文化資源を“デジタル”で残す
~デジタルアーカイブの現場~
馬場章 東京大学情報学環教授
2012/9/6  3/3ページ

海外でのデジタルデータ

―海外でもデジタルアーカイブ化は行われていますが、日本と海外の違いなどはありますか?

馬場氏:海外の場合は、デジタルデータが複製物であるということが十分に認識されていいて「原資料」が大事であるという認識が広まっています。しかし、日本の場合には例えば文化資源をデジタル化すると、デジタルデータが大事で原資料はなくてもいいという発想になってしまう場合があるのです。


 もちろんデジタルデータの方が場所をとらないというメリットはあるのですが、現実は逆で、原資料がオリジナルで、デジタルデータはコピーでしかありません。それを十分意識している海外と意識していない日本ではデジタル化の目的も意義も変わってきます。


 海外の場合は原資料も保存するし、デジタルデータも保存する。デジタルデータは運用のためにあり、原資料は大切に保存します。しかし、日本は運用も保存もデジタルデータに任せてしまうというところがあり、オリジナルがぞんざいに扱われてしまします。


 しかし、日本ではデジタルデータに対する過信があると思います。先ほど「デジタルデータでは風合いなどは出せない」と申しあげたとおり、原資料に完全に忠実なデジタルデータというものはできません。だから何のためにデジタル化をするのか、何のためにデジタルアーカイブをするのかという目的や価値観が日本と海外では逆転しているかもしれません。

保存と運用を分けることでデジタルデータの自由度を活かすべきと馬場氏
保存と運用を分けることでデジタルデータの自由度を活かすべきと馬場氏

デジタルデータのこれから

―実際にデジタルデータの保存の現場にいる立場からデジタルデータの保存技術はもっとこうしたらよいということはありますか?

馬場氏:やはり保存と運用をわけるということですね。保存と運用をわけて、運用は運用として多少のリスクがあっても、デジタルデータでいろいろなことができるような自由度を活かすべきです。


 一方で、それとは別に保存も必要です。単純に保存といっても、デジタルデータにも重要度の差があるので、それを自動的に区別してくれるソフトウェアがあれば便利かもしれません。例えばボーンデジタルのアーカイブの場合、ワープロでテキストデータをつくったとして、これは草稿なので重要度が低いと判別されると重要度が低い方に格納され、これは完成した文章なのでこれから稟議にまわすというものは自動的に重要度の高い方に入るといったことは必要とされるでしょう。


―資料保存、デジタルデータの保存の展望をお聞かせください。

馬場氏:展望からは少しずれるかもしれませんが「デジタルデータを過信しないでください」ということは重ねて申しあげたいです。なかなか難しいことかもしれませんが、デジタルデータを過信せずに、原資料も保存するとか、デジタルデータは分散して保存するための条件などをある程度、確立してほしいです。そういう原則や条件ができると、それに対応した新しい保存技術も生まれてくるかもしれませんね。

(山下雄太郎)
馬場 章氏

【馬場 章氏 プロフィール】ばば あきら
東京大学大学院情報学環教授。1958年茨城県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。東京大学史料編纂所助手、助教授を経て2005年より現職。専門は日本経済史、歴史情報論、デジタルアーカイブ・スタディーズ。日本近世経済史の研究のかたわら、デジタルアーカイブ研究に取り組み、歴史資料や文化資源のデジタル化によるデータベース構築とその公開方法、さらにメタデータの研究を中心に行う。2006年には「文化資源統合デジタルアーカイブシステム」を公開し、デジタル時代の新たなアーカイブの在り方を提案している。

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