混み合う回線 スマホの未来
~普及するLTE対応端末とこれからの注目点~
石川温 ケータイ・ジャーナリスト
2012/2/23  2/3ページ

出揃うLTE対応端末

―なるほど。キャリアの体制も整ってきているわけですね。そうした中、ようやく国産メーカーもスマートフォンのラインナップを整えてきていますよね。

石川氏:はい。そういう意味でも2012年のスマートフォンの端末のキーワードは「LTE」になるでしょう。CES(毎年ラスベガスで行われている家電展覧会)にも行ってきましたが、サムスン、LG、モトローラなど、名だたるメーカーが独自の技術でLTE対応のハイスペックなスマートフォンを出展していました。


 日本ではNTTドコモやKDDIはもちろん、ひょっとしたらソフトバンクもLTEに対応するかもしれない。さらにアップルもLTE対応のiPhone発売を視野に入れている可能性はあります。そういう中でやはりLTEは1つキーワードになってきます。

スマートフォンの出荷台数の推移・予測 2011年(出典:MM総研)
※11年度以降は予測値。PHS・データ通信カード・通信モジュールは含まない
スマートフォンの出荷台数の推移・予測 2011年(出典:MM総研)
※11年度以降は予測値。PHS・データ通信カード・通信モジュールは含まない

 さらに、チップセットのハイスペック化が進み、現在デュアルコアが中心になっているCPUは、2012年の夏ぐらいにはクアッドコア*5が搭載されるようになります。そうなると、据え置き型のPCに匹敵する処理能力と、高い通信機能を持ち合わせた「モンスターマシン」が誕生するわけです。


―ほかにCESで石川さんが感じた目新しさはどんなところでしょうか?

石川氏:中国メーカーの勢いを感じました。例えば、ファーウェイという会社は6.68ミリという世界最薄のスマートフォンを開発しました。スペックも充実しており、LTE対応版も準備しています。アップル、サムスン・LGの韓国勢に続き、中国勢も世界で存在感を見せるようとしているのか…と実感しました。


日の丸スマートフォンの憂鬱

―日本の携帯電話は「ガラパゴス携帯」と呼ばれており、国際的な市場に乗り遅れました。スマートフォンの市場においても出遅れている印象があります。

石川氏:日本のメーカーはなぜ「ガラパゴス」と呼ばれるほど、独自の機能にこだわっているかといえば、それは「日本のユーザが求めている機能」だったからです。防水機能や、デコメ機能など、ユーザの要望に応えた結果がガラパゴス携帯なのです。


 海外メーカーが、日本のメーカーの席巻する国内市場で売れるためには、そういったニーズを取り込まなければなりません。逆に、日本のメーカーが海外に進出するためには、日本市場でシェアをとりつつ、世界で通用するスマートフォンもつくらなければなりません。しかし、国内市場への対応はともかく、海外市場への対応は、まだ至っていないのが現状です。


―今後、日本のスマートフォンが国際市場に展開していく流れは期待できないのでしょうか?

石川氏:国内のメディアは「これだけ日本の技術が優れているのに、なぜ世界で展開できないのか」という批判を行います。しかしサムスンが、なぜあんなに世界でシェアをとれているかを分析すると、技術力云々ではなく、泥臭いことをたくさんやっていることが理由に挙げられます。つまり日本市場でブロガーを集めてイベントを開催したり、販売代理店の幹部を集めて旅行に行って接待をするのです。


 メディア対応を見ても、サムスンは日本のメディアに対して、日本語で対応し、発表会も日本語でプレゼンをします。一方で、日本のメーカーが中国に行っても中国のブロガーやメディア相手にそこまではやっていない。この差が現在の国際競争力の差になっていると思います。韓国は「国が小さいから海外に出ていかなければならない」という気概にあふれています。その違いが大きいのではないでしょうか。

>>LTE対応の端末が普及していく流れとなるのか?

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