インタビュー(2)
つくば市長・市原健一氏に聞く
「当たり前」のICT利用 教育現場が育てた40年

2014/5/12  2/3ページ
つくば市長 市原健一氏
つくば市なら、どこの子どもでも
そこそこの「プレゼン」ができます

市内のどの子も「プレゼン」できる


―ICT利用による子どもたちのリテラシーはどう変わりましたか?

市原氏:これはなかなか数値化するのが難しいですし、ICTを利用した実績や効果がどれだけ上がったか、というのを判断するのも難しいです。ですが、教育の現場を見ていただければ一目瞭然。授業で当たり前のようにPCやタブレットPCを利用している、というのが「大きな効果」だと思います。


 つくば市では2005年に、市内の小中学校に電子黒板を導入しました。最初は「モデル校」として、国から電子黒板を提供されたのですが、私自身が電子黒板の導入で子どもたちのICT教育にも利用できるのではと思い、全学校に電子黒板の導入を決めました。

プレゼンテーションコンテストの様子
(提供:つくば市)
プレゼンテーションコンテストの様子(提供:つくば市)

 特に新しい授業としては、電子黒板を利用した「プレゼンテーションコンテスト」があります。市内の全小中学校が参加して、子どもたちが調査・研究したことをプレゼンテーションするものです。県や国の大会でも、つくば市の児童・生徒はかなり上位に食い込んでいます。


 この大会のために訓練をしなくても、普段の授業でしっかりしたプレゼンが聞けます。「全地域の中の一部の学校だけはすごいけれども、他はできない」ということではなく、つくば市内のどこの学校の子でも、そこそこのプレゼンテーションができますね。


―ICT利用ありきではなく、教育の質を高めるツールとしてICTを利用されていますね。「つくばスタイル科」という新科目の設置もその一環なのでしょうか。

市原氏:つくばの持つ様々な特徴を、9年間(小中一貫のため)のカリキュラムで学ぶために作りました。つくば市の特徴をつくば市独自のカリキュラムに活かそうということですから、必然的にICTも絡んできます。


 ICTは特別なものではありません。子どもたちや先生方はしっかり活用しています。今、うちの職員が1人南極に行っています*2。テレビ会議システムを使って、越冬の準備など南極での活動を子どもたちにも聞かせようという取り組みをしています。


「機材」だけに目が行きがち


―現在、様々な自治体で教育でのICT利用が注目されています。

市原氏:日本の場合は、「電子黒板」など、すぐに機具・教材の整備導入の議論が先に来てしまいます。でも、それを現場で当たり前のように使うには先生方が使いこなす必要があるのです。そうでないと子どもたちに教えることができませんから。


―確かに、実証実験だけで終わってしまう自治体も少なくありません。では、なぜつくば市は続いているのでしょう?

市原氏:40年のICT活用の歴史と、先生方の熱意ではないでしょうか。2013年に小中学校一貫教育の全国サミットがつくば市で開かれました。ICT利用を含めたつくば市の教育は注目されているということで、先生方の士気も高まっていると思います。


 特に教育は、「ICTを活用したら新たなイノベーションが起きる」というものではありません。息の長いものですから、先生方が試行錯誤して、根気強く進めていった結果が、今のつくば市のICT活用に表れていると思います。


―教育現場と行政がかみ合っていないのでしょうか?

市原氏:私も行政の立場ですが、なかなか教育の現場はわかりにくいと思います。行政は「電子黒板を与えればICT教育はばっちりだ」と思いがちですね。でも、なかなかそうはいかない。先生方のスキルや経験を蓄積した上でないと、身に着いたICT教育にはならないと思います。


 つくば市では10数年前から、テレビ会議システムや家庭学習システム、スタディノート*3から電子黒板まで、当たり前のように取り組んできています。しかも、特定の学校だけでなく、全市的にやってきました。


 「モデル事業」で終わらせずに全地域に広げようとしても、熟知したスタッフがいなければどうにもなりません。

>>「3.11」で明るみになったICT活用の限界

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