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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

相磯秀夫 インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI) 代表理事に聞く「安心・安全なインターネットコンテンツとは」

インターネットコンテンツ審査監視機構代表理事
相磯 秀夫
「安心・安全なインターネットコンテンツとは」

レーティング(格付け)の進行

―慎重に進めるということでしょうか。

相磯氏 はい。それと同時に業界関係者や利用者の皆さんの協力を得ないとできないのです。我々だけではまず無理です。
 ですから、実証実験期間を通して得た結果を公表して、皆さんの意見をもらい、それを反映させることをしなければ、うまくいかないと思います。まずサイトを運営する方々に、「セルフレーティング」をすることで、ご自身でサイトのコンテンツを検証していただかなければなりません。
 我々が対象とするサイトをいきなり評価するわけにはいきません。ですから、まずサイト側でセルフレーティングをしていただくというのが基本です。サイト側と我々といつも一緒になって、実証してみるということをしたらいいと思っています。

―なるほど。ところで、具体的に話し合いの場というのは、構成されている有識者の方と会議を重ねるという感じなのでしょうか。

相磯氏 もちろんそうです。それと同時に、レーティングのための基準を作り、それをベースにして、まずセルフレーティングをしてもらうわけです。
 そのために、その対象サイトの運営者にどのような基準で審査しているかを説明して、場合によっては「教育」をする必要がでてきます。企業側、サイト運営側はそういう人材の育成もして欲しいのです。ですから我々の役割は、人材の育成という大変重要な役割も担っているのです。

共通のルール作り

―情報を共有しているWEBの世界がこれだけ拡大していくと、共通するルールを作る必要がありますね。

図1 I-ROIの マーク
図1 I-ROIの マーク
相磯氏 実は審査上の問題点として、共通するルールが非常に重要な意味を持っています。正直に申し上げて、例えば人により倫理的な見解の相違は当然あります。さらに言えば我々がレーティングをする場合でも組織内でもそれぞれ基準に対する考え方が違うのです。一致して、1か0で決まる世界ではありませんから。グレーゾーンというのはどうしてもあります。
 I-ROIは、サイトの健全性を審査するにあたって、サイトを利用する青少年の発達段階を考え、12歳以上、15歳以上、18歳以上、全年齢を対象とする4つの区分を設け、それぞれの年齢対象者にふさわしい基準を設定しています。
 いずれにしてもそれぞれのカテゴリーで基準が異なるわけです。そこがとても難しく、セルフレーティングをする人、その評価をする人、双方の間でも倫理的な見解の相違があります。それによってビジネスが成立しないということもありうるのです。
 デジタルコミックなどの世界はまさにその例で、企業側やサイト運営側から反対意見が出てくることも考えられます。

 そこで中立の立場で健全性を示すことが大切になってきます。I-ROI では健全と評価したサイトに「I-ROI」マークを提供します。(図1参照)そうするとこのサイトは例えば「健全です」「18歳以上だったら閲覧には問題がありません」ということにしています。
 前に述べましたように、インターネットの世界というのは、国際的にオープンです。よく言われるように、世の中これだけのネットワーク化、情報化が進むと、「ワンクリックグローバリゼーション」といって多くの問題がインターネットに解決してしまう時代が到来します。
 つまり国内のことだけを考えるのではなく、広く繋がる世界に向けた基準を制定するためにもっと国際的に討論しなければなりません。もちろんこれは今すぐどうこうできる問題ではありません。これからは、政府も非常に気にしていますが、おおいに国際的な場で、日本の考え方を示し、ディスカッションする姿勢が重要になります。

―国際的に見て、従来の日本の規制基準というのは、欧米に比べると緩やかなのでしょうか。

相磯氏 最近聞いたところでは、例えばコミックやアニメの世界では、日本はすごく規制が緩やかだといわれています。日本の一部のコミックやアニメはヨーロッパやアメリカでは流通や放映が許可されず、一部は描き直して提供されているものもあります。日本は今までその辺を気にしていなかったのです。
 逆に日本の文化が海外に渡るようになって、こうした規制が問題になってきました。日本の作品は完成度やおもしろさという意味では評価は高いのですが、国によって規制が異なりますので、見方によっては表現が行き過ぎてしまっているところもあります。これは大きな問題で、これから様々なケースが出てくるのではないでしょうか。

