペンという専用ペンのみに反応する
2000年代前半に発売され、タブレットに採用されたタッチパネルは、電磁誘導方式と呼ばれ、電磁誘導(デジタイザ)ペンという専用ペンのみに反応する

 一方で2002年にマイクロソフトはOS「Windows XP」に、ペン入力に関する機能を組み込んだ「Windows XP Tablet PC Edition」を発表。「Windows XP」の高い人気もあり、複数のメーカーが「Windows XP Tablet PC Edition」を搭載したタブレットをリリースしたが、非常に高価だったこともあり、やはり普及に至らなかった。以降、現在に至るまで、ペンによる入力は汎用型のPCサイドでは勢力を得られていない。


 2度にわたって普及に失敗したマイクロソフトは、2006年に発売された「Windows Vista」にもタッチパネル対応の機能を標準装備させて、3度普及を促す。しかし、最終的にタブレット普及への扉を開いたのは2007年にアップルから発売された「iPhone」だった。大流行の鍵は諸説あるが、一番有力視されているのが「マルチタッチ(2点同時感知)」による操作だ。


 2000年代半ばに「静電容量方式投影型」のタッチパネル技術が開発・量産され、いまタッチパネルと言われたら多くの人が思い浮かべるだろう「マルチタッチ」が技術的に可能になった。このマルチタッチに対応したタッチパネルとOSを採用することで、操作がより直感的になったことが、幅広い支持を受けた理由とされている。


 こうして「iPhone」の爆発的流行により、マルチタッチを使ったタッチパネルが受け入れられる素地ができあがり、3年後の2010年にアップルは「iPad」を発売。順調な売り上げを見せた。


経緯とこれから


 逆説的ではあるが「iPhone」「iPad」の流行は、マルチタッチに対応したアプリケーションを生み出し、アプリケーションの増加はさらなる支持層の増加を促した。現在はスマートフォンやタブレットは「マルチタッチができる」「指で操作する」ことが当然となっているため、後発のOSである「Android」や「Windows 8」が搭載されたスマートフォン、タブレットでも近い操作感が得られるようになっている。


 タッチパネル技術の進化により、操作性は抜群に上がった。しかし語源が筆記用具からの転用であるにも関わらず、タッチパネルによる入力は、緻密性においては未だにマウス入力に劣っている。このためビジネスシーンでの主流はキーボードとマウスにあり、今後はタッチパネルの技術的な面で改善が求められる。一方で、直感的な操作と、単純な機構のため複雑な道具が必要なく省スペースである利点から、汎用的なリーダー、ビューワーとして今後はさらに広く利用されていくだろう。

(井上宇紀)

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