特別対談! 津田大介氏×ジョン・キム氏
~ITが日本社会に貢献した年 2011年
2011/12/26  3/3ページ

情報伝達手段の変化

―今後の情報伝達手段、特にソーシャルメディアの動きについてどうなるとお考えですか?

キム氏:SNSは関係性のメディアです。個人の活動が可視化され、人間関係が可視化され、その関係性の間での接点が見つかりやすくなり、 接点の上でコラボレーションが生まれやすくなります。私は数ヶ月前まではTwitterしか使わなかったのですが、最近はFacebookしか使わなくなりました。


津田氏:Facebookは本格的にきましたね。


キム氏:そうですね。Facebookを使って強く感じたのは、場の空気がネガティブな方向に行かないということですね。これはFacebookというメディアが実名主義を採用しているということで、匿名性が低く、また関係性が複合的であることに起因するのではないかと。当初、日本ではプライバシーを強く気にする日本人は実名での情報発信に抵抗し、その結果Facebookは日本では普及しないだろうという論調もありましたが、今や実名制だからこそ、顔の見える信頼性の高いコミュニケーションが出来るということでFacebookを使われている方も多いのではないでしょうか。


津田氏:TwitterはTwitterで、情報発信とかPRという意味では力を持ち続けて、新しい情報や出会いでも使われ続ける。でもそれとは違う、密度の高いコミュニケーションはFacebookで行う。今後は、TwitterとFacebookが併存して使われていくのかなと。


 Facebookの利用者はすでに全世界で8~9億と勢いも強い。新しい名刺みたいな役割になっていますよね。だから、僕もFacebookは使わなければいけないと思っています。


キム氏:いまTwitterのフォロワーは何人くらいなのですか?


津田氏:いまは…20万人弱くらいですかね。


キム氏:それだと、なかなかFacebookに移行しにくいですね。


津田氏:いやぁ(笑)。両方を使い分けていければと思います。


―日本におけるITの位置づけはどう変わっていくのでしょうか?

津田氏:東日本大震災でIT企業に対する世間の見方が変わったなと思います。それまではライブドア事件とかもあり、ITというと胡散臭いと思われていました。しかし最近ではITも日本を支える産業の1つとして認知されつつある感じもします。


キム氏:産業としてどう成熟するかという予想は難しいですが、震災以降ITは生活の身近なところで使われるようになったことが大きな変化だと思います。


 日本がe-Japan構想でブロードバンドを普及させて、10年近くなります。しかし普及させたインフラをどう活用するかについてはなかなか進まず、行政、医療、教育の情報化は期待ほど進まなかったのが実情でした。つまり、生活とITとの距離が遠かった。しかし東日本大震災でSNSが存在感を発揮したことで、ITが生活の一部分として定着しつつあるように思います。これは非常に望ましい傾向ではないかと思います。


 2012年以降新しいアプリとか、新しい産業が躍進することはあるかもしれませんが、私個人の希望としては日常の中で、日常の何かを満たすためのいろいろな手段として使われるのが理想的だと考えています。

ネットメディアはさらに躍進する
ネットメディアはさらに躍進する

津田氏:これからは高齢者もスマートフォンなどを使うようになって、ますます日常の何かを満たすための利用が増えていくでしょうね。メディアとしてはマスメディアとソーシャルメディアの融合が止まらないでしょう。


キム氏:そうですね、その融合が建設的なものであってほしいですね。今のままだと、ネットメディアの躍進の結果、既存のマスメディアが飲み込まれる形での融合が進む可能性があるので。


津田氏:個人の情報発信者としては良い時代になってきました。


キム氏:頑張ってください。


津田氏:ありがとうございました。

(井上宇紀)

注釈

*1:サイマル放送
同じ番組を同じ時間帯に、別のチャンネルや別の媒体(ネットなど)で1つのテレビ局が放送をすること。

*2:Wi-Fi
無線LANの機器同士の接続方法のうち、アメリカにある業界団体「Wi-Fi Alliance」が認証したものを指す。

津田大介氏

【津田大介氏 プロフィール】
つだ だいすけ
ジャーナリスト、早稲田大学非常勤講師。1973年東京都生まれ。シンポジウムなどを取材で講演者や発言者の言葉をTwitterでリアルタイムに実況する方法を利用し、「Tsudaる」というスラングの語源にもなっている。著作に『Twitter社会論 - 新たなリアルタイム・ウェブの潮流』(洋泉社)など。

ジョン・キム氏

【ジョン・キム氏 プロフィール】
じょん きむ
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授。1973年韓国生まれ。日本に国費留学。BSフジ「プライムニュース」ブレインキャスター。今年3月までハーバード大学インターネット社会研究所で在外研究。新著に『逆パノプティコン社会の到来』(Discover 21)。

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