―進め方としてもデリケートなところですね。

日本の基準について語る相磯氏
日本の基準について語る相磯氏
相磯氏 そこが大変重要なところで、ここは避けて通れません。それと映画などもそうですよね。日本には映倫があって、不適切なところを隠すことはしますが、一度修正すると、そのままいつまでも適用します。ところが、インターネット上ではコンテンツが日々更新されるという特殊性があり、とても難しいのですし、常時監視する必要も出てきます。



―同時進行として、技術の革新があります。様々なものが発展していく中で、評価の基準を決めていかなければならないという、時間との戦いもあります。

相磯氏 確かにそうです。しかし私は技術の方はそんなに心配していません。特に日本の技術は進んでいます。むしろ社会的なインフラの整備の方がすごく大変だと考えています。

今後の活動・WEBのあり方

―今後の活動内容、予定についてお聞かせください。

今後の活動について語る相磯氏
今後の活動について語る相磯氏
相磯氏 年内までに、レーティングの基準を決定する予定です。それから組織や運用について、情報公開します。ですから、おそらく実質的な運用・作業、試行段階の一歩は来年になるのではないかと私は思っています。
 最近のネットワーク社会の印象については、技術の進歩に伴う、社会の変革が今までと比べものにならないほど激しく、速くなっています。変わらないと生き残ることができないからでしょう。その規模はビジネスの世界ではもっと大きくなります。
 だからこそ、様々な意味で新しいメディアが、あらゆる分野に浸透していくわけです。そう考えたときに、あらゆる分野で私が提言している「安心・安全マインド」を持たなければいけません。これはたいへん重要なことです。

―そのような意味ではWEBのあり方は、どのようになっていくのが理想でしょうか。

相磯氏 「悪貨は良貨を駆逐する」という言葉もありますが、悪いことはどんどん広がってしまいます。ですから、悪質なWEBで健全なWEBが悪影響を受けないように、どのような基準を設けるべきかということにもなります。
 I-ROI は、レーティングをしますが、「悪質だからダメです」ということは決して言いません。なぜレーティングをするかというと、例えば青少年が接するコンテンツに関しては親が最終的には決めなければなりません。その時に親の判断を助けるための基準をI-ROIは準備します、という立場なのです。
 そうは言ってもどこかで規制するラインを引かなくてはならない。私は規制というのは必ずしも悪いことだけではないと思います。自動車のマスキー法(自動車排ガス規制)などは、いい意味での規制です。法律が制定された当初、一部の自動車業者は猛烈に反発したのですが、しかし今は当たり前になってきています。ある意味どこかでそれをきちっと規制するという組織があってもいいのではないかという気がするのです。やはりいい意味での規制がないと、健全なWEB社会にはならないだろうと、私は思います。


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※このインタビューとセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*: 映倫(映倫管理委員会)
映画作品内容を審査しレーティング設定等を行う自主規制組織



【相磯 秀夫(あいそ ひでお)氏 プロフィール】

【現職】
有限責任中間法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI )代表理事
慶應義塾大学名誉教授

【略歴】
1932年 生まれ
1957年 通商産業省工業技術院電子技術総合研究所電子計算機部
1971年 慶應義塾大学工学部電気工学科教授
1990年 慶應義塾大学環境情報学部長
1994年 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長
1999年 東京工科大学メディア学部長、学長
2008年 有限責任中間法人インターネットコンテンツ審査監視機構(I-ROI )代表理事就任

【業界関係・表彰等】
東京工科大学前学長 ・情報処理学会副会長 ・情報処理学会名誉会員
通商産業大臣賞 ・情報処理学会功績賞 ・NEC C&C賞
紫綬褒章・ 瑞宝中綬章 他

【主な著作】
『知らないと絶対損をするセキュリティの話 デジタル時代の護身術』(日経BP) 2004
『ファイバチャネル技術解説書II』(論創社) 2003
『調べてみよう 携帯電話の未来』(岩波書店) 2003
『だれにもわかるディジタル回路』(オーム社) 1984 他

(掲載日:2008年12月1日)

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