農業の未来とシステムの役割
~農業の発展を促すシステムの導入とは~
神成淳司 慶応義塾大学准教授
2012/11/5  1/3ページ

「農業」は大昔より存在する職業の1つ。主に生命の根源に関わる「食料」を作りだすため、決してなくなることのない仕事だ。1950年代に作られた米国型大農場を経営するための機械から近年は収益を計算するためのクラウドまで、農業分野に様々なシステムが入り込んできている。農業とシステムの関わりについて、農業情報科学の研究をされている慶応義塾大学環境情報部・准教授の神成淳司氏に話を聞いた。

システム化と農業の現状

―農業の機械化について教えてください。

神成氏:作業を楽にするという意味での様々な農業機械の導入、あるいはモノ創りと同じようなシステム化の事例とすると植物工場などがあげられます。大事なことは、これらの機械の導入等のシステム化も、他の産業の、設備投資のようにまずは考える必要があります。

慶応義塾大学環境情報部准教授 神成淳司氏
慶応義塾大学環境情報部准教授 神成淳司氏

 例えば、毎日の通勤でタクシーに乗って移動すればとても楽です。しかし、それではコストがかかり過ぎて生活できませんので、自分が体を動かして、電車に乗ります。同じように投資コストとそれによって回収できるリターンを考慮する。当たり前のことですが、投資対効果を考えなければいけない。その枠組の基で、作業を楽にするための機械化も植物工場も導入すべきなのか議論しなくてはいけない。


 植物工場の導入事例で失敗するケースが多いのは、このような投資コスト、導入効果に関する検討が不足しているからです。作物の安定生産に資するためにどれだけのコストを要するのか。検討する際には、もちろん、作物を育てるうえでの、水の撒き方、苗の選定の仕方、肥料を投入するタイミングなど。どのような作物栽培が収益の最大化、安定化につながるかという検討をしなくてはいけない。


―きちんと計画に見合ったシステムを導入しなくてはいけないということですね。

神成氏:そうですね。例えばある程度の農地が確保できる見込みがあり、農業に取り組もうとする。その場合、まずは作物の選定があります。ビジネスですから、どの作物が利益を得られるか考える必要があります。きゅうりは天候で収穫と値段が乱高下するリスクがあり、米は収益性が低い反面、少ない労働力で確実に取れる技術が確立している、トマトの市場価値は…などです。


 そして、例えばトマトがビジネスとして成り立つという結論になったら、次はいつ、どの時期に、どういうトマトを出荷するのが一番利益を得られるのかを考えます。


 単価が高くなることが見込める高品質のトマトを栽培するのか? ある程度の品質のトマトを大量に栽培するのか? マーケットニーズを踏まえ、出荷時期も見極めながら計画を立案します。両者のトマトの育て方は大きく変わります。リスクも違ってきます。方向性が決まれば、それに合わせた苗を選び、出荷に適した時期を見極め、それに合わせて定植時期を決定します。例えば9月の第1週にトマトを出荷するのが一番利益を得られると仮定したのであれば、対象となるトマトの栽培時期を踏まえ、逆算して定植時期を決定します。個々の農家は、経営者であるべきです。


 誰もが容易に栽培可能な時期に、誰もが育てている作物を栽培し出荷すれば市場にその作物が過剰に存在する事となり、単価は下がります。それに対し、季節外れに栽培し出荷すれば、単価の上昇が見込まれますが、本来栽培する時期を外すのですから、栽培環境を整えるために燃料費などのコストが余分にかかります。また、季節外れの栽培には失敗リスクも高まります。


 単に作物を適した時期に育てるだけでは、農業で安定的に高収益を確保する事は難しいのです。どのように稼ぐか、すなわち他の農家との差異をどのように出していけるかを考え、その上でそれを実行するために判断をする事が重要なのです。私が研究しているのは、この「育てる際の判断」です。

>>システムを農業に導入する意義は?


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