資料の劣化は、資料が実物である以上避けられない。
しかし資料を撮影などすることで「デジタルアーカイブ化」すれば、保存された媒体が劣化することはあれど、データ自体の劣化は一切起こらない。昨年の震災に際しても貴重な資料をデジタル化していたことにより実物が津波に流されてもその情報だけは辛うじて保護できたという事例もある。
近年のデジタルアーカイブや資料のデジタル化はどのように行われているのか? 様々なプロジェクトでデジタルアーカイブ作成に取り組んでいる東京大学情報学環教授・馬場章氏に、お話を伺った。
―馬場先生が取り組んでいらっしゃる、資料のデジタル化、デジタルアーカイブについてお聞かせ下さい。
馬場氏:私たちの研究室で行っているデジタルアーカイブは特に“文化資源”と呼ばれる資料をデジタル化して、それをデジタルデータで保存する試みです。アナログデータからデジタルデータへの変換をしたうえで、文化資源をできるだけ長く保存していくという取り組みになります。
しかし誤解されがちなのは、いくら精度の高いデジタル技術で保存をしても大事なのはあくまでも「原資料」だということです。デジタル化して保存したからもう原資料はいらない、ということにはなりません。ただデジタル化した複製を作ることで、様々な恩恵を受けることができます。
例えば、資料の検索をする際、アナログのままだと検索が非常に難しいです。ところがメタデータなどが添付されたデジタルデータになると検索が簡単になります。そのような運用面での利便性がまず考えられます。
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| 東京大学情報学環教授 馬場章氏 |
それから文化資源のなかにはあまりにも貴重すぎて直接手に触れることなどができないものがあります。そのような文化資源も、デジタルデータであれば、印刷したり、あるいは3Dにして、同じような形状で、触った感触まで復元することも可能です。
直接、原資料に触れる以外にも、もともと塗られていた色を復元することも可能になっています。元の資料に直接色を塗るわけにはいきませんが、デジタルデータ上で画像処理をしていくことはできます。デジタル化することで、そういったことが可能になるということはあります。
そういう運用・取り扱い以外に関しても、万が一、原資料が地震や火災などで消失してしまった場合も、精密な複製としてデジタルデータをつくっておけば、かなりの部分を再現することが可能にもなります。そのため、私の研究室では、絵画の資料とか写真の資料とか、それから立体物である建造物とかいろいろな文化資源を対象にして保存を行っています。
―文化資源と言っても立体物から、絵画、本など様々なものがあるかと思いますが、例えば画像とテキストでは保存の仕方はどう変わってくるのでしょうか?
馬場氏:まずテキストと画像では、デジタルデータの形式が違います。画像であれば国際標準といわれているTIFFかJPEGで統一して保存されています。テキストデータの場合も、テキスト形式からそれぞれのワープロに依存した形式からいろいろあるわけなので、基本的にデジタルデータの形式が違うことはママあります。他方で、文字資料をテキストデータに変換せず、画像として保存するという方法もあります。
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