電子書籍市場のこれから
~専用端末と日本市場~
西田宗千佳 ジャーナリスト
2013/1/24  3/3ページ

―端末を売りつつ、実はその先のサービスが電子書籍における焦点になっているのですね

西田氏:テレビのニュースで、「新しいサービスがスタートしました」というのはニュースにはなりにくいですが、「電子書籍端末が出ました」というのはニュースになります。しかし実際には端末を買わず、最終的にはスマートフォンで買って読んでみようとなる。つまり、最初に見るのは端末で、その次に「買わなくても使えるんだ」ということでスマートフォンのサービスに落ちていくという形かなと思っています。

アマゾンのKindle(左)とBookLiveのLideo(右)
アマゾンのKindle Paperwhite(左)とBookLiveのLideo(右)

 ですので「電子書籍端末が出る」というのは電子書籍に注目させるためのマーケティング、宣伝であり、端末自身がアマゾンというサービスの象徴になっています。BookLiveが出した端末「Lideo」も、やはり端末自身の売上はそんなに見込んでいないはずです。実際にほかの端末で読むことができるソフトウェアを無料でダウンロードできるようにしていますし。「Lideo」があることによって、電子書籍ストアBookLiveというサービスが存在を主張するのが真意でしょうね。

大事なのはローカライズ?

―BookLiveといえば、国内の電子書籍蔵書数がトップですね

西田氏:たしかに単純な蔵書数はトップですが、実は携帯電話時代のコンテンツが多いのです。アマゾンがフリーの本を除くと実質3万冊くらいだと思いますが、それに比べると数字上では倍くらいはあるのですが、利用する体感ではそうでもない。何故なら電子書籍の数の差というのが、現段階においては致命的な問題にならない傾向があるからです。


 それは、出版社が全部の電子書籍サービスに、自社の本を出したがっていることが背景にあります。書籍以外の業界、例えばテレビゲーム業界ですとゲーム機ごとの開発コストや実製品を製造する際のデッドストックなどのリスク要因があり、複数のゲーム機で出すことは難しいものです。しかし、電子書籍はデータだけの存在ですからデッドストックなどの心配もなく、一方で単価が低いため、全ての端末で出して広く利益を得た方が良くなります。


 電子書籍サービスにおいて、今後差が出てくるのは本の冊数よりもサービス内容でしょうね。例えば、日本だと冊数の多い漫画をまとめ買いをしたがります。アマゾンだと「こち亀」180巻近くをいちいちクリックしないといけませんが、BookLiveなら180巻分をワンクリックで購入できます。そういう日本の購買層をきちんと分析したサービスを展開が重要になるでしょう。


電子書籍サービスで今後差が出てくるのは本の冊数よりもサービス内容だ
電子書籍サービスで今後差が出てくるのは本の冊数よりもサービス内容だ

 一方で、アマゾンはアフィリエイトがあることが大きいですね。アフィリエイトがあると、ブログのなかで紹介したくなるわけです。購買まで誘導すれば、アマゾンから広告費の形で、金銭を受け取れます。でもBookLiveの本を紹介しても、アフィリエイトがきちんと成立していないのでお金は入りません。そうなるとお金が入る可能性があるところが有利となるでしょうね。


 アフィリエイトの効果はそれだけではありません。ネット上での店舗が画面に表示できるのは、せいぜい10冊程度で、一度に視界内に大量の本を納めることができる実店舗に比べて非常に露出面積が狭いのです。


 そのため、ブログやTwitterなど、様々なページからのリンクによって入口を増やす必要があります。ネットコンテンツは絶対に売れない。アマゾンはそれを熟知しており、アフィリエイトの仕組みを整えています。


 WEB上での販売については、長年の経験があるアマゾンに一日の長があります。これからの電子書籍サービスは、アマゾンは日本の良さを取り入れていくし、日本のサービスはアマゾンに負けないようにアマゾンにもっていない、書評機能みたいなところを伸ばしていくことになるでしょうね。


―2013年は専用端末やタブレットがどう普及していくでしょうか?

西田氏:裾野としてのライトユーザが電子書籍を購入できるスマホがあって、そのうえに少し詳しい層がタブレットで電子書籍を読むようになってきています。最近では日本人向けに7インチの比較的持ちやすいものが販売されていますので、電子書籍が起爆剤になって、2013年はタブレット・専用端末の普及が一気にすすむだろうと思っています。

(山下雄太郎)
西田宗千佳氏

【西田宗千佳氏 プロフィール】にしだ むねちか
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。新聞雑誌に寄稿を寄せるほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)などがある。
HPアドレス http://mnishi.cocolog-nifty.com/

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