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2011/6/27

衛星セーフティネット

概要

 衛星セーフティネット(地デジ難視対策衛星放送)とは、衛星放送を利用した地上デジタル放送の難視聴対策のこと。総務省の補助と放送事業者の負担により、社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)が実施する。衛星放送は、通常地上波では放送されないような専門性の高い番組の放送に使われている。しかし衛星の特性を生かして、山間部や離島など人口が希薄な地域での難視聴対策にも利用されている。


 この措置は「地上デジタル放送が送り届けられるまでの間の暫定的、緊急避難的な措置として実施されている」(Dpa報道資料)。2010年2月22日より試験放送が行われ、2010年3月11日に正式に開始。運用期間は2015年3月までの約5年間を予定している。


地デジ難視聴対策として真価を発揮


 視聴できる番組は、NHK(総合、教育)と、該当地域で放送されている局と同系列キー局の地上波放送になる。地デジ難視対策衛星放送対象リスト(ホワイトリスト)に掲載された地区の世帯・事業者が申し込みをすることで視聴が可能になる。視聴制御(スクランブルという)がかかっているため、対象地区外では視聴できない。一世帯で視聴できるテレビの数は3台までとなっている。また地上アナログ放送が地形的に難視聴となる地区に住んでいる世帯もこの措置の対象となるが、NHK総合、NHK教育2波のみの視聴となる。


 対象世帯への受信設備の支援として、国の負担により、各世帯にチューナーやアンテナの取付工事などを実施している。衛星による対策よりも安価になる場合は、ケーブルテレビ(加入料、視聴料等を国が全額負担)の加入により代替されることもある。

図、衛星セーフティネット(地デジ難視対策衛星放送)のイメージ
(出典:デジタル放送推進協会=DpaのHPより)
図、衛星セーフティネット(地デジ難視対策衛星放送)のイメージ
(出典:デジタル放送推進協会=DpaのHPより)

被災地での対応


 総務省及びDpaは2011年4月7日、東日本大震災の影響で地上テレビが視聴できなくなった地域に対して、衛星セーフティネット(地デジ難視対策衛星放送)を一時的に利用できる措置を発表した。岩手県、宮城県及び福島県の3県及びその周辺の被災地で、震災により地上テレビ放送が視聴できなくなった世帯(非世帯施設を含む)が対象。視聴可能な期間は約半年間で、必要により延長は可能だ。


 衛星放送を使えば、地形に関係なく放送を見られることが最大の強みとなる。しかし、高齢者や障害者の世帯など、自ら手を挙げてこない世帯が存在しているため、より周知活動に力を入れる必要があるなど、課題も残されている。被災した地域をはじめ、この衛星セーフティネットを多く活用することで、一世帯でも多くの世帯が地上デジタル放送を見ることができることを期待したい。

(山下雄太郎)

「衛星セーフティネット」が出てきた記事

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