はやぶさの成功はその先のマイルストーン
~はやぶさのイオンエンジン開発にたずさわって~
JAXA宇宙科学研究所教授 國中均氏
2011/11/17  3/3ページ
サンプルを持ち帰ったことは
技術者冥利に尽きるという國中氏
サンプルを持ち帰ったことは 技術者冥利に尽きるという國中氏

回収したサンプルについて

―現在、イトカワから回収したサンプルを分析していますが、その感想をお聞かせください。

國中氏:今は初期分析といって、選ばれた日本の科学者がすぐにできる分析を行っているところで、この作業はほぼ終わりつつあります。次はこのサンプルを世界の科学者にオープンにして「こういう分析をしたい」というアイデアを募り、その中から選別をして日本人・外国人分け隔てなく、サンプルを供与して分析をしてもらうフェーズに入りつつあります。


 おかげさまで、サンプルについては現在世界中の科学者から引き合いをいただいています。そのことを考えると、「サンプルを持って帰ることができて本当によかったな」と感じています。「サンプルリターンするという計画がそもそもなければ」それに、「もしもイオンエンジンが途中で壊れてしまったら」サンプルを地球に持ち帰ってこられなかったのですから…。そういう意味では技術者冥利に尽きる、大変意義深いことを成し遂げたのだと感じています。


はやぶさ2とこれからの宇宙科学

―國中さん自身は現在、「はやぶさ2」の計画に関わられています。

國中氏:大変有り難いことに、はやぶさが帰ってきたことを契機にはやぶさ2の計画が認められて、予算化することができました。


 次は新しい理念のもと、「太陽をまわりの宇宙」に飛び出していく「宇宙探査を行う」ことが鍵になります。宇宙技術はまだ100年しか経過していない技術です。1900年代に発案されたことを契機に、100年かけてようやく宇宙進出まで果たしたのです。


 この技術を用いて、我々は太陽系に進出しようとしています。太陽系にはもしかしたら生物がいるかもしれません。そこから資源を採取して利用し、生活領域を拡大していくことで、領土問題やエネルギー問題も克服できるかもしれない。現代の宇宙技術ではまだそうしたことを解決できませんが、将来的には可能になるかもしれないという分野に我々は乗り出そうとしているわけです。


 少し前までは夢の範囲でしかなかった、宇宙ステーションが完成して、人間が常駐しています。加えて、はやぶさは往復探査をして地球に帰ってきた。そのことから「100年でやっと宇宙技術の基礎ができた。そしていざ太陽系宇宙へ乗り出そう」と、まさに今日現在は宇宙大航海時代の夜明けである、という歴史的な位置づけだと思います。

2014年の打ち上げをめざすはやぶさ2 
(提供:JAXA CG:池下章裕氏)
2014年の打ち上げをめざすはやぶさ2
(提供:JAXA CG:池下章裕氏)

―宇宙科学の今後についてはいかがお考えでしょうか?

國中氏: 20年後、30年後、日本が多くの費用を負担できるような経済状態にあるかはわかりませんが、少なくとも技術の分野に関して言うならば、そうした将来を見据えて準備をしておかなければいけません。


 今回の計画である「はやぶさ2」を契機に宇宙技術の開発をさらに加速させる必要があります。宇宙技術は先が遠く「はやぶさ2」も、未来へ向けたマイルストーンにすぎません。だからその次、そしてそのまた次のステップへと、どんどん足をかけていきたいと思います。

         
(山下雄太郎)

注釈

*:生のキセノンガスをそのまま噴射する手法
イオンエンジンを動力となるイオンを生み出すために利用をせず、中和器からキセノンの生ガスを噴射する。本来想定してなかった使用方法だが、イオンエンジンと比べて微力な推力しか生み出さないが、イオンエンジン加速の手順を要しないために小回りが利く。

國中均氏

【國中均氏 プロフィール】くになか ひとし
1960年生まれ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所・宇宙輸送工学研究系教授。1988年 東京大学大学院工学系研究科航空工学専攻博士課程修了、旧文部省宇宙科学研究所就任。2005年より宇宙科学研究所教授。小惑星探査機はやぶさのイオンエンジンの開発により一躍注目を浴びる。

主な著作は
『イオンエンジンによる動力航行』(共著、コロナ社)

【関連カテゴリ】

その他