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2012/10/9

静電容量方式

概要

 静電容量方式とは、静電容量の変化の計測により、タッチパネルにおいて指が触った座標を計算するための技術の一種。単純に「静電容量方式」と言っても、目的によりさらに細分化された技術が存在する。もう1つの代表的なタッチパネルの技術「抵抗膜方式」と比べて耐久性の面で特に優れる。


歴史


 静電容量方式は1980年頃、米国で「表面型」方式が軍事目的で開発されていた。当時は、通信兵などの手間を省くことを主目的に開発されていたようだ。その後は、アミューズメント目的の大型筐体、ゲーム機、銀行のATMなどで利用されていた。2000年代半ばになると表面型に代わりマルチタッチが可能な「投影型」が開発され、iPhoneやiPadに採用されるようになると一挙に注目を浴びるようになる。


構造


 いま説明したように、静電容量方式は大きく分けて投影型と表面型がある。近年は「静電容量方式」という場合は投影型を指す場合が多い。投影型は表面型と比べてiPhoneに採用され一躍話題となった“マルチタッチ”を可能にした点が特に優れており、大半のタブレット、スマートフォンに採用されている。


 表面型はパネルの4隅に電極を設置し、パネル表面に微弱な電気を流す。指でパネル表面に触れると電流が変化するため、4隅にある電極から変化した場所までの距離を割り出し、その4箇所からの距離から指が触れた場所を計算する、というもの。構造的にマルチタッチができないが、抵抗膜方式と比べて耐久性などの面で優れる点は変わらない。そのため現在でも特にマルチタッチをする必要がなく、多くの人が触る銀行のATMや、ゲームセンターの筐体などに使われている。


 投影型には、さらに「ITO方式」と「ワイヤーセンサー方式」がある。iPhoneに使われているのはITO(透明伝導膜)を使った「ITO方式」である。構造は実際に指先が触れる「保護ガラス」と、内側にある「センサーガラス」、その間に挟まれた透明伝導膜(≒センサー)で成り立っている。表面のガラスに指が触れることで静電結合が起こり、奥のセンサーガラスとの静電容量に差が生じる。

本項目では説明していないが、近年は抵抗膜方式も旧来のアナログと異なり、デジタル型(あるいはマトリックス型)と呼ばれるマルチタッチに対応したものが出てきている
本項目では説明していないが、近年は抵抗膜方式も旧来のアナログと異なり、デジタル型(あるいはマトリックス型)と呼ばれるマルチタッチに対応したものが出てきている

 そこで指が触れて静電容量が変化したガラスと、指が触れない側の敷いてあるガラスとの静電容量の違いを張り巡らされた透明伝導膜が感知する。透明伝導膜はX軸とY軸でダイヤモンド型の格子状に張り巡らされており、変化した場所のX軸Y軸から指が触れた“面”を割り出す。


 投影型ITO方式の特長として指でないと反応しないことが挙げられる。そのため物理的な圧力をかけると操作されてしまう抵抗膜方式に比べて、ポケットなどに入れても誤操作が少ない。さらに物理的な圧力をかけないため耐久力に優れる、技術的にマルチタッチを可能にした、などの利点が、スマートフォンのニーズと合致しており現在の標準的なタッチパネルとして採用されている。


課題点


 静電容量方式はあくまで指が触れた面を割り出す。そのため精緻な作業には向いていない。さらに投影型ITO方式の場合、マルチタッチ対応を含む、専用チップの計算量が高く、画面を大きくすればするほど消費電力が飛躍的に増えてしまう上、反応も悪くなってしまう。


 大型のパネルを使用する場合の対応として、考案されているのが「ワイヤーセンサー方式」だ。これは、パネル表層にITOの代わりに物理的な金属ワイヤーを使用するというもの。大型化が容易で、実際に大型のデジタルサイネージや、最近駅に設置され始めたサイネージ型の自動販売機などはこれらを使っている。しかし物理的なワイヤーがあるため大型でないと視認性に難が出てしまうため、スマートフォンなどには採用されていない。


 今後は静電容量方式の鍵を握る「ITO」の性能向上、あるいはITOに代わるさらに性能の高い素材に関する研究開発が求められる。

(井上宇紀)

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