特別対談! 津田大介氏×ジョン・キム氏
~ITが日本社会に貢献した年 2011年
2011/12/26  2/3ページ

マスメディアとソーシャルメディアの関係

キム氏:震災という特別な状況では、マスメディアとソーシャルメディアが補完関係にあるわけですね。一方で、マスメディア側からすれば、取材・報道の面でソーシャルメディアを脅威と感じるようになってきたのではないでしょうか。ネットメディアは、情報量・発信力という質や量の両面で既存のマスメディアを脅かす存在として急速に浮上しつつあるように思われます。


津田氏:2010年のウィキリークス、尖閣ビデオ流出問題で、そのあたりは鮮明になりましたね。スクープ映像やリーク情報は、昔ならばテレビや新聞から流されたのに、先にネットに流れたものを新聞社やテレビ局が後追いする形になりました。

既存メディアの既得権益は崩されてきている
既存メディアの既得権益は崩されてきている

キム氏:世の中に情報を広めるという意味では、長年マスメディアが圧倒的な存在感を示してきたわけですが、今はグローバルメディアとしての「ネット」が既得権益側・権力側からすれば脅威的な存在になっています。


津田氏:象徴的なのは、福島県南相馬市の桜井勝延市長がYouTubeで町内の状況を公開したら、全世界でアクセスが集中して、最終的にはタイム誌で「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたことですね。


 東京のキー局や新聞社は独自の基準を設けて、福島原発から40~60キロ圏内に入らないようにしたため、南相馬市からマスメディアがいなくなってしまった。そこで、町の人が自分たちの窮状に目を向けてもらうためにYouTubeに流して話題になった、というのはマスメディアの限界が如実に示されたのかもしれません。


スマートフォンの普及

―ソフトウェアではSNSが大変影響力を持ちましたが、ハードウェアの面ではスマートフォンが飛躍しました。

津田氏:2010年から2011年にかけて、スマートフォンへ急速に移行しましたね。私はもう少し緩やかな移行を想定していました。


キム氏:震災の影響が大きかったと思います。震災でソーシャルメディアが様々な面で活用され、スマートフォンの浸透を後押しした感はありますね。スマートフォンならば携帯回線が通じないときに、Wi-Fi*2を利用できるという利点もあります。


津田氏:陸前高田市でも、Twitterがブームになりました。仮設住宅は、地域のコミュニティごと入れるわけではないため、いままで築き上げたコミュニティがばらばらになります。しかしTwitterなら、コミュニティ同士での連絡が気軽に取れる。そこでTwitterが避難民の間で流行り始め、結果としてスマートフォンへの買い替えが起こりました。


キム氏:スマートフォンが普及すると、日本のキャリアやアプリ事業者に大きな影響があるでしょう。日本の携帯電話はガラパゴスと言われますが、スマートフォンはグローバルなものなので、世界の市場と互換性が強制的に確保される。スマートフォンの普及で、日本の事業者はグローバル競争が始まるスタート地点に立たされました。


 日本企業は、おサイフケータイとかワンセグなど、先端的なコア技術を持っています。これらをスマートフォン時代に上手く組み込んでいくことで、世界でその価値が開花されることも考えられます。


津田氏:電子書籍も様々な機種が出てきて、2011年の端末市場という意味では注目されていると思います。電子書籍市場についてはどう思いますか?


キム氏:電子書籍のみならず、デバイスがマルチ化、スマート化、そしてクラウド化したことが大きいと思います。クラウド基盤で様々なスマートデバイスに、書籍、音楽、映像など様々なコンテンツが配信されていく流れが今後益々加速されていくのではないでしょうか。日本のプレイヤーがあまり見あたらないところが残念ですが。


最近は著作権者の態度もやや軟化していると話す
最近は著作権者の態度もやや軟化していると話す
 

津田氏:モバイルの高速のインターネットがこれだけ普及しているのは日本だけで、クラウドベースのコンテンツ利用に適した環境はほかにないんじゃないかなぁ…。問題はテレビ、音楽も書籍もコンテンツホルダが便利なものに乗ってこないことですね。


キム氏:海外で構築され、試行錯誤の中でノウハウを蓄積した外国企業が日本に本格参入するまで、日本企業は外に出て行くことをしてこなかった。後手後手に回っているイメージが強いですね。特に、欧米の基準からして著作権関連産業の硬直性が目立ちます。先ほど申し上げたマルチデバイス化、スマート化、ソーシャル化、クラウド化といった新しいデジタルパラダイムへの対応が至急求められています。


津田氏:これは日本の縮図というのですかね、結局レコード会社とかのコンテンツホルダも、執行役員レベルではデジタルへ移行せざるを得ない実情はよくわかっています。しかし組織単位になると、いろいろな人の思惑が絡んで動けない。もはや日本が抱えている病理なのかもしれません。

>>2012年のIT業界はどう変わるか?

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