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秋山昌範 マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院客員教授に聞く「医療におけるデジタル・フォレンジック導入の必然性とは(後編)」

MIT スローン経営大学院客員教授
秋山 昌範
「医療におけるデジタル・フォレンジック導入の必然性とは(後編)」
~医療システムにフォレンジックを機能させるということ~

患者がもし自分の子供だったら

タイムスタンプの重要性について語る秋山氏
タイムスタンプの重要性について語る秋山氏
秋山氏 医療においてブランドがあるとするなら、1つは病院の名前や設立母体なども大事だと思いますが、それだけではありません。本当の意味で患者本位ということを考えた場合に、私はデジタル・フォレンジックのような考え方は非常に重要だと思います。むしろ本当の安心、安全を届けるのであれば、医療の情報がインターネットでつながっていなければならないと思いますし、次に開発するシステムでは患者さんが自宅からインターネットで自分の検査結果などの医療データをチェックできるようにしたいと考えています。それが本当の情報開示です。検査結果を印刷して持って帰るのではなくて、24時間365日、自分のデータにアクセスできる方が大事なのではないでしょうか。そのためにはロギング、つまりデータの証跡をとるという概念は非常に重要で、ハッカーなど外部からのアクセスに対する防御も必要ですが、内部の人間に対する証跡の管理も重要でしょう。

 それこそデジタル・フォレンジックで、そこにはタイムスタンプが必要です。IDをもっていることが大きなファクターではありますが、そこにタイムスタンプという概念がなかったら、順番が逆になりますよね。何時何分何秒、別々のシステムで、順番に齟齬が起きないのは、リアルタイムでタイムスタンプを記しているからです。そうでなかったら辻褄が合わなくなります。

 例えば、この薬は2003年10月2日13時19分34秒に4177番の薬剤師さんが監査をして、18時16分20秒に6294番の看護師さんが混ぜて、6295番、ほかの看護師さんが注射したということがわかるわけです。
 これこそがデジタル・フォレンジックです。すべての行動がわかるのです。これは私の子供がもし患者だったらこういうのが欲しいと思って作りました。これは医者の名前も出てくるので、誰の指示で動いたかというのも全部わかります。各々の部署ごとの記録ならば改ざんの余地はあります。しかし、これはドクター、ナース、物流などそれぞれのローカルエリアで、リアルタイムで記録されているシステムを、通し番号で紐付けしたものなので、改ざんの余地がないのです。

医療におけるフォレンジックの導入のために

―現場目線で、「医者が何を欲しているか」について医療システムを開発するメーカーが考えることができないのではないでしょうか。

医療におけるフォレンジックについて語る秋山氏
医療におけるフォレンジックについて語る秋山氏
秋山氏 大手メーカーも現場目線なのだとは思います。しかし部分最適と全体最適という言葉がありますが、医療というのは他の産業と違って部分最適でしか有り得ないのです。患者さんに1人1人に向き合うのであり、製品を作っているわけではないのですから。
 だから医療におけるマネジメントは、他の工場やサービス産業のマネジメントとは違うと、私は思っています。ハーバードの医学部は、ハーバードビジネススクールがあるにもかかわらず、それとは別にハーバード大学医学部の中にMBAコースを作ったのです。医療には医療専門のMBAが必要である、ファイナンシャルサイドから取ったMBAでは病院経営は破綻すると考えたのです。

 医師がカルテに手で書いていることをキーボードで入力するのが電子化ではないのです。医療行為をリアルタイムに記録して証拠を残す、そのためにはフォレンジックが必要です。一般的な電子カルテにデジタル・フォレンジックの技術がいるとは私も思いません。フォレンジックが求められているということは、どこかにそのニーズがあるわけです。不信感を信頼に変えるためには、患者のニーズを調べる必要があります。患者は治療する過程で「何が行われたか」「どういった医療行為が行われたか」が知りたいと言います。
 でも医者は「何をしたか」より、「何を考えたか」が大事だと思う職種なので、こういうシステムは欲しくないのです。医者サイドから考えると、現在一般的に使われているような電子カルテができ上がってしまうのです。

 今後はデジタル・フォレンジックを必要とするようなシステムを作ることができるかどうかにかかっていると思っています。例えば食品の使い回しをしたかわかるようなシステムがあれば、そこにフォレンジックが求められてくるでしょう。すると使い回しを隠蔽しようとデータを改ざんする人が出てきますよね。そうしたら今度は改ざんをしたことがわかるような仕組みが欲しいはずです。
 このようにデジタル・フォレンジックを採用することでその動向が筒抜けになるわけですから、サービスを提供する側は襟を正します。そしてその代わりに、今度は消費者が得られた情報から自分で良い悪いの判断を下し、その責任を持つことが重要になってきます。デジタル・フォレンジックが普及した先は、このような自己責任で行動するといった考え方が必要になってくる時代になるのではないかと思います。

 

医療におけるデジタル・フォレンジック導入の必然性とは(前編)



※このインタビューとセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*1:(秋山教授が開発した)医療システム
バーコードで薬を管理し、患者の取り違えや投薬ミスを防ぐ病院情報システム。投与直前にオーダーの薬の変更があっても瞬時に反映される、使い勝手の良さが特徴。同システムは、医療行為の1つ1つをリアルタイムに記録できる機能も備えており、それらデータを分析した結果、与薬のミスを誘発しやすい要因も明らかになっている。

*2:アドボカシー
直訳すると主張、弁護、支持、唱道。政治分野などでは「政策提言」といった意味で使われる。医療分野の場合は「患者側の権利主張」や「終末期患者の権利代弁」が挙げられる。


(掲載日:2008年11月17日)

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