地方自治を効率的に進める ICT活用の取り組み

1952年富山市生まれ。中央大学法学部卒業。1977年司法書士・行政書士事務所を開設。1995年富山県議会議員に初当選。1999年富山県議会議員再選。2002年富山市長に就任。2005年市町村合併で発足した新・富山市長に就任。

インタビュー(1)

富山市長・森 雅志氏に聞く

地方自治を効率的に進めるICT活用の取り組み

2014/3/24  1/3ページ
富山市長 森 雅志氏GISを活用したビッグデータが
政策の判断材料になります

 古くから「くすりのまち」として有名な人口42万人の地方中核都市・富山市。この富山市が取り組む施策に、住民基本台帳をもとにしたGISデータをはじめ、ICTが大きな役割を果たしている。その取り組みとは? コンパクトなまちづくりにICTを活用している富山市長・森 雅志氏にお話を伺った。

GISデータの活用


―富山市ではまちづくりを行う上でGIS(地理情報システム)を活用されていますね。

森氏:富山市は自動車の保有台数が全国でもトップクラスです。人口が減少していくなかで、郊外に拡大していくまちづくりを進めても、自動車への依存をいっそう高め、高齢者など車に乗ることができない市民が暮らしにくくなるなど課題がありました。そこで公共交通を軸にした拠点集中型の“コンパクトなまちづくり”を行うことを決め、住民基本台帳データをプロットしたGISを使う運びになりました。


 このGISデータは、氏名などの個人情報を抜いた状態の住民基本台帳データを基にして、人口分布や高齢化など地域の状況を可視化し、地価調査等を重ね合わせたものです。このデータを使って「富山市に32か所ある地域包括支援センターの半径2km圏内に、市民の約87.2%が住んでいる」「1人あたりの道路維持管理は都心部で年間5000円以下、郊外部で10000円超」ということがわかります。後者の例でいえば、都心エリアに住む人を増やせば、1人当たりの維持費が減るし、まばらに住めば、それだけ1人当たりの維持管理費が高くなるということがわかるわけです。

GISデータ活用事例 地域包括支援センターの半径2km圏内(出典:富山市「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」)
GISデータ活用事例 地域包括支援センターの半径2km圏内(出典:富山市「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」)

 このGISデータをつくることで、郊外に拡散していくようなまちづくりをするのではなく、コンパクトなまちづくりが必要だというのが実証できます。これは「ビッグデータ」でもあるわけで、使い方によっては、様々な政策の判断材料として使うことができるのです。


データ活用の経緯と展望


―どういうきっかけでこのデータを活用することになったのでしょうか?

森氏:コンパクトなまちづくりに取り組むにあたって、居住推奨エリアに住んでいる市民を、28%から20年後には42%に増やすという目標を立てました。この政策を、説得力をもたせて進めていくため、高齢者はどこにいるか調べてみようとしたところ、GISに住民基本台帳データをマッピングするという発想が職員の間から出てきました。わたし自身はそういう発想はありませんでした。しかし、実際にそれを見たら、様々なことに活用できるのがよくわかりました。障害者台帳のデータをGIS上にマッピングすれば、どこに身体的に障害を持つ人がいるのかがわかるわけです。


 高齢者や障害者が自宅のように生活を送れる施設「富山型デイサービス」がこのGISデータを用いることで市の中心部には1つもないことがわかり、補助金を増やして施設を中心部につくるなど施策につなげることができました。


―その他にどのように活用されているのでしょうか?

森氏:主にこれまでは進めてきた政策の妥当性を検証し、施策を補強していくことに使ってきました。しかしこれから使うシーンが増えてくると思います。


 例えば、農道を市道にしてほしいという市民の要望があります。市道になれば市が除雪をするのですが、そうした要望に全て取り組めば、道路の維持費がかさんで立ち行かなくなる。そこで、道路の維持管理費を反映させたGISデータを参照し、議論していけば、農道の市道認定はやめようという結論に結び付けられるわけです。こうした取り組みは、ファシリティマネジメント(不動産を最適なコストで保有・運営するための手法)に使えると私はみています。


 また「新たに公園をつくってほしい」という要望が出ても、「公園から500m 以内に全市民の88.5%が住んでいる」というGISデータを使えば、それが果たして適正なのかどうかがわかるわけです。

>>位置情報を活用した施策とは


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