LTEの普及に熱心なのは、日本、米国、韓国。 それ以外の国で普及するかが課題だ |
―なるほど。それでは、今後もそうした韓国や中国のメーカーの端末の攻勢を受けつつ、日本のメーカーはLTE対応の端末が普及していくといった構図になるのでしょうか。
石川氏:はい。ただ、難しいのは、LTEの普及に熱心なのは、実は米国の大手電機通信業者である「ベライゾン・ワイヤレス」が中心となりインフラ設置を行っている米国と韓国、そして現状はNTTドコモが参入している日本の3カ国しかありません。
ヨーロッパは、最近の金融危機や景気の落ち込みでLTEに投資するだけの体力がなく、LTEに対する温度差があります。よく「アップルのiPhone5がLTE対応するのでは」との噂が流れます。もちろん米国市場だけみればLTE対応をしなければいけないのですが、iPhoneは世界中に向けて販売しています。そのため、LTEに対応していない国が多い現状で、LTE対応のスマートフォンを開発・発売する意味があるのかというと、悩ましい問題だと思います。
―2011年には、携帯電話からスマートフォンへ買い替えが当初の予想以上に進みました。2012年も同様に相当数の買い替えが予想されます。この流れはいつ頃まで続くのでしょうか?
石川氏:このペースであと2、3年は続くと思います。現状でスマートフォンユーザは全モバイル端末ユーザの2割強から3割ほどです。おそらく、数年でこの割合が5割ほどになるでしょう。したがって数年は「お祭り状態」となるはずです。それに伴い、トラフィックの混雑を避けるために、各社取り組まなければならない課題が多々あります。LTE対応スマートフォンの早期導入・普及もそうですし、KDDIが発表したような公衆無線LANや家庭内無線LANルーターなどを利用した固定網との連携も考えられます。
スマートフォンの契約数の推移・予測 2011年(出典:MM総研)
※11年度以降は予測値。PHS・データ通信カード・通信モジュールは含まない |
―その先のLTE-Advancedをはじめとした第4世代の普及に関してはいかがお考えでしょうか。
石川氏:構想はありますが、なかなか、そこは現実味を帯びていないのが現状です。またLTE-Advanced以外にも、近似の技術もいくつか出てきています。例えば現在、会社更生法に基づき経営再建中で、ソフトバンクモバイル傘下の「ウィルコム」は、次世代PHSの通信規格として、これまでサービスを展開していたXGPの後継となるAXGPを準備しています。これは東京駅の前で60Mbpsも出るような高いパフォーマンスをもつサービスで、2012年2月から3月にはAXGP対応の端末が発売される予定です。そういった端末が出ると、端末競争が俄然面白くなってきます。
―それでは2012年以降で注目される点はどのあたりでしょうか?
石川氏:今までのスマートフォンの仕様が変わってきているところだと思います。そして「スマートフォン初心者」が増えていく中で、キャリアも対応に迫られるでしょう。また初心者向けのサービスも増えていきます。こうしてスマートフォンが当たり前のものになると、期待も高くなり、解決しなければいけない課題も増えてくるでしょう。しかし、そうした課題に対応していかなければならない「今」こそが「変化のタイミング」であり、注目すべき時期であることは間違いありません。
【石川温氏 プロフィール】いしかわ つつむ |
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注釈
*1:LTE(Long Term Evolution)
携帯電話の次世代通信規格。第3世代(3G)と第4世代(4G)の間の技術で第3.9世代と呼ばれる。3Gの規格を技術的に進化させることで、4Gへの橋渡しとしての役割を期待される。
*2:LTE-Advanced
LTEよりも高度化・高域化した通信規格。第4世代(4G)に位置づけられる。
*3:WiMAX2
モバイルでのデータ通信用に使われている次世代規格。 LTEの次世代規格であるLTE-Advancedと並んで、第4世代移動体通信(4G)の規格として選定されている。
*4:WiMAX(ワイマックス、Worldwide Interoperability for Microwave Access)
無線通信技術の規格の一つ。高速通信回線の敷設やDSL等の利用が困難な地域での接続手段として期待されている。近年は、高速移動体通信用の規格も策定されている。
*5:クアッドコア
1つのパッケージに4つのプロセッサ・コア(演算処理を行うCPUの中核)集積したマイクロプロセッサ。