電子書籍市場のこれから
~専用端末と日本市場~
西田宗千佳 ジャーナリスト
2013/1/24  2/3ページ

西田氏:ですから、電子書籍専用端末は本を多く読む層にとっては魅力的なものですが、ライトなユーザにとってはそれほど魅力的な製品ではありません。日本では、すでに普及しているタブレットやスマホで、お金をかけずに電子書籍を読むことができることも後押ししています。それに加えて日本の住宅事情を考えると、紙の本を家の中に大量に保存すると、場所を占拠するため、限界が生じてしまいます。このような「読書家」の方のために電子書籍専用端末ができた、と考えるのが妥当かなと思います。


―電子書籍専用端末の技術的な特徴について教えてください

西田氏:書籍専用端末の画面表示には電子ペーパーが使われています。電子ペーパーは液晶に比べて、消費電力が非常に低いことが大きな特長だと思います。普通に読んでいれば2週間は充電をしないで連続使用ができます。液晶の端末がほぼ毎日充電しなくてはいけないことを考えると、非常に優秀です。


電子ペーパーは液晶に比べて、消費電力が非常に低いことが強みだ
電子ペーパーは液晶に比べて、消費電力が非常に低いことが強みだ

 一方で電子ペーパーには、表現力の問題があります。電子ペーパーは液晶のように白の部分がきらきら光らないので目には優しいのですが、他方で解像度が液晶より高くないのが課題点です。最新の製品と比べると解像度は4分の1程度です。


 また、日本の電子書籍市場は、漫画が大きなシェアを占めています。ところが大きなシェアを占める漫画をきちんと見ようと思うと、電子ペーパーの場合、タブレットに比べて著しく画質が劣ってしまいます。漫画を読むか否かで、電子書籍専用端末を買うかタブレットを買うか大きく変わってくるでしょうね。

電子書籍サービスの戦略

―各社、タブレットPCや電子書籍専用端末を出していますが、各社ごとの戦略の違いについて教えてください

西田氏:iPadやネクサスなどは通常のPCと同じように電子書籍以外のソフトも動きます。ところが、アマゾンが出しているKindle fire HDは同じタブレットでも、アマゾンのサービスしか使えず、代わりに若干安くなっています。これは単純な話でアマゾンが端末に販売による利益をとっていないからです。


 だから端末はほぼ原価で提供して、そのうえでコンテンツを買ってくれればお金が儲かる。他の企業は一応端末に対して利益をかぶせて本体のハードウェアで利益を得ています。端末の購入が即サービスの利用に直結することや顧客を獲得するための宣伝費用などまで考えると、他社よりも有利だという言い方はできるのではと思います。


 もうひとつ電子書籍専用端末を販売にするにあたって各社が気をつける必要があるのが信頼性の問題です。


 電子書籍は著作権保護がかかっているのでコピーできません。購入に際して端末にダウンロードされているのは、一時的に見るためのコピーに過ぎず、ネットワークによる認証などが必要になります。そのため、購入先の企業におけるサービスがなくなると自分で買った本も読めなくなってしまうのです。そのため、電子書籍サービスには信頼性が重要になってくるのです。


 楽天は、2011年に「Raboo(ラブー)」という電子書籍サービスを始め、半年くらいでやめてしまった過去があります。辞めた結果「Raboo」で買った本は読めなくなりました。こうしたことはユーザの信頼低下につながってしまいます。

>>端末よりもサービスを見るべき?

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