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2012/4/23

出版デジタル機構

概要

 出版デジタル機構は、2012年4月2日に設立された会社。既存の書籍の電子化や、電子書籍の制作・電子書店への配信などの販売サポートを主な業務とする。


 講談社・集英社・小学館などの大手出版社が株主となっているが、筆頭株主の予定になるのは国が約90%を出資している官民ファンド「産業革新機構」だ。出版デジタル機構の総出資金170億円のうち、90%近い150億円の出資を行うことになっている。出版デジタル機構は、実質出版業界の「オールジャパン企業」となっている。

出版デジタル機構設立会見での野間省伸・講談社社長(USTREAMより)
出版デジタル機構設立会見での野間省伸・講談社社長(USTREAMより)

経緯


 きっかけは2010年に行われた3省(文部科学省・総務省・経済産業省)のデジタル懇談会だ。ここで出てきた「出版物へのアクセスの確保」「出版物の権利処理の円滑化」などの議論を受けた形で、出版デジタル機構の準備室が立ちあげられた。


 その後、賛同する出版社は徐々に増え、2012年3月31日現在で290社となっている。


 気になるのが、今回の出版デジタル機構の出資社として名を連ねているものの、出版デジタル機構が「準備室」であった時点では賛同会社の中に入っていなかった角川グループ。これについて出版業界に詳しい関係者は「半ば意地だったのでしょう」と背景を語る。角川グループは電子書籍販売サイト「BOOK☆WALKER」など、電子書籍とその販売インフラの整備を他社に先んじて進めていた。


 「角川グループは(BOOK☆WALKERを)全ての出版社の電子書籍や雑誌のプラットフォームにしようと考えていたのです。でもこれはうまくいきません。同業者が『プラットフォームを作りましたから、どうぞ出して下さい』と言っても、他社はなかなか乗れないですよ」(同関係者)。


今後と課題


 これ以前にも、出版業界が集まって、書籍のデジタル化を試みたことがあった。


 1998年、電子書籍の社会実験を行う「電子書籍コンソーシアム」だ。コンソーシアムは通産省(当時)の補助金を受け、約150社の出版社が参加して立ちあげられたものだった。しかし、ハードウェアの性能もさることながら、出版社の「救済窓口」となっていた取次店も絡んでおり、モバイルデバイスであるにもかかわらず、購入は書店でのみ可能、といういびつな構造となった。当然評判は悪く、プロジェクトも2年後の2000年には消滅してしまった。


 出版デジタル機構での業務は、出版社などコンテンツを作りだす側と、それを配信する電子書店とのつなぎ役で、直接消費者とのやり取りは行わない。「電子書籍コンソーシアム」での失敗を繰り返さないよう、魅力的なコンテンツ提供の場を積極的に作っていくことが出版デジタル機構には求められる。

(中西 啓)

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